「二手、ね」
満樹は呟く。
北に残って、情報を集めるチーム。
砂一族の村に行くチーム。
そして
「谷一族の村へ行く、のか」
・・・・・・。
「いや、ちょっと待て」
北と砂と、谷・・・??
「二手じゃないじゃん・・・」
しかも
「谷へ向かうのは、俺」
ひとり。
「・・・なぜに?」
ですよね。
「・・・・・・」
ちらりと横を見ると、そこに、与篠がいる。
うふふ、と、微笑みながら、満樹に寄りそう。
「いや、近いから」
「ふふ。砂一族の村は、わりかし遠いわよ」
「その近い、じゃなくて」
「どう云う近い?」
「えーっと、」
ぐいっと、満樹は与篠を押しやる。
「この距離」
「あらあら~」
あははと与篠は笑う。
「でもね、満樹」
「ん?」
「手のひらにアザがある者を探しているんでしょう?」
「ああ・・・」
「前も話した通り、砂と北、そして・・・谷」
「・・・・・・」
「確かに、みんなで分担して探した方が、早いわぁ」
「それは・・・」
「戦力的にも、ほぼ均等!」
「均等、か?」
「私は砂に行きたいし!」
「ほぼ、個人の願望!!」
ぐいっと、与篠は、再度満樹に近寄る。
なんだか、この与篠。他人との距離が近い。
パーソナルスペース大切!
「私、急ぎたいの」
「急ぎたいって?」
満樹は首を傾げる。
「与篠は山へ帰るべきなんじゃないのか?」
「ふふ。私の身の上話はまだだったわね」
「そう云えば」
山一族では失踪した扱いとなっている与篠。
しかし、当の本人は、ふらふらと旅行のようにいるのだ。
植物の成分(毒ほぼ)が好きすぎて
それを求めているような、悪い心で試そうとしているのか
つまりは、探求心で外へ出た、とも云えなくはないが。
「いったい与篠は、」
「ねえ、満樹。私、急いで砂漠へ行きたいの」
「身の上話はしないのかい!!」
「チャンスは今夜限り!」
「何が! ・・・って!!」
与篠は、満樹の手を握っている。
「さあ行きましょう!」
「あれ? 谷に向かう話は?」
「今夜、ふたご座流星群極大日なの!!」
「りゅ・う・せ・い・ぐん!!」
「砂漠ならよく見えるでしょう!?」
「た、確かに!」
「東~南方向にオリオン座が見えるから、そこから冬の大三角左方向に二つ星があって、それがふたご座よ!!(22時ごろ)」
「詳しい!?」
「そこがほぼ放射点だから、そこからドーナツ状の視界で!」
「与篠!」
満樹が止める。
「君は信じられるのか!?」
「えぇ?」
満樹の言葉に、与篠は目を丸くする。
「信じられるのかって、私を・・・?」
「そう。何か・・・、何かが上手くいきすぎているような気がしてならない」
「満樹、なぜ・・・」
与篠はうつむく。
「私、本当に薬草が好きで、人にその薬草で・・・」
「うん?」
「病を治してあげたり、けして、ドクヲタメソウナンテ・・・」
「そこは嘘は付けないんだな」
満樹は息を吐く。
与篠を見る。
本当に、この与篠は、ただの探求心、なのかもしれない。
「ツイナは私に任せて!」
「どっちがどっちを任せればいいのか」
ふふ。と、与篠が云う。
「不思議よね」
「何が?」
「私たち、昔、どこかで会ったことがあるような」
「・・・・・・?」
「ないような」
「どっち・・・」
「運命で巡り合ったような(チドリ含む)」
「・・・・・・」
「ねえ、満樹!」
与篠が云う。
「きっとうまくいくわ、これから!」
「なのかな・・・」
「もちろん、きっと、あ、流れ星!!!」
「どこ!?」
「私、昨日も、ふたつほど見たのよ」
「まじか」
NEXT