「真都葉」
杏子は、真都葉を呼ぶ。
真都葉は、おもちゃを持ったまま、杏子のもとへとやってくる。
「かあ」
「さあ、おもちゃはどこに片付けるか、わかるかしら?」
「まつばしってるよー」
真都葉は、おもちゃを箱へとしまう。
「よく出来たわね」
母親に褒められ、真都葉は笑顔になる。
「では、次」
「つぎなあにー」
「真都葉のコップはどこでしょう」
「わかるよー」
真都葉は台所へと駆けていく。
「かあ、こっち!」
真都葉は台所の、上の戸棚を指さす。
「あそこね!」
「そう。覚えてるのね」
杏子は、真都葉の頭をなでる。
「もし、お父さんがわからなかったら、教えてあげてね」
「うん!」
杏子が云う。
「いろんなことを、少しずつ覚えましょう」
「はーい!」
「ただいま」
「とう!」
扉を開けて、圭が入ってくる。
「お帰りなさい」
「・・・ただいま」
「おかえぃー!!」
「真都葉もただいま」
「じゃあ、夕食にしましょうか」
杏子は食卓を準備する。
3人で
いつも通り
食事を済ませ。
いつも通り、
真都葉は眠りにつく。
「圭」
静かな居間で、杏子はお茶を淹れる。
「どうぞ」
「・・・ありがとう」
杏子も坐り、真都葉の服を縫う。
次の季節のもの。
少し、大きめのもの。
ふと
圭が何かを取り出す。
「杏子は、」
「・・・・・・?」
「こう云うものを、触ったことはある?」
「え?」
杏子は手を止め、圭が持つものを見る。
刀。
それと、大きめの斧。
「いえ・・・」
杏子は首を振る。
「それは?」
「狩りで使うもの、だ」
「そう、よね・・・」
杏子は息をのむ。
「西一族はどの家にも、これが家にある」
そして
「男女関係なく、扱う」
圭は、杏子を見る。
「杏子、持ってみて」
「私、が?」
杏子は目を見開く。
「慣れないだろうけど、ほら」
杏子は、圭が差し出すそれを見る。
恐る恐る、手を出す。
「どう?」
「・・・・・・」
「杏子?」
「重い、のね」
圭は頷く。
NEXT