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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」244

2020年10月09日 | 物語「約束の夜」
「あ・・・」

「お母さん!」

与篠は走る。

いつもの家
いつもの畑

山一族の村外れ。

「ただいまー!!」

「与篠」

ただ、それだけ。
母親は微笑む。

「ちょっと、遅くなっちゃって」

母親は首を振る。

「お帰り」

云う。

「ずいぶんと長い旅だったのね」
「うん」

与篠は云う。

「最初は、違う目的で村から出たんだけど」
「うん」
「いろいろ巻き込まれちゃって」
「うんうん」

母親は持っていた畑仕事の道具を置く。

「判るわぁ」
「お母さん?」
「母さんだって、何度ここから出て行こうかと思ったか」

山一族のハラ家。
イ以外は、ただ雑用をやらされるだけ。

「そりゃあ、毎日つまらないわよね」
「そうよ」

与篠頷く。

「そんなんやってるぐらいなら、もっと植物育てたい!」

(特殊な成分を持つものに限る)

「そうよ、その粋!!」
「だって思ってたより、旅って大変だったもん」
「いい経験をしたじゃない」
「でも、私的な目的は何も得られなかったわ」
「あら残念」
「もっと素敵な毒植物の、!!」
「素敵な成分の、ね!!」
「お母さんの方はどう?」
「この植物の芽が出たのよ」
「おお! やったね!」
「それで、この場合は若芽が成分的に、」
「でも、少し寝かせて根の方は?」

以下しばらく、こんな会話続く。

与篠と母親は、畑の横に坐り、空を見上げる。

とてもよく晴れている。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「与篠」
「また、いつも通りかぁ」

母親は笑う。

「でも旅は大変だったんでしょう?」
「そうだけど」

与篠は云う。

「でもね、楽しいこともあった」
「うんうん」
「例えば海一族なんだけど、あの薬がわりかし効いたのよ」
「あらあら」

母親が云う。

「海一族ならここにも来たわよ」
「そうなの!?」
「西と東の子も来たわ」
「ええ!?」
「うちに泊まっていったわ」
「衝撃!!」
「大丈夫」

母親が頷く。

「試すのはお香だけにしておいたわ」

成分入りのお茶も飲ませてたやん。

「あなたの兄妹たちだったのね」
「ま、そう云うこと」

母親は再度、空を見上げる。

「また、集まる日が来るのかしら」
「うん」

与篠は云う。

「約束はしてきたから!」

「そう、楽しみね」

ふたりは笑う。

ここでの、つまらない生活も
まだ、これからも続くのだろう。

でも、

いつか

ここにも

訪ねてきてほしい。

「出来れば、全員!!」

「もちろん、全員連れてくるわ!!」

なんか怖い(笑)







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