「落ち着いたか?」
「えぇ、なんとか」
宿の部屋に
2人は荷物を下ろす。
「さすがにここまでは
襲ってこないだろう」
「……何だったのかしら、
あの人達」
「恐らくだが、裏一族」
その言葉に京子は顔を青くする。
「裏一族に恨みを買うような事なんて
していないわよ」
「俺も、心当たりはない」
先程の彼らの言葉を思い出す。
「俺達二人をつけているといっていた。
あれはどう言う意味だろう」
満樹は首を捻る。
「一族も、性別も何もかも違う。
南一族に足を踏み入れた
村人を狙っているのか?」
「もしかして、美和子も襲われたんじゃ」
どうしよう、と
動揺する京子に満樹は言う。
「気持ちは分かるが、
今から探しに出るのは止めた方がよい」
「でも」
「そうだとはっきりした訳じゃない。
まずは自分の身を護れ」
あ、う、と
暫く口ごもったあと、
京子は頷く。
「分かった。
でも、明日は朝一で探しに行く」
「それがいいだろう。
俺達が狙われた理由も
分かっていないのだから」
ありがとう、と
京子は礼を言う。
「私達が狙われた、理由か」
「共通点でも分かれば」
「………」
「京子?」
「……ねぇ」
京子は顔を上げる。
視線は満樹の右手。
「そのアザ、どうしたの?」
言われて満樹は自分の掌を見る。
親指の付け根にある赤いアザ。
「これか、
元々付いていた物だ」
ケガしたのかと心配しているのだろうか。
安心させようとして答えた言葉に
京子は更に考え込む。
「見て」
京子は手袋を外す。
いつも狩りの時に付けている
指先が出ているお気に入りの手袋。
その掌に、
同じ形のアザが付いている。
「そのアザ、私にもあるの」
いや、と
驚きながらも満樹は答える。
「偶然だろ」
そのアザは
何かの模様をかたどるように浮き出ている。
「このアザ。
お兄ちゃんにもあったのよ」
「兄?」
暫く話しを聞き、満樹はため息をつく。
「失踪した兄、か」
「ええ。
私達お兄ちゃんを捜しに来ていたの」
「今の所、共通点はこのアザか。
それだけでは何とも言えないな」
「そうよね、ーーーっくしょい!!
あ、ごめんごめん」
京子は鼻水をすする。
雨に濡れて体が冷えている上に
混乱することが続いている。
京子の顔色は良くない。
「今日はとりあえず
風呂に入って休もう。
あとは、また明日」
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