TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

2017年末

2017年12月29日 | イラスト





今年も当ブログにお越しいただきまして
ありがとうございました。

来年も、TOBA頑張って更新していきます(^^)

イラストは来年の新作予定!

どうぞ、よいお年をお迎えください~


TOBA by ばしょ&ともえ


「約束の夜」39

2017年12月26日 | 物語「約束の夜」

「カニ、美味しかった。
 なんか元気出てきた」
「身をほぐした甲斐があったよ」

翌日の朝、
そんな事を話しながら
満樹と京子は宿を後にする。

「でも東一族の人って
 こう、お肉とか魚とか
 全然食べないの?」
「食べない」
「それだと、ここでは
 海藻しか食べられなく無い!?」

とても、自分には出来ないと
京子は満樹を心配する。

「やっぱり、行こう、狩り!!
 肉を食べたら元気になるから」
「元気だから。
 それに、何その、
 肉は力の理論!?」
「騙されたと思って食べてみてよ」

「いや、京子!!」

「狩り、だって?」

二人の背後から
声が掛かる。

「まさか、神聖な山に
 立ち入るどころか
 狩りをしようって言ってるんじゃ
 無いだろうな?」

腕に覚えのありそうな
海一族が
ずかずかと近寄ってくる。

「え?え?」
「京子、他の一族の土地で
 勝手に狩りをするのは良くない」
「あわわわ、
 ごご、ごめ」

ふぅ、とため息をつき
満樹は海一族に謝罪する。

「すみません。
 言葉のあやです。
 山に立ち入る気はありません」
「本当だろうな?」
「ごめんなさい」

満樹の背後から
京子も頭を下げる。

「……めずらしい、
 東一族と西一族の旅人か?」
「まぁ、色々ありまして」

信じてやりたいが、と
どこか疑ったままの目線を向けたまま
海一族が言う。

「最近
 山に立ち入ろうとする部外者が多くてな、
 悪いが、俺と一緒に来てくれ」
「本当に誤解なの!!」
「京子、ここは仕方ない。
 いったん、彼の言うことを聞こう」
「満樹~」

「行こう、
 少し気になる事がある」

二人は、誘導されるまま
海一族の青年に付いていく。

「俺は、ミツグ。
 この一体の警備を任されている」

彼はそう名乗る。

「警備とは、この山の?」
「あぁ、神聖な場所だからな」
「海一族なのに、山」
「京子、しっ!!」

一呼吸明けて、
満樹は尋ねる。

「山に立ち入ろうとする者が多いと
 そう言っていましたね」
「ああ」
「そして、それは、
 部外者……他一族、という事ですか?」

そこまで聞いて
京子はやっと
満樹の意図を汲み取る。

「裏……!?」

「お前達、何か知っているのか?」
「いえ」

実際の所、
満樹と京子が
分かっている事は何も無い。

なぜか裏一族に
狙われている事。
その共通点は掌のアザ?

「さて、そういう訳だ」

ミツグは村の外れにある家を訪ねる。

「ツイナ、居るか?」
「ミツグ兄さん、
 どうかした?」
「こいつらを視て欲しいんだが」

奥から出てきたのは
同じく海一族の青年。
京子よりも年若い印象を受ける。

「やぁ、お兄さんお姉さん。
 もしかして山に入ろうとした?」

ダメだよ、怒られちゃうんだから、と
その青年は言う。

「俺は司祭見習いのツイナ。
 これから二人の事
 視させて貰うよ」

「視るってなに!?」
「司祭見習い。
 もしや、先視か?」

満樹の後ろに隠れている京子に
ツイナはクスクスと笑う。

「なんだが二人は、兄妹みたいだねぇ」

「いや、違うから!!」

昨日は恋人と疑われ、
今日は兄妹と来た。

「俺は、そっちの方が
 しっくりくるな」

なんか、もう、疲れたと
満樹が呟く。



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「約束の夜」38

2017年12月22日 | 物語「約束の夜」

馬車が、海一族の村にたどり着く。

京子と満樹は、馬車を降りる。

時刻は夜。

景色はよく見えないが、潮の香りがする。
そして、淡い光。

「あれは海に光を浮かべて、漁をしているんだよ」

馬車主が云う。

「明るくなれば壮大な海が見えるし、夜は夜で、幻想的な景色を楽しめる」

「へえ」
「きれいね」

海一族の村は、東からでも西からでも、南一族の村の、さらに先。
めったに訪れることはない。

「楽しんでいきなよー」

ついでに

「ここなら、東のもんにも西のもんにも見つからないだろうからな!!」

その言葉に、満樹は笑う。

京子は少し遅れて、その意味に気付く。

「そんなんじゃないし!!」

満樹は気にする様子もなく云う。

「宿を探すか」
「・・・もう!」

京子が云う。

「そうね!! 宿よね!」

南一族でもあった、宿のすったもんだ。

「いいのよ、宿で! うん!」
「・・・・・・?」

満樹が訊く。

「ひょっとして民泊したいのか?」
「なっ!!」

とんでもないと、京子が云う。

「民泊した先が裏一族だったらどうするの!」
「宿にも裏の可能性はあるんじゃないのか?」
「民泊より可能性は低くなると思うの!」
「そうなのか?」

満樹は首を傾げる。

「でも、少なくとも俺たちは裏一族を追って来たんだ」

京子の連れであった美和子。
西一族を離族し、裏一族の一員となっていた。

その美和子と

「海一族の村で、顔を合わせることは必至だろう?」

「そう、よね・・・」

京子はうなだれる。

「美和子・・・」

満樹は、馬車主にもらった地図を取り出す。

「その、兄の手がかりを掴んだら、西に戻ればいい」
「そうだけど・・・」

大きく息を吐く京子を、満樹は見る。

「・・・よし、来るなら来い!」
「大丈夫か?」
「もちろん!」

強がったり、
弱音を吐いたり、
泣きたくもあるけれど

ここまで来たのだ。

「やる!」
「何を?」
「狩りを!!」
「狩りを!?」

突然!!

「ほら、海一族の村と云っても、割と山も近いのね」
京子は地図を指さす。
「いや、うん。そうだけど」
「ちょっと狩りってきて、気持ちを入れ替えるわ!!」
「狩りってくる!?」
「さあ、行きましょう!!」
「俺も!?」
「そうよ!」
京子が云う。
「私の狩りの腕を見て! 裏一族にも負けない!!」
「えぇええ!?」

落ち着け、今、夜だから!!

満樹は何から伝えたらいいんだろうと、一息置く。

「とりあえず、・・・宿を探そう!」
「そうだったわ!」

夜の狩りは危険。ダメ絶対。

「宿に入ったら、京子の兄の手がかりをどこからあたるか決めて」
「ねえ?」
「何?」
「カニでも食べてみない?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「お腹が空いたのか?」

はは、と、京子は笑いながら頷く。

「お前、俺の知り合いみたいなこと云うんだな・・・」

「知り合い?」
「こっちの話」

満樹は云う。

「食べてみたらいいよ」
「満樹は?」
「東は、生き物は食べないって」



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「約束の夜」37

2017年12月19日 | 物語「約束の夜」

これ以上この村に留まるのは
得策ではない。

満樹と京子は足早に村を後にする。

「このままだと
 あの人が着いてくると駄々をこねそうなので」
「今のうちに、旅立つのよ!!」

飛鳥の事である。

「海一族の村行きの馬車はあっちね。
 うーん、出費がかさむわ」

懐具合を心配している京子に
満樹が問いかける。

「一度、西一族の村に戻らなくて良いのか?」
「う、ん。
 戻って報告する事は
 たくさんあるのだけど」

美和子のこと。兄の耀のこと。

「理由はないけど
 急いだ方がよい気がして」

今追いかけないと、
また、兄の手がかりが無くなるかも知れない。

「そういう、満樹は?」
「俺は元々海一族の村に行くつもりだった」
「じゃあ、まだ暫くは一緒ね」

馬車に乗り込み、
絶妙な距離を開けて2人は腰掛ける。
一応、敵対している一族。
知り合ってそう間もない。

「……人少ないわね」

少ないどころか、
乗客は二人のみ。

「まぁ、裏一族の手の者が
 潜んでいるかも知れないと思いながら
 過ごすよりは良いんじゃないか」
「裏一族、ねぇ」
「本来なら、【一族】というのもおかしい。
 あいつらは
 はぐれ者の集まりだ」

本来属している一族になじめない者、
罪を犯して一族を追われた者、
または、どの一族でもない者。

そんな彼らが集まったのが通称【裏一族】

「美和子、裏一族だったんだなぁ」

京子はぽつりと呟く。

「そういう風には、見えなかったけど」
「……まぁ、潜入しているなら
 そんなそぶりは見せないだろう。
 気がつけなくても仕方ない」
「そう、ね」

「………」

京子は、急にぽろぽろと泣き出す。

「お、おい?」
「あんなに、良くしてくれたのに。
 私を誘い出すための
 演技だったのかな」
「京子」
「ごめんね。
 本当はこれから一人でどうしようって
 思っていたの」

満樹のように、勤めで来ているわけではない。
諜報員でも、腕に覚えがあるわけでもない。
慣れない村で、仲間に裏切られ、

強がっていたが、途方にくれていたはずだ。

満樹は、腕を伸ばしかけて、止める。

「俺は東一族だぞ。
 そんなにすぐ信用しない方がよい」

「わかってる」

それでも、と京子は言う。

「満樹が一緒に来てくれるの、
 凄く心強い、ありがとう」
「目的が同じ所までだぞ」

「ええ。
 そこまで、よろしくね」



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「約束の夜」36

2017年12月15日 | 物語「約束の夜」

「大丈夫か!!」
「ええ」

京子は息を吐く。

兄である耀に会いたいなら、美和子と共に、行くべき?

「いったいどう云うことなんだろうな!!」
「・・・・・・」

つまり

美和子は、すでに、耀の居場所を知っていると云う・・・こと?

「こんなところで考えていても仕方ない!!」
「そう、よね・・・」
「今日は豆料理を腹いっぱい食ってだな!!」

「いや、ちょっと一旦、口閉じましょうか」

先ほどから声がでかい飛鳥の肩を、満樹は叩く。

「しかしだな、東の兄ちゃん!!」

「落ち着けー、落ち着けー」

呪文のように、満樹は、飛鳥の背中をなでる。

「京子、」

呼ばれて、京子は顔を上げる。

「西の連れは、さっき何と云っていた?」
「えっと、」
「これから向かう場所だ」
「・・・海?」

美和子は、海一族の村へと向かうと云っていた。
つまり
そこへ行けば、何かしらの手がかりがあるはず。

「海一族の村に」
「はいっ。俺も行く!!」

きおつけ、で、飛鳥は手をぴんと伸ばす。

「はいっ。俺も!!」

「2回も云う・・・」
「本当に来るの!?」

京子と満樹は、顔を見合わせる。

「なぜなら、俺は魔法を使えるからな!!」
飛鳥が胸を張る。
「満樹と京子が困ったときに、魔法使いの俺に任せておけ!!」

名まえで呼び出すとは、一緒に行く気満々。

「いや、」
「でも、」

「遠慮はいらない!!」

飛鳥が云う。

「俺は冒険にあこがれている!!」

満樹は首を振る。

「別に冒険じゃない!」
「冒険だろう!!」
「私はお兄ちゃんを探したいだけなの!」
「生き別れた兄・・・。実はラスボスであり、父であり、友であり・・・そして、俺!!」
「ラスボス!?」
「いや、それは絶対ない!」

「俺を拒むことはない!」

大丈夫大丈夫! と、京子と満樹は首を振る。

「ほら、だって、お子さんがいるだろう!?」
「むむっ」
「それに、何か、あなたじゃないと思うの!」
「何か俺じゃないって、どう云うことだ!!」
「よく判らないけれど、あなたはここでお別れなのよ!」
「そう。あなたはたぶん、一緒に来る人じゃない!」
「どう云うことだ、東と西!!!!!」

「ちょっと、お父さん!!」

どーーーーーん。

その声は、飛鳥の娘、マジダ!

「おお、我が娘!」
「もうお父さんってば!」
「何だ、娘よ!!」
「お母さんが、今日の甘味は何がいいの?だって!!」
「甘味!!」
「早く決めなきゃ、お父さんの分なしだって云ってた!!」

「何っ!!」

瞬間、飛鳥は走り出す。

「ま、たぶん、いつものあんこ包みだと思うけどね!」

そう
父の背中への、娘の捨て台詞を

ただただ、京子と満樹は聞く。



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