TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」16

2021年01月29日 | 物語「続・夢幻章伝」
チナツの背中を見ながら、マツバは思う。

(伝えたかったことって、それか!!)

いや。
他にも何かあったかもしれない。
この世に、永遠の風が吹くように。
それとも
助けてを求める人がいるかぎり。
いつか、柱になるために。
僕たちの冒険は終わらない。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「くっ!!!」

「どうした!?」

「前回の流れでシリアスを延ばそうと思ったけど、もうダメ!!」

「なんでやねん」

「一応、流行の単語とかも入れてみたんだけど」

マツバはおでこの汗を拭う。

「わっしょい野郎のせいだわ!」

わっしょいしていたのは、南一族側です。

「なぜだろう。南一族の呪文になってしまう。なぜだろう」
「マツバ、2回云ってる! 2回目イッテルビウム!! キコキコ!!」

「落ち着けよ、お前ら!!」

「じゃあ、行きましょうか」

冷静に、子どものヒビキが口を挟む。
また、戻ってきて、狩りの後片付けを手伝わなくちゃならないし。

「西一族は年上の人から狩りを習うんです」

ヒビキが歩き出す。

「親から習って、そして、また、別の人にも」
西一族ならではの慣わしだ。
「上手い人から学んで・・・、それぞれに師匠みたいな」

「で、あのチナツがお前の狩りの師匠なんだな」

「そう云う関係大変ね」

とは云うが

南一族も、魔法を親や得意な人から学ぶ。

「僕はまだ駆け出しだから」

「その年で狩りに行ったら危ないだろ」
「そうよ、まずは基本から!」

ただ獲物を狙うだけでなく、出来ないといけないことは、たくさんある。
狩りの準備。
狩りのあとの、解体。片付け。

「へへ、ありがと」

ヒビキはトコトコと歩く。

「僕、ひとりっ子だからさ」
「そうかぁ、キコキコ」
「狩りの師匠も兄さんみたいで嬉しかったり」

・・・あんなんでも。

「お前・・・」
「僕も本当の兄さんとかほしいなぁ」

アヅチとマツバは頷く。

「ヒビキ」
「えぇ」

「「俺たちが兄さん姉さんになってあげるぜ(わ)!!」」

「基本知らない人は無理です」

すん。

ぺこりとヒビキは頭を下げる。

・・・・・・。

ひゅ~~~

あ、ちょっと恥ずかしい空気。

「あ、でも、黒髪かっこいいですね」

「うん、」
「まあ、」

「西一族には黒髪の者はいませんから」

たまに来る南一族の人を見るくらいで、と云いつつ
ちらりとヒビキはマツバを見る。

「チナツさんと知り合いですか?」
「はぁあああ!!?」
「さっき内緒話とかしてたから」
「はぁあああ!!!」

マツバは雷を落とす。(雰囲気)

「知らないわよ! 知らないわよ!!」
「マツバ2回目イッテルビウム!!キコキコ!」

「謎の関係、そしていつか、実を結ぶ」

「何云ってるのよ、あんた!!」

「ひょっとして、生き別れの兄さん?」

「ちょいちょいちょい!!」

「だってチナツさん、・・・、は、置いておいて」

「お前何かフラグを立てようとしたな!?」

「2人で秘密の通路を作ったりしてないよね」

「してないわよ!!」

あはは、と、ヒビキは笑う。

「あ、ここ。僕の家です」

ぺこり。

「なんなのよ~、あんたいったい」

「人の秘密を知りたくなるの、これって血かなぁ」

「にこにこしてて、怖いやつ!」





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「続・夢幻章伝」15

2021年01月26日 | 物語「続・夢幻章伝」
「えっと、南一族の方」

少しもじもじしながらも
はにかんだ笑顔でヒビキは言う。

「ようこそ、西一族の村へ。
 どうぞ楽しんでいってください」

そして、ぺこり、とアヅチ達にお辞儀。

「えらい!!」
「しっかりしている、小さいのに」
「かわいいキコキコ!!!」

さすが村長の息子。

「ごあんないしますね」

「良い子!!!」
「よし、飴ちゃんをあげよう」

あ、とヒビキは顔を横に振る。

「ありがとうございます。
 でもしらない人から食べ物をもらうなといわれており」

「「「ちゃんとしている」」」

なんてしつけの行き届いた
気の利いた子なんだ。
村長の家にもつつがなく案内をしてくれるであろう。

足元に寝そべっているチナツを一瞥して
アヅチ、マツバは頷く。

『『こいつは、置いていっていいよな』』(心の声)

わっしょい疲れるし。

「と、思っているだろうが」

心の声を読むチナツ。
どきん、とするアヅチ達。

「なぁヒビキ。
 お前の狩りの師匠は誰だ」

え、とヒビキは背筋を正す。

「セ……チナツさんです」
「だよな」
「………」
「………」
「………あ、う」

困った顔でアヅチ達を見るヒビキ。

「ちびっ子に無言の圧力をかけるな」
「人としてどうかと思うキコキコ」
「あと、わっしょい疲れるのよ!!!」

まてまて、とチナツは言う。

「俺は別に、
 あ~あ、そう、俺の事置いて行くの、
 とか
 ふうん、そうですか、次回の訓練覚えとけよ
 とか
 そういうこと全然思ってないから」

「「「思ってるだろ」」キコキコ!!」

「冗談だって」

よいせ、とチナツは立ち上がる。

「俺はバイト早抜けできたし、
 そのまま帰るとするわ
 ヒビキ、後はよろしくな」
「はい」
「いい子だ。
 う~ん、労働の後は疲れるなあ」

帰ってぐうたらしよう、と
またお昼寝宣言。
どんだけ眠いんだこの人。

「あ、そうそう」

と、すれ違いざまにマツバに声をかける。

「安心した?
 それともガッカリした?」
「………なにを」

それはマツバにしか聞こえないような
でも、はっきりと聞こえる言葉で。

「案外そんな物だ。
 昔、村に居た黒髪の事なんて、誰も覚えちゃ居ない」

「あんたっ!!」

何者、と構えるマツバにチナツは答える。

「俺もお前と同じだ。
 まあ、言いたかったのはそれなんだけど」

じゃあな、とチナツはどこかへ去っていく。

「改めて、ようこそ西一族の村へ。
 おかえり、マツバ」

チナツは知っている、マツバの秘密を。

「…………」

ふとアヅチは
いつもと様子が違うマツバに気がつく。

「おい、マツバ大丈夫か?」

「あいつ」
「?」

ゴクリ、と生唾を飲み込むマツバ。

「この作品で、
 シリアスパートをかましてきたわ」

な、とアヅチも冷や汗をかく。

「この世界感で、か!!!」
「ええ」
「どういう事キコキコ」
「多分」

震える腕を押さえながらマツバは言う。


「出る作品間違えたんじゃないかしら!!!!」



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「続・夢幻章伝」14

2021年01月22日 | 物語「続・夢幻章伝」
~わっしょい ってさ、どんなときでも勇気をくれるよね~

「ああ、今日は空が青い」

彼は尻が痛いはずなのに。
こんなにも、仲間の目があるのに。

「あ、飛行機雲」

いつの間にか
寝転がったまま頭に手を回し、足を組み、
お、あの鳥。名まえなんだっけ。
とか、考える。

(この世界に飛行機雲は存在しないはずです)

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「いや、お前、そんなキャラだっけ?」

おーい、とセイジが声をかける。

「あ、セイジ」
「チナツ、お前本当にどうした」
「彼らを案内するように云われて」

そうそう。

そこにいるのは南一族のふたり、と

「そ、そいつは!!?」

みんな、がばっと狩りの道具を手に取る。
ふわふわうねうねキコキコしているものに焦点を当てる。

「獲物だ!」
「獲物だ!!」

「えぇえ、オイラ獲物じゃないよ、へび呼ロイドだよぅキコキコ」

「しゃべった!!」
「食えるのか!?」
「いや食われるぞ!!」

「そそんな! キコキコ」

へび呼ロイドは全力高速で首を振る。

「オイラが食べるのはみんなと同じ定食だよぅキコキコ」

「定食!?」

本当に何なんだ、これ。

「はいはい。それはともかく!」
マツバが声を上げる。
「ほら、あんた、案内しなさいよ!」

ふたりと一匹で運んだとは云え、重かったんだから!

「まあまあ」
チナツはゆっくりと上半身を上げる。
「慌てるなよ。それ、今年の目標」
「めっちゃ新年感出してきたな」
「あと、太らない」
「あわわキコキコ」
へび呼ロイドはきゃっ、と口に手を当てる。
「こんなに毎日冒険に明け暮れても、なぜだか太っちゃう」

おいしいもの食べまくってるからね。

「ねぇ、どうする、セイジ?」

この場のヒロインと云わんばかりのオーラで
モミジが口を挟む。

「困ってるようだけど、狩りの片付けもあるし」

「うわぁわあああ、そうですよね! 忙しいですよね!!キコキコ!」

すんませんすんませんと、へび呼ロイドはあたまを下げる。

「肉は鮮度が大切だからな!」

いい加減起きろよ、と、セイジはチナツを立たせる。

「ほら! みんなはじめるぞ!!」

セイジの声に

モミジ、ユウヤ、なんかたくさん。
おー!! と、声を上げる。

南一族では見られない、狩りのあとの作業。(捌く)

「さ。行こうか」

ふっ、と、チナツは方向を変える。

「みんな、忙しいみたいだから、さ」

そして、

「えぇえ!? キコキコ」
「おいおい!」
「ちょっと!!!」

チナツは寝そべる。

「行こうよ、村長の屋敷へ」

「・・・これは、もしかして、運べと云うことなのか!!」

ワッショイ
わっしょい
ワッショイ
わっしょい

~わっしょいってさ、どんなときでも、やると疲れるよね~

「あ、お前ら、村長のところ行くの?」

すごい手のセイジが、顔を上げる。

「そうよ、スタンプもらいにね!!」
「スタンプ?」
「早くしないと、お昼食べ損ねちゃうから!」

あと早く西一族の村を出たい。

「マツバ食べ過ぎだよ~(汗)」
「人は口からの食べ物を必要とする生き物なのよ!」
「物事には限度があぁあああ」

「あのさ」

セイジが云う。

「ヒビキに連れて行ってもらえよ」

ん? と、アヅチとマツバはセイジを見る。

「こいつ、村長の息子だから」

「なん、」
「何ですって!!」

すすっと出てきたのは、まだ幼い子。

「助かった! これでスタンプゲットね」
「よかったよぅキコキコ」
「じゃあ」

アヅチとマツバは頷き、足下を見る。

これ、運ぶ必要なくね?




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「続・夢幻章伝」13

2021年01月19日 | 物語「続・夢幻章伝」
西一族の村にある広場。

そこは、
主に狩りの集合場所として使われ
今日も狩りを終えた村人達が集まっている。

「おつかれさま~、セイジ」

飲み物をどうぞ、と
差し出される青年。

「あ、ありがと、モミジ。
 今日そっちの班はどうだった?」

突然の事に驚きながら
さり気ない感じで会話を返す。

「うーん、普通かな」
「そうかな、結構成果出てたじゃん」
「セイジ達の班に比べたら」

よし、と心を決めて
少女の方を見つめる青年。

「良かったら、俺の班に来なよ」
「セイジの班に?」
「そ、モミジなら大歓迎」

「わぁ、ありがとう」

嬉しいな、と笑う少女に、
よっしゃ、と
内心ガッツポーズを決めながら青年は思う。

今日はいい日だ!!

朝から何だかそんな予感がしていた
今日は良い日!!

「良い………日?」

そんな時、広場に異様な物が現れる。

わっしょい
ワッショイ
わっしょい
ワッショイ

同じ西一族のチナツ、が運搬されてくる。

眠っている彼をまるで御輿のように、
なぜだか南一族と謎の生き物が手足を抱え、
謎のかけ声と共に広場の中央に向かって進んでくる。



わっしょい
ワッショイ
わっしょい
ワッショイ

運搬?

というか

「え?生け贄????」

ざわざわする西一族の若者達。

「えええええ?
 なにあれ、なにあれ!?」
「怖っつ!!!」
「チナツ捕らえられてる!?」

女子とか泣きそうな子も居る。

「いや、待て!!
 よく見ろ!!!!」

一人の青年が指をさす。

「あいつ、起きてるぞ!!!」

そう
いつの間にか目覚めていたチナツが
頬杖をついてリラックスしている。

ある意味優雅にジュースとか飲んでいそうな
その風格は、

「え?王様的な!?」
「ファラオ?」
「皇帝?」
「将軍なのか、あれ???」

わっしょい
ワッショイ
わっしょい
ワッショイ

「わっしょぉおおおい!!!!」

だが、最後に中央に
えいさーと投げ込まれる。

「………もっと丁寧にさぁ」

ぽつりと呟くチナツ。

「届けたわよ!!!!」

ふうん、と息巻く南一族の少女に、

昔、あんな顔の子が
村に居た気がするけれど
あんな雰囲気では無かったなぁ、
別人かなぁ、南一族だし、と

何だか冷や汗をかくセイジくんでした。

いい日になりそうだったのに。


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「続・夢幻章伝」12

2021年01月15日 | 物語「続・夢幻章伝」
「案内役!」
「だから、案内されるほど滞在しないわよ!!」
「キャラ的にこれ(夢幻)に出ても大丈夫ぅうキコキコ??」
「俺が案内すると云っているだろぅ!!」

やいのやいの

「はいはい」

マスター2回目のパンパン。

「観光なら、ここはどうかな?」

先ほど取り出したパンフで指を指したのは

「天然の滝」

「滝!!」

「外なら、いろいろ密にはならないだろう」

「その理由!」

「ただ・・・それだけだ(遠い目で)」

「滝を見に行って、これ的に(夢幻)盛り上がるとは思えないんだけど!」

「くっ、しかし、俺には時間が・・・ない!!(byタクト)」

「お前早く法事に行けよ!!」

すっと、立ち上がるチナツと呼ばれた少年。

「伝えたいことがあるから、外へと行こう」

マスターは、その椅子を定位置に戻しつつ、頷く。

チナツの様子に、アヅチとマツバは息をのむ。
えっ、この人、気が合うのかな!?

「さあ、楽しんでおいで!!」

外に出るご一行。

タクトは
じゃあ早く終わらせてくるから! と、一時退場。
友だちが来たって親父に伝えておくよ!! とも。

「ちょっと静かになったな」
「ええ」
「そうだね、キコキコ」
「さっきから語尾にキコキコって何よ、へび呼ロイド」
「キャラが多いと誰のセリフかわっかんなくて、キャラ変したんだキコキコ」
「文字数多いんですけど」

へび呼ロイドのキャラ変はさておき。

「私たちさぁ、水辺スタンプラリーのスタンプを探してるのよ」
うんうん、と、アヅチは頷く。
「村長の家とやらに、スタンプ台があるんだろう?」

チナツは首を傾げる。

「俺は参加してないから知らないなぁ」

「じゃああんた何のためのキャラ!!」

「狩りの集合場所はこっちだ!」

「聞いてぬぇ!」

「眠いんですけど」

「それも聞いてぬぇ!!」

土地勘の全くない場所で、
せっかく村長の家が判ったのに
別の場所に連れて行かれて、また判らなくなる悲劇!

「おかしいわよ」

マツバは目を細め、チナツの背中を見る。

「何かがおかしいわよ」
「何がおかしいのキコキコ?」
「何だよ」

「罠なの!?」

「罠キコキコ!」
「罠ってなんだ!!」

「私たちをスタンプから遠ざけているとしか思えないわ」

「まっ、!! キコキコ」
「おいおい冗談だろう!?」

「滝、とか云って、狩場に連れて行こうとするし」
「狩りの集合場所な」
「なんか、伝えたいことあるとか云って、特にないし!」

そういや、喫茶店出るときにそんなこと云ってたね。

「そして寝てるし!!」

「「おぉおおーーーい!!!」」

道の真ん中でスリープするチナツくん。

「どんだけ眠いんだ!?」
「本当よ、もう。どうする?」

このまま放っておくのもあり、か?

「狩りの集合場所に行けば、友だちがいるよキコキコ!!」

「・・・・・・」
「運ぶか」

道ばたで眠るチナツ。
頭側を持ち上げるアヅチ。
足側を持つマツバ。
下からお尻を支えるへび呼ロイド。

「「せーの!!」」

わっしょい
ワッショイ
わっしょい
ワッショイ

続く!




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