TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」64

2018年04月27日 | 物語「約束の夜」

「満樹も視てあげようか」

「ん?」

「先視」

「俺の未来を見てどうするんだ」

「だって、何か判るかも」

「何かって?」

「な、に、か」

山一族の村を出て、海一族の村へとふたりは向かう途中。
どちらにしても
一度、海一族の村の方へ出ないと、南一族の村へとは行けない。

「どうしたらいいんだ?」

満樹は立ち止まる。

「俺見習いだから」
「知ってる」
「なかなかに上手くいかないし」
「だから、どうしたらいいんだ!」

「手を」

ツイナが、手のひらを出す。
先ほど京子にしたように、手を取る、と云うこと。

「こうか」
「うん。そう」

満樹とツイナは手をつなぐ。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「見える」
「・・・・・・?」
「ここは、東一族の村・・・?」
「うん・・・?」
「なのかな?」
「おいおい」

ツイナはぐっと目を閉じる。

「満樹、・・・」

「・・・・・・」

「満樹の、家族?」

ツイナは首を傾げる。

「満樹の家族は、・・・兄さんが特殊?」
「それは、どこかで俺が云ったぞ」
「いや、・・・違う」
「・・・・・・?」
「満樹の兄さんは、ちょっと特殊」

ちょっと、って

「どちらかと云うと、満樹の方が、・・・特殊?」

「特殊?」

「お母さんが、・・・うーーーん」
「?」
「いや、お父さん、か?」
「??」

「でも、満樹はよい流れの中にいる」

「よい流れ?」

「無理をする必要はありません」

「???」

「これからも、あなたらしく過ごすことを心がけて!」

「結局、今日の運勢か!!」

てへっと、ツイナは舌を出す。

「俺なりに頑張ったんだよー」
「はいはい。ありがとな」
「満樹、つれないなー!」

「ん? 待て」

満樹は、ふと何かの気配を感じる。

人。

「誰、」
「誰だ?」

「おぉおおお!?」

「「!!!」」

突然に人が現れ、

「西、」
「一族!?」

容姿からの、ふたり判断。

「いや、ほんと、俺狩りの途中で」

その突然現れた西一族?は、照れくさそうに

「何か、お邪魔しました~」

「・・・!!?」
「えっ、これ!?」

山の中で、

ひっそり

手をつないでいた

他一族同士の男ズ。の図。

「「いや、違うし!!」」

「大丈夫! ほんと大丈夫!!」

あはは~と、通りすがりの西一族は去ってゆく。

「「違うし! 違うしー!!」」

ドンマイ、満樹&ツイナ。



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「約束の夜」63

2018年04月24日 | 物語「約束の夜」

「ここまで来れば、大丈夫よ」

と、京子が言う。

山一族の村を離れ、
山を少し下った所。

一晩皆で思案したが
これ以上山一族の村で得られる情報は無さそうだ
という事で落ち着いた。

「裏一族の拠点?も気になる所だけど」
「俺と京子は山一族の村では
 上手く動けそうにないし」
「そもそも、本当に
 拠点山一族の村にあるの?っていう」

裏一族が去り際に呟いたという
「ま」という言葉。

山一族の村では無いかと来てみたものの。

「………ミツグ兄さんの聞き間違い」
「「そういう事にしておこう」」

与篠の事が何か分かったら
夕紀に知らせると約束し
人目の少ない早朝に村を出てきた。

朝食を勧められたが
丁重にお断りしてきたよ。

「もう少し西一族の村に
 近いところまで送るが」

満樹が言うが、京子は断る。

「いいの。
 これ以上進むと、西一族の狩り場だから
 誰かに見つかると面倒でしょう」
「……本当に大丈夫か?」
「私これでも、狩りの一族西一族よ。
 狩りをするならともかく、
 山を下りて村に帰るだけだし」
「「………」」

ツイナが京子の手を取り
すっと、目を閉じる。

「汝の旅路に災い無く、
 病無く、穢れなく、
 海の神と太陽の神の加護のあらんことを」

体がほんのりと温かくなったような気がして
京子はツイナを見る。

「そういえば、司祭様だったわね。
 加護の呪文は初めてよ。ありがとう」
「……見習いだけどね」

それじゃあ、と
京子は満樹を見る。

「満樹、ツイナをお願いね」
「あぁ海一族の村を経由して、
 俺も東一族の村に戻る」
「自分の出自について調べ」
「約束の日に」

「「「北一族の村で」」」

なぜ、自分たちが裏一族に狙われているのか。
その共通点は何なのか。

その謎を解くために。

「お互い、裏一族には気をつけて」
「ああ」
「かぜ引かないようにね~」

京子の姿が見えなくなるのを見届けて
満樹とツイナも歩き出す。

「俺達も行くぞ」
「うう~ん。
 やっぱり海一族の村戻らなきゃダメ?
 情報は少ないと思うよ」

自分の出生について知りたいから
村を出た訳だし。

「それでも、
 何か手がかりがあるかもしれないだろう」
「そうだけど。
 そうだけどさぁ」

なんせ、意気揚々と旅立ったのは昨日。

「俺、『自分探しの旅一泊二日』って
 あだ名付いたらどうしよう」
「それは………ありえる」
「ほらーーー!!」

「「…………」」

ふふん、とツイナが尋ねる。

「京子のこと、心配?」
「それはそうだが」

が、と満樹は言う。

「ツイナ。
 お前さっき、加護の呪文と共に
 先視もしたな」
「おお、ばれてる」
「それで送り出したと言う事は
 大丈夫と視たのだろう」
「うーん、そうなんだけど」

なんせ、見習いなので
大雑把なことしか分からない。

「こう、なんていうのかな」
「?」
「身の危険は無いけれど」
「何か起こるのか!?」

「運命の出会いあり、みたいな」

「運命の?」
「出会い!!」

今日の星座ランキングかな。



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「約束の夜」62

2018年04月20日 | 物語「約束の夜」

「西、一族・・・」

先ほどの夕紀の言葉を、京子は繰り返す。
準備してもらったベッドに横になり、ぼんやりと天井を見る。

つまり

山一族の与篠は

西一族の父親と、山一族の母親の子、と云うことになる。

西一族と山一族は、お互い敵対しているのだ。
その一族同士の子となると、非常に珍しい存在となる。

「与篠は、・・・」

それで十分狙われる理由になる。が

連れ去られたのか、
自ら裏一族のもとへと赴いたのか

それは、本人しか判らないこと。

京子は、ため息をつき寝返りをつく。

なら、

自分に満樹、ツイナが狙われたのは・・・?

ただ、手のひらにアザと云うことだけではなく
本当に何か出生に秘密が・・・??

「一度、西に戻るか・・・」

兄の耀も、何か出生の秘密があって、まさか裏一族に??

「ふう」

明日、満樹とツイナに相談してみよう。
もう寝よう。

「でも、とりあえずは、」

京子はむくりと起き上がり、部屋の中を見渡す。

「この甘い香りがする花たちはいったい何なのよー!!」

なんなのよー!!

よー!!

(※エコー)

京子が使っている部屋には、
黄色~橙色の、トランペット型の花を咲かせた大型の植物で
埋め尽くされているの図。

「気持ち悪くて、寝れないわー!!」

「それは、ブルグマンシアだ」
「ブルグマンシア??」
「もしくは、ダチュラ」
「ダチュラ??」

って、

「満樹!?」

「俺も起きてるよー!」
「ツイナ!」
「京子さぁ、独り言うるさいんだもん」

隣の部屋との壁が薄いんだか、心の声が全部タダ漏れだったのか。

「こっちの部屋にも、その花がたくさんあるぞー」
「なんなのよ、これ。気持ち悪い」

「よく見るとそうでもないかと思うけど」
満樹が続ける。
「この香りに当てられると、ふわっと意識なくなる」

「げげっ!!」

夕紀&与篠、侮れない。

みんなも、どんな香りかなー??

なんでもかんでも、香りを確かめないように!!

「京子、西に行くのか?」

「・・・うーん」
「西なら俺も行ってみたい!」
「でも、満樹は、」
「俺は西には入れないな」

西一族と東一族は敵対。
当然のことである。

「別行動か」

「それが、不安」

「でも、母親に自分のことを訊いてきたいんだろう?」
「・・・うん」

京子は天井を見ながら云う。

「ねえ、満樹、ツイナ」

「何?」
「何だ?」

「満樹とツイナも、一度、一族の村へ戻って」

「え?」

ツイナの訳が分からないと云う戸惑いに、
満樹が答える。

「自分のことを確かめてこい、か?」



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「約束の夜」61

2018年04月17日 | 物語「約束の夜」
どこから説明したものか、と
満樹はかみ砕いて話す。

「俺達は、同じ事件に巻き込まれて
 ここまで一緒に旅をしてきた」
「……事件?」

そう、と京子。

「皆、裏一族に狙われているの」

「裏ですって!?」

思いもよらなかった返答に
夕紀が動揺する。

「俺達は一族も、性別も
 何もかも違う。
 ただ、いま分かっている共通点が一つ」

繭里がそれに続く。

「それが、掌のアザと言う事?」

「でも、あの子のアザは生まれつきで」
「俺達もそうだ」

「………じゃあ、与篠は」

「裏一族に勧誘された。
 もしくは攫われた可能性が高い」

なんて、ことでしょう、と
夕紀の顔色が悪くなる。

「あぁ、与篠!!
 今、一体どんな目にあっているのかしら。
 変な薬の実験に使われていたら!!」
「それは、さっきの俺達だね」
「落ち着いて、確定した訳じゃない」

仮の話だが、と念押しした上で
満樹は問いかける。

「俺は、このアザは
 あくまで目印だと思っている」
「それは、どういう事?」
「俺達が狙われるにはきっと別の理由がある。
 夕紀さん、何か思い当たる事は無いか?」

「俺達と、与篠の共通点」

「そんな、急に言われても」

「何でも良いと思うよ。
 少しでも情報があれば、
 与篠さんの発見につながるかも」
「………薬草(毒)が、趣味とか」
「それは、与篠さんと夕紀さんだけかな」
「………桜餅の葉っぱは、取って食べる派」
「多分、それじゃない上に
 そんな集団を集めて
 裏一族は何をする気なんだ」

焦れば焦るほど
思考が動かない説。

「正直私達も意味不明なのよね。
 一族も、性別もバラバラ、年齢は、ちょっと近いけど
 同い年でもなさそうだし」

「……一族」

は、と顔を上げて
夕紀は辺りを見回す。

躊躇いがちに、こう呟く。

「実は、あの子は
 純粋な山一族ではないの」
「え?」

繭里も驚いている。
どうやら、その件は
一族内でも隠されていた事。

「つまり?」
「他一族の血が流れている、という事」

それ以上語ろうとしない夕紀に
京子が言う。

「えっと、
 裏一族は混血の者を狙ってる?」

一族間に行き来があるとは言え
混血の者はまだ珍しい。

でも。

「お母さんは西一族よ。
 お父さんが他一族っては聞いた事ないけど」
「うちの両親は二人とも東一族だぞ」
「俺は親については
 よく知らないんだよね。孤児だったし」
「「「「…………そう」」」」

ツイナは急にシリアスな話しを
軽いノリでぶっ込んでくるので心の準備が。

「じゃあ、混血説は違うなぁ。
 そうしたら、選ばれし勇者の末裔とか……」

話しはぐだぐだのまま、
時間も遅くなったので
今日はとりあえず夕紀の家にお世話になる事に。

「それじゃあ、私は帰りますね」
「おやすみ、繭里」
「貴方達の部屋は2階に準備したわ」
「お世話になります」
「ちなみに、よく眠れるお茶が」
「「「遠慮しておきます」」」

野営を覚悟していたが
なんやかんやでベッドで眠れる。

先に2階に上がった二人の後に続こうと
階段に足をかけた京子に声が掛かる。

「京子ちゃん」

振り返ると
夕紀が階段の下から京子を見ている。

「貴方には、言っておこうと思って」

「私に?」
「ええ、実は与篠の父親は」

夕紀は何とも言えない表情で
京子を見る。

「西一族なのよ」



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「約束の夜」60

2018年04月13日 | 物語「約束の夜」

砂一族にも勝る植物成分(毒?)の扱い。
薬と毒は紙一重。

趣味ってすげぇ。

(よい子は真似しちゃダメだぞ☆)

「えーっと」

満樹は一応、今回の薬?の確認。
対砂一族(東一族と敵対)のために、毒の勉強はさせられています。

「痛みが改善されて、京子は目がらんらん」

「俺、そのお茶を海に持って帰りたいなー!」
「私も欲しいー!! ね、満樹!」

「いや、うん。……今回限りにしておこう」

「何を云うんだよ、兄さん!」
「そうよ、もう一口欲しいくらいだわ!」

依存性確認。

「オピオイ(以下略)……」

「ふふ、もう一杯注ぎましょうか?」
「結構です!!」

満樹は全力で止める。

「えー」
「連れないなぁ、満樹」

「お前ら、つまりこれ、麻(以下略)だからな!」
「ええ、そう。(前略)薬ですぅ、ふふふ」

その笑いが怖いよ、与篠母。

(よい子はぜつつつっったいに真似しちゃダメだぞ☆)

「では、」

繭里がコホンと咳払いをする。

「本題に入りますか?」

「本題?」
「本題??」
「何だっけ?」

どどーーーーーん!!

「与篠の失踪についてです!」

「与篠の失踪?」

繭里は頷く。

「そう。この方々は、与篠の失踪に何か関係があると!」
「どう云うこと?」

夕紀は、3人の顔を見る。
3人は、お互いに顔を見合わせる。

「えっと、」

京子が云う。
「与篠、さん、とは?」
「私の娘」
「俺たちと同じくらいの年、と云うことか」
「つまり、夕紀さんの娘が失踪していると?」
「そう」

「満樹」

繭里が云う。

「あなた、手のひらにアザがあるのでは、と云っていたわね?」
「ああ」
「それはどう云うことですか?」

「それは、だな」

満樹が、京子とツイナに云う。

「ほら、手のひらを出すんだ」
「え?」
「こうか?」

京子とツイナ、そして満樹も、手のひらを見せる。

「これは!」

3人には、同じアザ。

繭里も驚く。

「与篠と同じアザ・・・?」
「なんて、こと」

夕紀は、口元に手をやる。

「あなたたちはいったい?」



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