TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」47

2018年02月27日 | 物語「約束の夜」

どこかから聞こえる詠唱と共に
辺りが霧に覆われはじめる。

「やだ、なんで霧が!?」
「よく考えて、京子!!
 怪談話には突然の霧、突然の雨、突然の停電
 定番じゃないか!!」
「いやぁあああ、
 どこからともなく冷気がぁあああ」
「うわぁあ、なんか、
 なんか、かすったぁあああ!!」
「それ私の髪の毛ぇええええ」

落ち着け。

「いや、どう考えたって
 裏一族の襲撃だろう」

少し離れた所で待機している満樹が
冷静にツッコミを入れる。

そして、

京子とツイナは
エロイ話しをすれば
幽霊は居なくなるって聞いた事ある、と
叫んでいる。

「分からない、
 裏一族が、あの二人を連れて行きたい理由が」

「これ以上様子を見るのは危険だな」
「ああ」

ミツグに続き、
二人の元に近寄ろうとした満樹は
ふと、自分の手を見る。

「?」

僅かに、震えている。

「しまった!?」

この霧は、視界を塞ぐための物では無い。

毒の霧。
体の自由を奪うもの。

「早く、この場から離れるんだ!!」

「え?」
「くっ」

ミツグがその場に膝をつく。
が、口を塞ぎながら
控えていた仲間に合図を送る。

「トーマ!!
 おまえは、司祭様を呼びに行け。
 解毒の術が使えるはずだ。
 他の者も、なるべく霧を吸い込むな」
「分かった。
 すぐ戻るから、持ちこたえてくれ」

満樹も京子とツイナの元へ走る。

満樹の術では
二人をどれだけ守れるか分からないが、

「………」
「………」
「………」

二人は、すでにこの霧の影響で、

倒れているわけでもなく、
ぐったりしているわけでも、
顔色が悪いわけでもなく。

当たり前に、立っている。

「………どういう事だ?」

急いで駆けつけた満樹の方が
霧を吸い込みすぎて
足にもしびれが来ている。

「………なんでだろう?」
「俺と京子が大丈夫で
 ミツグ兄さん達がダメな理由」

術を掛ける対象を選別できるのだろうか。
そうだとしたら
かなりの術の使い手だ。

「いいから、この場から逃げるんだ」
「そんなの、ダメよ!!」

こうなったら、
皆を守って戦えるのは
京子しか居ない。

腰の短刀を抜く。

「出てきなさい!!
 裏一族!!」

「威勢のいい奴だ」

いつの間にそこにいたのか
マントで身を隠した者が二人、
現れる。

「裏一族、ね」

「お前達にもう一度言う、
 こちらに来る気は無いか?」

「無いわ」
「当たり前だ」

京子と満樹が、それぞれ答える。

それならば、と
裏一族は
京子の後ろに居るツイナに問いかける。

「お前はどうだ?」

「いや、行く理由が無いし」

それでは、と

「自分の生まれを知りたくは無いか?
 海一族の『ユウト』」
「!!」

ん?と京子は振り返る。
ツイナは何かに驚いているようで
裏一族を見つめている。

「ツイナ?どうしたの?」

近くで膝をついているミツグも
武器を構えようとする。

「あいつらは何を知っているんだ?」
「ユウトとは、何だ?」

満樹の問いかけにミツグは
すこし渋るように答える。

「ツイナの本当の名だ」



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「約束の夜」46

2018年02月23日 | 物語「約束の夜」

この時期になると、よくあることだ。

階段状に並べられた人形。
一見雅やかではあるが、どこか、はかない表情。
結婚式をモチーフにしたもので
一番上段には、男女の人形が並ぶ。

そして、その下に、供となる3人の女人形。

それが、年が経つにつれ

「伸びるはずのない髪が伸びたり、」

「お、おう」

「持っている長柄とか提下とか三方が、落っこちていたりするのよー!!」
「ぎゃぁああああああ!!」

 息を切らしながら、ツイナが云う。

「そっ、それが、京子に憑いているよくないもの、その2だとしたら」
「いやぁああああああ!!」

「お前ら、黙れ!!」

今日はなんだか忙しいミツグ(20才)。

「日ノ本のお雛様文化を舐めるな」

日は傾いている。
海一族の村の外れに、京子とツイナはいた。
人っ子ひとりいない。

まあ、一般人を巻き込まないようなところに。
とりあえず、坐っている。
裏一族待ち。

おとり×2。

「って、なんで、私もなのよ!」
「ひとりじゃ淋しいじゃないか」
「私は女の子よ!」
「西一族なのに!?」
「黙れ!!」

と、云うか、
本当に、裏一族は、このふたりを狙って現れるのか。

「落ち着けお前ら。まず、怖い話で盛り上がるな」

ミツグが云う。

「恋人らしい話で、盛り上がれ!!」
「いや、無理だろ!?」

恋人設定いるのか、と、満樹が声を出す。

「恋人らしい話って何よ!!?」
「恋人が、怖い話しちゃいけないのか!!?」

「おい! そんなに大きい声を出すと、気付かれるだろう!」

いや、気付かれていいのですが。

気を取り直して、ミツグ(20才)が云う。

「海一族の、上の者には話をしてある」
「そうか」
「本当に裏が現れても、対策は万全だ」
「なら、」

満樹が云う。

「京子とツイナ、ここで(ちゃんと)待てるか?」

「うぅう、満樹・・・」
「ミツグ兄さん・・・」

ふたりは、棄てられた子犬のようだ。

「大丈夫。俺も近くにいる」
「お前も狙われる係だろう」

だが

東一族のある程度の男性なら、保身力は相当高いだろう。

ミツグは訊く。

「相手は何人だ?」
「判らない」
満樹が云う。
「裏は、その名の通り、表に出ないように動く」
大人数ではないはず、だが。
「ひとりひとりがかなりの実力者だ」

「読めないな」

ミツグの言葉に、満樹も頷く。

「ほら!」

ミツグはふたりを見て、ぱんぱんと手を叩く。

「しっかりやれよ!」
「「何を!!」」
「コイバナだ!」
「「「何で!!」」」

と、

「待て!」

満樹が声を落とす。

「何か聞こえる」

「何か?」

「詠唱・・・」
「魔法?」

つまり

「裏一族か」

「気を付けろ!」



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「約束の夜」45

2018年02月20日 | 物語「約束の夜」

色々怒られたツイナが
渋々シリアスモードになる。

「さて、俺は満樹と京子の事を
 視たわけだけど」
「それは、さっき合格って」

そう。

ツイナは頷く。

「二人は合格だよ。
 海一族の村に危害を加えるつもりはない」

「もちろん!!」
「最初からそう言っている」

けどなぁ、いかんせん。と
ツイナは先視の結果を伝える。

「二人には良くないモノが
 まとわりついている。
 それが、どうにもよろしくない」

「……良くないモノ」
「……憑いている」

満樹と京子はすさまじいスピードで
二人から距離を取り、
ひそひそ話をはじめる。

「私、知ってる!!
 これ、今から除霊とかされて
 高額のお経代金を請求されるのよ」
「そして、その後
 高額な壺とかネックレスとかを
 売りつけられる訳だな」
「海一族怖いよーーー!!」

ずん、と
ミツグが強めに地面を踏みしめる。

「我ら一族の先視を
 そこらへんの霊感商法と一緒にするな」

ミツグ兄さん怖っつ!!と
ツイナも若干引いている。

「まぁ、俺の先視も
 見習い程度だから、ぼんやりしているのだけど」
「けど?」
「今の話しを聞いたら
 つじつまが合う。
 良くないモノとはつまり」

「裏一族の事、か」

若干、満樹と京子に
疑いの目を向けてはいるが
それならば、厄介だとミツグが呟く。

「裏一族が我が村に
 忍び込んでいるのか」

長に報告、あと、警備も。

一人対策を練っているミツグをよそに
京子はツイナに問いかける。

「ねぇ、あなた、
 先視でいつ裏一族に襲われるかとか
 分からないの?」

襲撃受ける前提。

「俺は自分の事に関しては
 視えないんだよね」

「そう、それなら
 最終手段を使うしかないわ」
「京子?」
「満樹、あったわよ。
 なるべくこちらが有利な状況で
 裏一族に接触する方法」

ふふふ、と
京子は悪役よろしく、な
笑みを浮かべる。

「ツイナを囮にして
 裏一族をおびき出すのよ」



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「約束の夜」44

2018年02月16日 | 物語「約束の夜」

「裏一族は、手のひらにアザがある者を追っている」

「手のひらに、アザ・・・?」

まさか・・・

「やはり、この手のひらのアザには意味が・・・!」
ツイナは息をのむ。
「この手のひらを太陽に透かして見たとき、」
ツイナは手を掲げる。
「真っ赤に流れる僕のち、!!」

「こらこらこらー!!!」

ミツグは飛び道具を放り投げる。

「いろいろダメー!!」

「何を云うの!」

京子が口を挟む。

「私はそうだと思っているのよ!」

満樹が頷く。

「この案は、この子の案だ」

「ミミズとか、オケラとか、アメン、」
「だからダメー!!!」
「俺も若干、帰りたい」

満樹の嘆きに、ミツグも頷く。

「だが、話を戻そう」
「俺も裏一族のことを訊きたい」

ツイナが訊く。

「裏一族とは、・・・!?」
満樹が頷く。
「水辺8一族に属さない者たちだ」
「水辺8一族・・・」
「正確には「一族」ではないが、9番目の一族と云っても過言ではない」
「9番目の一族・・・」
「8一族すべての力が集結されていて、簡単には太刀打ち出来ない」
「すべての力・・・」
「あまり存在は知られていないし、」
「あまり存在・・・」
「規模や存在も不明」
「規模や・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

「ねえ、ツイナ?」

「・・・・・・」

「ちょっとツイナ!!」

「何だ!」

「あなた、ほぼほぼオウム返しだけど!!」

京子はなんてこったい、の顔をしている。

「もしかして、寝てる!?」
「寝てるもんか!」
「途中から、オウム返しする文言も変だし!」
「なっ!?」
「しかも、満樹が今云ったこと、ほぼほぼ基本情報よ!?」

なんてこったいの顔、パート2。

「とにかく」

満樹は立ち上がる。

「俺たちがお前らを見張っていたわけは伝えたぞ」
「そんなものを、信じられるか!」
「なら、お前たちが俺たちを監視していたのは?」
「何」

「ミツグ兄さん!」

ツイナが制止する。

「確かにそうだ」
ツイナが頷く。
「俺たちも、監視していたわけを伝えるべきだ」
「ツイナ」
「この手のひらのアザに、理由があると!」
「何が」
「トンボだってカエルだって、ミツバチ、」
「ツイナ!!」

「僕らはみんな生きて、!!」

「おいいいいいいいいぃいい!!」



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「約束の夜」43

2018年02月13日 | 物語「約束の夜」

「せっかく海鮮焼きそばを
 注文した所だったのに!!」

割り箸だけ手に持ってやって来た京子。

「俺は海鮮焼きそば海鮮抜きを
 特注した所だったのに」

満樹の言葉に
それはただの焼きそば、と
突っ込みたいのを、ミツグはぐっと我慢する。

「この魔法、もうちょっと
 精密に出来なかったの?」
「いや、」
「東一族の魔法って
 特殊で凄いって聞いてたから
 期待していたのに」
「……ぬんっ!!」

満樹はスンっとした表情を浮かべ
これ以上このことに触れるなと
言わんばかりのオーラを放つ。

「京子は、魔法
 使えないくせに」

ぽつり。

「言ったわねーーーー!!」

「あの2人、
 仲良いのか、悪いのか」
「多分、お腹が空いて
 イライラしているんだよ」

そして、

「いつ外に出てきたんだ、
 そんな描写はなかったぞ、ツイナ」
「心で感じ取れ、だよ
 ミツグ兄さん!!」

数話前の復讐である。

「まぁまぁ、お二人さん」

これでも、お食べなさいと
ツイナがはんぺんを差し出す。

「魔法が使えないのは
 逆に、凄いって話もあるよ」

話しに割り込んだツイナに
何ですってと更に京子が逆上する。

「悪かったわね。
 そうよ、水辺八一族中
 唯一魔法が使えない西一族よ!!!」
「あーあー、
 そういう事では無くて」
「今のはそういう言い方だった!!」

京子は怒りにまかせて
はんぺんをほおばる。

「いや、魔術の研究者の中には、
 彼らこそ魔力の宝庫という人も居る」
「ふんふぇふって!?」
「京子、食べながら喋らない」

満樹が水を差し出す。

「他一族が、魔法を使い消費していく魔力は
 どこに行っているのか、
 その体に溜め込んでいるのなら相当の物だよ」

「……こう、なんというか、便秘みたい」
「京子、いい加減
 思った事をすぐ口にするの止めるんだ」

「魔法の生け贄に使うなら
 そういう人達は最適だろうね」

「いけ」「にえ」

少し脅されて、静かになった所で
さてと、と
たたみ掛けるようにツイナが云う。

「で、2人は
 何で俺を監視してたのかな」

笑顔で問いかけるツイナ。

正座させられ座っている、満樹と京子。

そして、その背後にミツグ。

「先程、裏が現れたのか
 とも言っていたな」

ミツグのマントの下からは
明らかに刃物やら飛び道具の音がする。

「ま、満樹」

ひええ、と京子は小さくなる。

「……仕方無い、正直に話そう。
 実は」
 


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