TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」7

2015年01月30日 | 物語「夢幻章伝」

「対立している有名どころと云えば、西と東だ」
「・・・・・・。」
「まあ、どんな争いをしているか知らんが、」
「「・・・・・・。」」
「別に俺は、西の印象も東の印象も悪くない」
「「「・・・・・・。」」」
「西は料理がうまいし、東は、・・・そうだな。女性に会えたらラッキーだな」

潮風。

「とりあえず、カニ獲れたから、食うか?」
「カニ?」
「いただこうじゃない」

「いやいや、誰だよお前ーっ!!」

上記のやたら説明っぽいセリフにツッコんだのは、へび呼ロイドだけだった。

「あ。俺、海一族だけど」

「いやいやいや! こちらは、南一族ですよ!?」
「だから?」
「南一族と海一族は、争っているんじゃないんかい!」
「そうだっけ?」
「そうなの?」

「おぎゃーーぁああああ!!」

とりあえず、叫ぶへび呼ロイド。

「争ってるって、たまに行う一族対抗体育祭のことか?」

水辺の周囲には、東西南北、海山砂谷、と8つの一族がいて
それぞれ、個性ある暮らしをしているが、
なんだかんだ、南一族と海一族は、楽しい感じが似ているらしい(笑)

「黒髪の女性が見えたから、ひょっとして東の女性かと思って、ついな!」

ついって、なんだ。

「別に、南の女性も嫌いじゃないぜ!」

本当に、なんなんだろう、この人は。

「とにかく、カニを焼こう。話はそれからだ」

「あ。俺、火起こすよ」
「サンキュー」
「醤油はあるのかしら」
「醤油もレモン汁もあるから、向こうの家に取り入ってもらえる?」

マツバは、すたすたと調達に向かう。

「おい。へび呼ロイド」

ひとり置いてけぼり状態のへび呼ロイドに、アヅチが声をかける。

「食べたいんなら、手伝えよ!」

「はいっ」



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「夢幻章伝」6

2015年01月27日 | 物語「夢幻章伝」


「ここが、そうなのね」
「あぁ、ここが!!」

マツバとアヅチは頷きあいながら
その土地を踏みしめた。

吹きすさぶ風は、
南一族の村に吹くものとは違う。

香ってくるのは潮の匂い。
波をかき分ける様にカサカサと逃げていくフナムシ。
家の軒先に干されるアジのみりん干し。

「「・・・・・・ここが、海一族の村!!」」

「いや、だからね!!!?」

いやいやいや、とへび呼ロイドがツッコミを入れる。

「ねぇ、おいら達って
 北一族の村に行くんじゃないのかな―――!!!」

意味分かんないし、と呟くが
皆さんお分かりいただけただろうか。

南一族の村から北一族の村へ向かうのに
ここ海一族の村は全く関係ない。
東京から北海道に行きたいのに、九州来ちゃった様なもの。
通り道でもなんでも無いのである。

「おいら言ったけど、
 海一族のお魚料理食べたいって言ったけど
 あれってノリだからね」

この2人を前にしては、
存在自体が謎の生き物へび呼ロイドも
ツッコミ役にならざるを得ない。

「何言ってるんだ、へび呼ロイド」

まぁ、落ち着けよ、と
アヅチは掛けてもいないメガネの位置を直すポーズを取る。

「お前達が居た下水道が北一族の村だとして
 流されてウチの村まで来ちゃったんだぞ」

そういう事ね、と
マツバも手元に口をあてる。

「つまり、北一族の村に行くよりも
 流された水が行き着く先―――海を目指した方が早いって事ね」

「なるほどね!!
 ・・・・・・え?なるほどね?
 これ合ってる?おいら丸め込まれてない!!?」

真実とは一体何処に。

「そうなれば、まず調査だな!!」

アヅチはすたすたと歩き出す。
だが、へび呼ロイドには聞こえた
アヅチの呟く、「海鮮バーベキュー食いてぇ」という言葉が。

くっそう、おいら負けない。

「・・・・・・あれ?でもさ」

へび呼ロイドはマツバに問いかける。
「なによ?」
「おいら南一族の事でふと思い出したんだけど」
「なにを?」

「南一族って穏やかな農村の一族で
 周りからの評判も良いから
 だいたい何処でも友好的に向かえてくれるけれど」

「けれど?」

「唯一農地をめぐって対立しているのが
 海一族・・・・・・とか、なんとか」
「―――っつまり」

マツバは言う。

「真実はいつもひと「みなまで言わせるか―――!!!」」


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「夢幻章伝」5

2015年01月23日 | 物語「夢幻章伝」

出すよー!!!

よー!!

ょー!

へび呼ロイドの声がこだまして、

「何をすればいい?」

先に口を開いたのは、アヅチだった。

「何を、すればいい?」
「えっ?」
「何をすれば、地産池消、名産品、日当」
「・・・そうね」
マツバも続く。
「何をすればいいのかしら」

「えっ」

へび呼ロイドは、目をぱちくり。
アヅチとマツバを交互に見る。

「えっ、えっ、えっ!?」

「だから」
「何を」

「ありがとう!! ふたりともー!!」

へび呼ロイドは、いやっほい、と、飛び(?)上がる!

「俺、西一族の肉料理食べたい」
「私は、東一族の菜食料理ね」
「おいらは、海一族のお魚料理かなぁ」

じゅるり

ふたりは、へび呼ロイドを見る。
・・・魚とか、食べるんだ。(心の声)

「じゃあ、とにもかくにも、出発だね☆」

レッツゴー、と、へび呼ロイドが云ったところで

「おぉおーいぃい!」

アヅチの兄、モモヤがやってくる。
「火ばさみ使うから、返してくれー!」
アヅチは、モモヤに火ばさみを放り投げる。(危険です)
「アヅチ! 火ばさみを人に渡すときは、こう!」
モモヤは、火ばさみを人に渡すときの手本を見せる。

「ところで、それ、どうするか決めたのか」
「ああ。うん」
 アヅチが答える。
「西で肉料理に決まった」
「え?」
「何を云っているのよ」
マツバが目を細める。
「東で菜食料理よ」
「え??」

「こんな感じで、出発は決まりました!」

へび呼ロイドが、話をまとめた!

「ああ。そうか?」
モモヤは、とりあえず、頷く。
「じゃあ、俺は仕事に戻るから。気を付けて行ってくるんだぞ」

モモヤは、にこやかに手を振り、歩き出す。

「夕方の鐘が鳴るまでには、帰ってこいよー!」

「「子どもか!!」」

さて。

「それで、何をするんだっけか」
「下水道でピクニックよ」

「違うし!!」

ふたりは、すたすたと歩き出す。

「てか、進む方向も、ぜんっぜん違うしっ!!」

アヅチとマツバの旅がはじまる!!

(注:反対方向にて)



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「夢幻章伝」4

2015年01月20日 | 物語「夢幻章伝」
「よし、とりあえずな。
 ちょっとみんな落ち着こうか」

モモヤは火ばさみでへび呼ロイドを掴んだ状態で言った。



「正体がよく分からないものを
 いきなり素手で掴むのは危ないぞ!!」
「酷い!!
 この人なにげに酷い!!」

うぎゃあ、とへび呼ロイドは叫ぶ。

「落ち着くも何も、
 大丈夫だ兄貴、
 それを捨ててくれば全て解決だ!!」

アヅチは殺る気満々だ。
モモヤはそこの所、聞かなかった事にした。

「うーん、でもな。
 さっきから何か言ってるし、
 変に捨てるだけじゃ、また戻ってくるんじゃあ」
「おお、この人酷いけど
 話が分かってるー!!」

はっとマツバがひらめいた。

「そうよ、そいつ言っていたわ」
ばーんと立ち上がり言う。
「下水道でピクニックしていたって!!」

「「・・・・・・、―――なるほど」」
アヅチとモモヤが頷く。
「なるほどじゃないよ!!
 違うからね!!
 間違ってないけど言いたいのはそこじゃないからね!!」

「つまりこれを下水道に戻してくればいいのか」
「きちんと蓋をしてきたら
 戻ってこないかしら」

「会話、大事。コミュニケーション、大事」

もやは話を聞いてくれない彼らに
へび呼ロイドはカタコトになる。

「ぱっぱと終わらせようぜ」
「じゃあ行きましょうか」

「行ってらっしゃい。
 気をつけてな~」

モモヤは2人を見送る。

「なんだかんだ、で、似てるんだよなあいつら」

豆の収穫作業も単純作業の連続で
少し煮詰まっていたかもしれない。
いい息抜きになったかもな。

うんうん、アヅチが戻ってくるまでは
俺が頑張るか。

ふふふ、とモモヤは作業に戻る。
戻りつつ、ふと気が付く。

「あれ?そもそも―――」

「―――そもそも、ウチの村に下水道とかあったか?」
時を同じくしてアヅチが首をかしげる。
「それらしき物は思いつかないわね」

自然豊かな南一族の村。
この辺りで、そういった設備が整っている場所と言えば。

「北一族の村、かしら?」
「北・・・・・・かぁ」

そんなところからどんぶら流れてきたのだろうか?
2人はぼんやり考えるが、そんなことよりも、

「対岸だよなぁ」

北一族の村は遠いのである。

「よし、埋めよう!!」

アヅチは提案する。

「えええええ。
 何言ってるのこの少年!!!」

こっわ、怖いわーと暴れるへび呼ロイドだったが
スコップを探すマツバの姿が眼に入る。
おぼぼぼぼぼ。

「分かった!!
 旅費交通費は全額負担しよう!!」

だが、アヅチは無言だし、マツバはスコップを探し続ける。

「馬車を使用する際は、最高クラスの席を」

ここは福利厚生の充実を前面に押し出す。

「お食事も地産地消、名産品を」

もう一押し、欲しいんだよね。
へび呼ロイドは2人の無言の圧力を感じた。

ええい!!

「日当も出すよ――――!!!」



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「夢幻章伝」3

2015年01月16日 | 物語「夢幻章伝」

「ちょっと」

「はあ?(怒)」
突然、声をかけられて、アヅチが振り返る。
と、
そこに女子が立っている。

「それ、私が棄ててくるから」

「はあ?(2回目)」

「いいから、渡しなさいよ」

女子のマツバは、今にも世界が凍りつきそうな目で、アヅチを見る。
アヅチもアヅチで、この世に嵐が起こらんばかりの雰囲気をかもしだす。

顔見知り程度のふたりなんだから、
ごきげんよう、と
愛想笑いぐらいしたらよいのに、そんな社交辞令なんか、無関係。

そう

このふたりは

云ってしまえば、ギャグマンガに向いていない!

「いや、棄てるの俺だし」
「私よ」
「俺だって!」
「私って云ってるじゃない!」

うずうず。

「俺が!!」
「私が!!」

「・・・じゃあ、俺がっ」

「「お願いしまーす!!」」

うっかり、その流れにのってしまったモモヤに
アヅチはへび呼ロイドを投げつける。

(お約束通り)

「ぐふぅ」

へび呼ロイドは、いろいろボロボロだった。



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