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「約束の夜」240

2020年09月25日 | 物語「約束の夜」
それほど、長い時間ではなかったと思う。

8人の者たちは、それぞれを気遣った。

力を使い切った者。
怪我を負っている者。
どうすればいいのか、戸惑う者。

ただ

みんな、生きている。

「よかっ、・・・た」

京子は声を詰まらせる。

「これで、帰れる」

満樹は頷く。

「ねぇ、」

京子は耀を見る。

「・・・・・・」
「お兄ちゃん」
「・・・そう、だな」

満樹も、耀を見る。

耀の表情は、読めない。

そうだろう。

京子や満樹にとっては、終わったこと。
けれども

裏一族であった、耀やチドリには?

そして、

翼には。

チドリは、ただ坐り込んだまま。
見つめている。

センだったものを。

「帰らせてもらいましょう」

マサシが云う。

そして、チラリと翼を見る。

ツイナも翼を見る。

翼は動かない。

「とにかく、動こう。外に出なければ」

満樹の言葉に、皆、頷く。

終わった。

でも、ここは、裏一族の場所。
何が起こるか判らない。
翼でさえ、使おうとしていた秘術を諦めたのか、判らない。

ただ、何も云わないうちに。

「お兄ちゃん」

京子は、耀の手を引く。

「お兄ちゃんってば」
「京子」

耀は、首を振る。

「先に行っていてくれないか」
「え?」
「先に、・・・頼む」
「何を云っているの?」
「俺たちは裏一族だったんだ」
「・・・っ!」
「少し、時間をくれ」
「お兄ちゃんっ」
「頼む」
「・・・・・・」

「京子」

満樹が首を振る。

「・・・・・・」
「必ず、また、戻る」

耀が云う。

「だから頼む」

「お兄ちゃん・・・」

「行け」

耀は、ちらりと翼を見る。

「翼の気が変わらないうちに」

京子と満樹。
満樹に支えられて、マサシ。
ツイナとヨシノは、動きだす。
オトミとノギも、続く。

何度も振り返る京子の姿は
やがて、耀から見えなくなる。

そこに、残された者は。

「・・・・・・?」

ふと、耀が気付く。

「セン、は?」

「・・・・・・」

「どう云うことだ」

翼は息を吐く。

「逃げたな」

センの遺体が、消えている。





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