母が大切に飼っていた猫が死んだ。
老衰だった。
母にしか心を開かなかった猫だった。
母もこの老猫をとても可愛がっていた。
あんなに泣く母を初めて見た。
あんなに落ち込んだ母を見たのも初めてだった。
『あの子がいなくなったら、この家にいる意味がない。家にいてもつまらない。』
『あの子がいなければ生きている意味がない。あの子がいたから楽しみがあったのに』
『孫なんて所詮我が子じゃない。口出しできるわけでもない。好きに出来るわけでもない。』
『子供たちも育った。もう私など用なしだ』
大嫌いな父と2人っきり。
『だから!ちっこ!私に心を埋められる仕事を探してきて。
年寄りでも出来る内職で良い。
私が楽しめる物を探してきて!
私には何も浮かばない。
あんた!見つけてきてよ!』
床に頭をこすり付けてからだをゆらゆらとゆすりながら
小さな子供のように駄々をこねる。
あれはどう?
これはどう?
とりあえず思いつくままに言ってみる。
『そんなの面白くない!』
『そんなの目が痛くなってできない』
『そんなのやれるわけがない!』
『新しい猫なんて絶対飼わない!情が移る者はもう飼わない!』
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
結局さ!悲しい気持ちを誤魔化すから苦しいんじゃないの?
たかが猫一匹だ。大した事ないって思おうとするから辛いんじゃないの?
あんなに可愛がっていた猫が死んだんだよ。
家族のように思っていた猫が死んだんでしょ。
そんなに簡単に立ち直れるわけないじゃん。
いっぱい泣いて、いっぱい寂しいって思って
そして沢山話せば良いじゃない。
写真は猫が成仏できないとか。
墓を作ったらダメだとか。そんな型にはめずに
自分で『もう良いや。仕方ない。あの子に会えた月日は楽しかった。ありがとう』って思えるまで写真に話しかけたり。墓参りに行ったり。
私に愚痴ったりすれば良いじゃない。
揺らしていたからだは床にうつぶせになったまま小刻みに揺れた。
『そうなんだよね。。。。』
次の日。姉一家も母を心配してやってきた。
末の男の子が言った。
『ばあちゃん。猫、死んじゃって寂しいね』
『そうだね。。』
『ぼく!あの子のこと忘れないよ。大丈夫だよ。絶対覚えてるからね』
母は『今朝、あの子がベットにやってきたんだよ。トンって登ったから
布団を上げて中に入れてあげようとして、ハッとしたんだ』
『私の飼っていたピーちゃんだって死んだ後しばらくピーピー鳴いてたよ』
『そうかい。火葬された次の日に窓の外に帰ってきたんだよね。黒い透けた形でさ。ばあちゃん呆けたかと思ったけどやっぱり側にいるのかね。
お姉ちゃんのところに遊びに行って温泉入って来ても良いかな。
付いてくるかな。』
『くるさ。ずっと側にいるよ。きっと』
母は安心したように姉の田舎に遊びに行った。
老衰だった。
母にしか心を開かなかった猫だった。
母もこの老猫をとても可愛がっていた。
あんなに泣く母を初めて見た。
あんなに落ち込んだ母を見たのも初めてだった。
『あの子がいなくなったら、この家にいる意味がない。家にいてもつまらない。』
『あの子がいなければ生きている意味がない。あの子がいたから楽しみがあったのに』
『孫なんて所詮我が子じゃない。口出しできるわけでもない。好きに出来るわけでもない。』
『子供たちも育った。もう私など用なしだ』
大嫌いな父と2人っきり。
『だから!ちっこ!私に心を埋められる仕事を探してきて。
年寄りでも出来る内職で良い。
私が楽しめる物を探してきて!
私には何も浮かばない。
あんた!見つけてきてよ!』
床に頭をこすり付けてからだをゆらゆらとゆすりながら
小さな子供のように駄々をこねる。
あれはどう?
これはどう?
とりあえず思いつくままに言ってみる。
『そんなの面白くない!』
『そんなの目が痛くなってできない』
『そんなのやれるわけがない!』
『新しい猫なんて絶対飼わない!情が移る者はもう飼わない!』
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
結局さ!悲しい気持ちを誤魔化すから苦しいんじゃないの?
たかが猫一匹だ。大した事ないって思おうとするから辛いんじゃないの?
あんなに可愛がっていた猫が死んだんだよ。
家族のように思っていた猫が死んだんでしょ。
そんなに簡単に立ち直れるわけないじゃん。
いっぱい泣いて、いっぱい寂しいって思って
そして沢山話せば良いじゃない。
写真は猫が成仏できないとか。
墓を作ったらダメだとか。そんな型にはめずに
自分で『もう良いや。仕方ない。あの子に会えた月日は楽しかった。ありがとう』って思えるまで写真に話しかけたり。墓参りに行ったり。
私に愚痴ったりすれば良いじゃない。
揺らしていたからだは床にうつぶせになったまま小刻みに揺れた。
『そうなんだよね。。。。』
次の日。姉一家も母を心配してやってきた。
末の男の子が言った。
『ばあちゃん。猫、死んじゃって寂しいね』
『そうだね。。』
『ぼく!あの子のこと忘れないよ。大丈夫だよ。絶対覚えてるからね』
母は『今朝、あの子がベットにやってきたんだよ。トンって登ったから
布団を上げて中に入れてあげようとして、ハッとしたんだ』
『私の飼っていたピーちゃんだって死んだ後しばらくピーピー鳴いてたよ』
『そうかい。火葬された次の日に窓の外に帰ってきたんだよね。黒い透けた形でさ。ばあちゃん呆けたかと思ったけどやっぱり側にいるのかね。
お姉ちゃんのところに遊びに行って温泉入って来ても良いかな。
付いてくるかな。』
『くるさ。ずっと側にいるよ。きっと』
母は安心したように姉の田舎に遊びに行った。