【参考資料】次のコンクラーベについての覚書が枢機卿たちに回覧されている。これだ。
Settimo Cielo「セッティモ・チエロ」(第七天国)
サンドロ・マジステル
3月15日
次のコンクラーベについての覚書が枢機卿たちに回覧されている。これだ。
(サンドロ・マジステル)四旬節の初めから、将来の教皇を選出する枢機卿たちがこの覚書を回し読みしていました。ギリシャ語で「民」を意味するデモス(Demos)という名を持つこの覚書の作者は不明ですが、作者は自分の書いた内容に精通していることを証明しています。作者自身が枢機卿である可能性も排除できません。
以下、デモスの書いた覚書を掲載します。
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今日のバチカン
あらゆる学派の論者たちは、たとえ理由は違っていても --- スパダロ神父(イエズス会)はおそらく例外であろうが --- この教皇職は多くの点で、あるいはほとんどの点で、災難である、大惨事であるという点で一致している。
1.聖ペトロの後継者は、その上に教会が建てられた岩であり、全世界にわたる一致の主要な源泉かつ原因である。歴史的に言えば(聖イレネオ)、教皇とローマの教会は、使徒継承の聖伝や、信仰の規則を保存し、諸教会がキリストと使徒が教えたことを教え続けることを保証するという唯一無二の役割を持っている。以前は「Roma locuta. Causa finita est.」(ローマは語った、一件は片付いた)であった。今日では「Roma loquitur. Confusio augetur.」(ローマが語る、混乱が拡大)である。
(A)ドイツのシノドスは、同性愛、女性司祭、離婚者への聖体拝領について語っている。教皇職は沈黙している。
(B)オロリッシュ(Hollerich)枢機卿は、性の問題に関するキリスト教の教えを否定している。教皇職は沈黙している。これは、この枢機卿が明確に異端的であり、隠された意味のある言葉遣いや暗示を使わないため、二重の意味で重大である。もしこの枢機卿がローマの懲戒を受けない状態が続くなら、これは歴史上ほとんど(全く?)前例のない、別のさらに深刻な規律崩壊を意味している。教理省は行動し、発言しなければならない。
(C)聖伝主義者や観想修道会に対する積極的な迫害と比べるとき、この沈黙は際立っている。
2.キリスト中心の教えが弱められ、キリストが中心から遠ざかっている。時には、ローマは厳格な一神教という重要性について混乱しているようにさえ見え、神性という概念を、汎神論とまではいかないものの、ヒンズー教の汎神論の変種のようなものにまで広げていることを暗示している。
(A)パチャママは偶像崇拝的である。おそらく当初はそのような意図はなかったのであろう。
(B)観想修道女たちが迫害され、カリスマ運動の教えに変えようとする試みがなされている。
(C)信仰と道徳における聖ヨハネ・パウロ二世のキリスト中心の遺産は、組織的な攻撃にさらされている。家庭に関するローマ研究所のスタッフの多くは解雇され、ほとんどの学生が去っている。「教皇庁生命アカデミー」は、例えば、最近、一部のメンバーが自殺幇助を支持するなど、深刻なダメージを受けている。複数の教皇庁アカデミーには、中絶を支持するメンバーや来賓講演者がいる。
3.バチカンでの法の尊重の欠如は、国際的なスキャンダルになる危険性がある。これらの問題は、現在バチカンで行われている10人の財務不正の被告の裁判を通して具体化したが、この問題はもっと古く、もっと広いものである。
(A)教皇は、裁判中に4回も法律を変えて検察を助けている【被告の権利は守られていない】。
(B)ベッチウ枢機卿は、裁判もなく、その地位を解任され、枢機卿としての尊厳を奪われたため、正当な扱いを受けていない。彼は正当な手続きを受けていない。誰もが適正な手続きを受ける権利を持っている。
(C)教皇はバチカンの長であり、すべての法的権威の源泉であるため、この権力を使って法的手続きに介入している。
(D)教皇は時々(しばしば)教皇の教令(自発教令)によって規則を定め、判決を受けた人々の上訴権を排除している。
(E)多くの職員(その多くは司祭)が、しばしば正当な理由なく、バチカン教皇庁から即座に解雇されている。
(F)電話の盗聴は定期的に行われている。どれくらいの頻度で許可されているかは分からない。
(G)トルツィの件に関する英国での裁判で、裁判官はバチカンの検察官たちを厳しく批判した。【その避難によると】彼らは無能である、かつ/または、買収されており全体像を示すことを妨げられている。【ジャンルイジ・トルツィは、バチカンのロンドンの不動産を巡る詐欺と横領の容疑で裁判中】
(H)2017年にジアーニ博士が率いるバチカン憲兵隊がイタリア領内の監査役(リベロ・ミローネ)の事務所の奇襲をしたことは、おそらく違法であり、確実に威嚇的で暴力的な行為であった。ミローネに不利な証拠が捏造された可能性がある。
4.(A)バチカンの財政状況は深刻である。過去10年間(少なくとも)、ほぼ常に財政赤字が続いている。新型コロナウイルス感染症以前は、これらの赤字は毎年約2000万ユーロであった。この3年間は、毎年3000万~3500万ユーロ程度である。教皇フランシスコ、教皇ベネディクトの両者より前の問題である。
(B)バチカンは年金基金の大幅な赤字に直面している。2014年頃、COSEA【Pontificia Commissione referente sull’Organizzazione della Struttura Economico-Amministrativa della Santa Sede (Italiano)/聖座経済行政機構諮問委員会/2013年7月に組織され2014年5月に廃止された】の専門家たちは、2030年に赤字が約8億ユーロになるであろうと試算していた。これは新型コロナウイルス感染症以前の話である。
(C)バチカンはロンドンのスローン通りの不動産で2億1700万ユーロの損失を出したと推定されている。1980年代、アンブロジアーノ銀行のスキャンダルで、バチカンは2億3000万ドルの支払いを余儀なくされた。過去25年から30年の間、非効率と腐敗によって、バチカンは少なくともさらに1億ユーロ、おそらくはそれ以上(おそらく1億5000万から2億)の損失を被ったことになる。
(D)教皇の最近の決定にもかかわらず、投資のプロセスは(2014年にCOSEAが推奨し、2015-16年に財務事務局が試みたように)一元化されておらず、専門家のアドバイスとは無縁のままである。何十年もの間、バチカンは、イタリアのすべてのまともな銀行家が避ける、評判の悪い金融業者を相手にしてきた。
(E)5261物件あるバチカン不動産の運用益は、スキャンダラスに低いままである。2019年(新型コロナウイルス感染症前の)運用益は、年間ほぼ4500ドルだった。2020年には、1物件あたり2900ユーロだった。
(F)財務改革における教皇フランシスコの役割の変化は謎であり不可解である。(財務改革は、犯罪の減少に関しては不完全だが実質的な進展があり、収益性に関してはIOR【宗教事業協会、通称「バチカン銀行」、バチカンの資金管理・運営をつかさどる組織】を除いてまったく成功していない。)
当初、教皇は改革を強く支持した。その後、投資の一元化を阻止し、改革と、汚職を明らかにするほとんどの試みに反対し、バチカンの金融機関の中心にいる(当時の)ベッチウ大司教を支持した。ところが2020年、教皇はベッチウに矛先を向け、最終的に10人が裁判にかけられ、起訴された。長年にわたり、AIF(Financial Information Authority)【財政情報局】の違反報告から起訴が試みられることはほとんどなかった。
外部監査法人「プライス・ウォーターハウス・クーパー」は解任され、2017年には主任監査役リベロ・ミローネがでっち上げの罪で辞任に追い込まれた。彼らは国務省の腐敗に近づきすぎていたのである。
5.教皇フランシスコとバチカンの政治的影響力は微々たるものである。知的影響力では、教皇の著作は、聖ヨハネ・パウロ二世や教皇ベネディクトの水準から低下していることを示している。意思決定や政策は「政治的に正しい」(politically correct)ことがよくあるが、ベネズエラ、香港、中国本土、そして今回のロシアの侵略において、人権を支持するための重大な失敗があった。
70年以上にわたって教皇職に忠誠を誓ったために断続的に迫害を受けてきた中国の忠実なカトリック教徒に対する公的な支援はない。ウクライナのカトリック共同体、特にギリシャ・カトリック信者【東方典礼カトリック信者】に対するバチカンの公的支援はない。
これらの問題は、次期教皇によって再検討されるべきものである。バチカンの政治的威信は、いまや落ち込んでいる。
6.別の低いレベルにある、トリエント典礼の聖伝主義者(カトリック)の状況を正常化する必要がある。
さらに低いレベルにある、聖ペトロ大聖堂での朝の「個人」および小グループのミサの挙行が再び許可されるべきである。現在、この偉大なバシリカは、早朝は砂漠のようである。
新型コロナウイルス感染症の危機は、教皇の謁見・ミサに出席する巡礼者の大幅な減少を覆い隠している。
教皇は神学生や若い司祭の間でほとんど支持されておらず、バチカン教皇庁には広範な不満(離反)が存在する。
次のコンクラーベ
1.枢機卿会は異様な枢機卿らが指名されることによって弱体化し、2014年の枢機卿会議でカスパー枢機卿の見解が否決された後、再招集されていない。多くの枢機卿が互いに見知らぬ者同士であり、次のコンクラーベに新しい次元の予測不可能性が加わっている。
2.第二バチカン公会議以降、カトリック当局は、特に西洋世界における世俗化、この世、肉、悪魔という敵意ある勢力をしばしば過小評価し、カトリック教会の影響力と力を過大評価してきた。
われわれは50年前より弱体化し、多くの要因が、少なくとも短期的には、われわれがコントロールできないものである。例えば、信者の数やミサの出席頻度の減少、多くの修道会の終焉または消滅である。
3.教皇は世界最高の福音宣教者である必要はなく、政治的な力である必要もない。ペトロの後継者は、使徒の後継者でもある司教団の長として、一致と教理のための土台となる役割を担っている。新しい教皇は、キリスト教とカトリックの活力の秘訣が、キリストの教えとカトリックの実践に忠実であることから生まれることを理解しなければならない。それはこの世への適応や金銭から来るものではない。
4.新しい教皇の最初の仕事は、正常性を回復させること、信仰と道徳における教理上の明確さを回復させ、法を正しく尊重することを回復させ、司教の指名の第一の基準が使徒継承の聖伝を受け入れることにあることを保証することである。神学的な専門知識と学識は、すべての司教、特に大司教にとって障害ではなく、利点である。
これらは、福音に生き、福音を宣べ伝えるために必要な土台である。
5.もしシノドスの会議が世界中で続けば、多くの時間と費用を消費し、おそらくこれらの本質的な活動を深めるどころか、むしろ福音宣教と奉仕からエネルギーをそらすことになるであろう。
もし各国または各大陸のシノドスが教理上の権威を与えられるなら、例えばドイツの教会が他の教会と同じではない教理上の見解や使徒継承の聖伝に適合しない見解を保持するなど、全世界的な教会の一致に対する新しい危険となるであろう。
もしこのような異端をローマが正さなければ、教会は、正教会のモデルではなく、おそらく英国国教会やプロテスタントのモデルに近い、さまざまな見解を持つ地方教会の緩やかな連合体にまで貶められるであろう。
次期教皇の早期の優先課題は、本質的な一致を求め、受け入れがたい教理上の違いを許さないことにより、このような脅威となる事態を取り除き、防止することでなければならない。同性愛活動の道徳は、そのような火種の一つとなるであろう。
6.若い聖職者や神学生は、ほぼ完全に正統派であり、時にはかなり保守的だが、新しい教皇は、2013年以降、おそらく特に中南米で、教会の指導者たちに影響を与えた実際の変化を認識する必要がある。カトリック教会内のプロテスタント・リベラル派の足取りには、新たな春が訪れている【力が強くなっている】。
離教については、教理上の問題をあまり重視していないことが多い左派からは起こりにくい。離教は右派から起こる可能性が高く、典礼上の緊張が煽られて緩められない場合には、常に起こり得ることである。
本質的な部分での一致。本質的でない部分での多様性。あらゆる問題に対する愛徳。
7.西洋における危険な衰退と、多くの場所における固有の脆弱性と不安定性にもかかわらず、イエズス会に対する訪問【制裁を見据えた実態調査】の実現可能性について真剣に検討すべきである。イエズス会は公会議の間の会員数36,000人から2017年には16,000人以下と破滅的な数の減少という状況にある(2017年には75歳以上はおそらく20~25%)。場所によっては、破滅的なモラルの低下もある。
この修道会【イエズス会】は高度に中央集権的であり、上からの改革や損害の影響を受けやすい。イエズス会のカリスマと貢献は教会にとって非常に重要であるため、そのまま歴史の中に消えてしまったり、単なるアジア・アフリカの共同体になってしまったりしてはならない。
8.南米におけるカトリック信者の数の悲惨な減少とプロテスタントの拡大を取り上げるべきである。アマゾン・シノドスではほとんど言及されなかった。
9.バチカンの財政改革に多くの作業が必要なのは明らかだが、これが次期教皇の選定において最も重要な基準であってはならない。
バチカンには実質的な負債はないが、毎年の赤字が続けばいずれ破産となる。これを改善し、バチカンを犯罪の共犯者から切り離し、収支を均衡させるための措置が取られるであろうことは明らかである。バチカンは、この問題を解決するために、多額の寄付を集めるために、能力と誠実さを示す必要があるであろう。
財務手続きが改善され、より明確になったとはいえ、継続的な財政的圧力は大きな課題だが、特に第一世界の教会が直面している霊的、教理的脅威と比べれば、はるかに重要度は低い。
デモス
2022年の四旬節