tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ステーション・エージェント

2007-05-09 19:58:39 | cinema

低身長をきたす様々な疾患が、いわゆる小人症と呼称される。その95%は原因不明であり、特発性低身長 (ISS:idiopathic short stature) である。発症は、家族性と孤発性があるが、遺伝的要因はあまり高くないらしい。残りの5%は、内分泌性低身長のほか、奇形、骨系統疾患、慢性疾患、ステロイド治療など医原性の低身長や、情緒障害、心身症、また虐待・低栄養のような劣悪な発育環境による低身長など各種要因がある。この映画は、小人症の青年が主人公だ。彼は自分のことを自ら“ドワーフ”と呼ぶ。

働いていた模型店の店主が亡くなり、遺言でニューファンドランドの旧駅舎を譲り受けた小人症の青年フィンと、愛する息子を不慮の事故で亡くして以来情緒不安定に陥ってなかなか抜け出せないオリヴィア、そして駅舎の側でホットドッグ・スタンドを開いているジョーの3人の友情を描きあげたロードムービーである。
いつも好奇の目でみられる事から、出来るだけ外界との接触を拒んできていたフィンは、同じように世間とそっと距離を置いて生きていきたいと思っていたオリヴィアと出会って徐々に外向きになってくる。二人を結ぶのは、陽気で話し好きなプエルトリカンのジョーだ。
小人症の彼に対する世間の視線。そのぶしつけな振る舞いは、性別や年齢などに関係なくどこにでも存在する。たとえば、ガイジン。日本社会でガイジンが生きていくうえで好奇の目にさらされるのは、かれらガイジンがいつも訴えることである。辺鄙な外国の地にいる東洋人も同じかもしれない。ほっといてほしいと思ってはいるが、46時中容赦なく好奇の目が降り注がれる。

幼馴染に言われたことがあった。彼女は、右足に麻痺があり、小さい頃から片足が不自由だった。
「あれだけ皆に見られて、何も感じないと思う? 時々ユッコはこんなオッパイを持っている! とシャツを捲り上げて見せてやったら、どんなに気分がスーッとするかと思うわ・・・」
久しぶりに会った彼女を見て、小学校の時のいじめを思い出し胸が痛くなった。何にもしてあげられなかったぼくも、いじめの加害者ということだ。

ニュージャージー州。ガーデン・ステート(庭の州)というニックネームのあるNJは、ニューヨーク市マンハッタンから、ハドソン川をまたぐジョージ・ワシントン・ブリッジを西に渡渡ってすぐ隣だ。タクシーで30分も走れば、なんにもない田舎になる。Jazzを好きな人ならば誰しも知っている伝説のレコーディングエンジニアRudy Van Gelderは、NJのJersey City生まれ、Hackensack育ちだ。ジョン・コルトレーンやセロニアス・モンクといった巨匠たちが居間を改造した彼のスタジオで、後に銘盤と呼ばれるアルバムを録音したという。

引きこもっていた心の壁が取り除かれたかと思うと、人の言動や、それを気に病んで自分との戦いがはじまる。しかし、分かり合える仲間がいるって自信を持つことで他人との壁を取り除けるようになるのだろう。3人の友情がだんだん確固たるものになっていく様子に加えて、フィンに何の偏見も持たず自然と友だちになる小学生の女の子。見終わったあとにすがすがしい、カラっとした風が吹き抜けるような作品だ。


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