彦四郎の中国生活

中国滞在記

鴨川の源流域を巡る➊―「水に祈る」京の町―京都の町の最大の魅力、いくつもの源流域のある鴨川とは‥

2023-08-15 21:15:32 | 滞在記

 世界的に最も著名(有力)な米国の旅行誌「トラベル+レジャー」、米国の大手旅行誌「コンデ・ナスト・トラベラー」などが毎年発表している「世界の人気観光都市」ランキングにおいて、ここ10年間余り、第1位から第3位に入っている京都市。(2021年だけは第5位)   イタリアのフィレンツェやローマとともに、ランクイン上位に常に入る常連都市として、「殿堂入り都市」にも選ばれている。この京都の魅力とは何なのだろうか。

 2021年12月に、京都市内にある府立高校の一つで、京都御所の東隣にある鴨沂(おうき)高校[※鴨沂とは、鴨川の近くという意味]で、3年生を対象に「世界の人気観光都市—京都市の魅力とはいったい何なのか」をテーマに講演をしたことがあった。8つほどの視点(魅力)で、京都の町の魅力について語ったのだが、その魅力の第一にあげたのが「鴨川」の存在だった。人口が100万を超える都市(※京都市は約145万人)で、その都市の中心地区を流れる川が清流であり、かつ、都市住民にとても親しまれている川がある都市は、世界的にみても、日本国内でも、京都のような都市はおそらくないだろうかと思われる。

 特に、鴨川にかかる四条大橋から三条大橋の間にはいつも、たくさん人々が川のそばに腰をおろし、佇(たたず)んでもいる。5月上旬から9月下旬までの5カ月間は、このエリアを中心に100軒あまりの納涼床が開業し、鴨川沿いの風情をかもしだす。

 鴨川に架かる賀茂大橋(出町柳界隈)の付近で、丹波山地の山々を源流とする賀茂(かも)川と高野川が合流して、その漢字は鴨(かも)川となる。合流地点は「鴨川デルタ」とも呼ばれる▼(三角デルタ)地。この付近では、人々が川に足をつけて涼(りょう)をとったり、川で泳いだりしてすごす人々の姿も多い。私も、中国から日本に来た留学生たちをここに案内することも多い。とても生活と密着している鴨川だが、南北に何キロにも及ぶ都市部の鴨川べりは、早朝から夜まで、散歩・ジョキング・デート・休憩・スポーツ・水遊び・楽器の練習などなど、いろいろなことをして過ごす人々の姿が見られる鴨川‥。

 794年にこの地に日本の都が造営されて以来、約1300年余りの歴史をもつ平安京(京都市)と鴨川の風情は、これまでにさまざまな絵図にも描かれてきた。

 京都には寺社や祭り(祭礼)がとても多いが、例えば八坂神社の「祇園祭」、下鴨神社の「葵祭り」なども、鴨川ととても深いつながりを持つ祭礼だ。それは「京都の町の地底に満々と蓄えられている地下水や川の水への崇拝、水への鎮魂歌、水への礼拝」、つまり「水への祈り」を基底にもつ祭礼でもある。下鴨神社(世界遺産)の境内の糺(ただす)の森の中には、鴨川(高野川)のからの小川が流れる。八坂神社本殿(国宝)の地下には、龍神の洞穴があり地下水が蓄えられているとされる。

 上賀茂神社(世界遺産)の境内には、賀茂川からの小川が流れ、神社周辺の主に神社の神官たちが住む家々の周りは、賀茂川から引き入れた小川(水路)が流れ、各家々にも水路の水が取り入れられ、家々の祠(ほこら)にて水への祈りがされてもいる。まあ、「水への信仰、水への祈り」が普段の暮らしに流れている象徴的な地区の一つでもある。

 この7月上旬、NHKBSプレミアムで、「水の守人(もりびと)―京都鴨川の源流・めぐる生命(いのち)の物語」と題されたドキュメンタリー番組が放送された。鴨川の源流域の一つにある歴史ある寺の名は「岩屋山・志明院」。

 鴨川(賀茂川)に流れる最初の一滴が見られる寺でもあった。開山は650年、そして、寺の創建は平安京ができて35年後の829年。空海(弘法大師)が、平安京(都)を流れる鴨川の源流に、「水に祈る」「水への鎮魂」のために創建した寺でもあった。そして、この夏、鴨川源流域にある雲ケ畑集落や志明院(雲ケ畑川・岩屋川)、そして他の源流域である鞍馬川や貴船川、高野川など、鴨川の源流となるいくつもの源流域を巡ってみようと思った。次号から巡ったその記録を記しておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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