浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

作曲家ツェムリンスキーによるフィデリオ序曲の名演奏

2006年10月26日 | もう一つの顔
作曲家ツェムリンスキーのクラリネット三重奏曲をご存知だろうか。初めて聴いたときに、ブラームスを思はせる曲づくりに背筋がぞくぞくした記憶がある。それ以来、ツェムリンスキーの作品を探して集めたが、クラリネット三重奏以上の感動は未だに体験してゐない。

しかし、ツェムリンスキーは指揮者としても活躍しており、なかなかの名演奏を残してゐる。ベートーヴェンの「フィデリオ」序曲を伯林国立歌劇場管絃團とやったレコヲドがあるが、これなどもなかなか良い。

途中、明らかにバトンテクニックの問題でのずれがあったりするが、そんなことを気にしてゐるやうでは昔の演奏は聴けない(正確に申し上げると聴かない方が良い)。音楽づくりは独逸の伝統的な無骨さと堂々たる響きを持ってゐて、フィナーレへと向かって完全燃焼する。

この小品を聴いただけで、ツェムリンスキーの指揮者としての卓越した才能を知ることができる。同時代の独逸・墺太利系の指揮者を思い浮かべるとそうそうたる顔ぶれが並ぶ。ワインガルトナー、プフィッツナー、フリート、R.シュトラウス、フルトヴェングラー、アーベントロート、クナッパーツブッシュ・・・

唯一、フルトヴェングラーにだけは及ばないが、残りの指揮者と肩を並べる指揮者だ。もっと高く評価されるべきであったと思ふ。当時のマスメディアにうまく乗っかることができなかったのだらう。これから、ぼちぼちと残された演奏を探して、一つずつ聴いて楽しんでいきたいと思ってゐる。

盤は、独逸MemoriesのSP復刻CD HR4593。


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