浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

大洋琴家 エミール・フォン・ザウアーの洋琴協奏曲

2009年10月12日 | もう一つの顔
作曲家としての腕の足りていない部分を洋琴弾きとしての凄腕で補うやり方は、リストの作品で歴史的に評価済みでありまする。それならば、エミール・フォン・ザウアーの協奏曲が評価されないのは納得がいきませぬ。といふ訳で今日は音楽室の棚に仕舞ってあったHyperionの"The Romantic Piano Concerto"第11巻を取り出してきた。

このCDはずいぶん前にシャルヴェンカの協奏曲で取り出したことがあった。シャルヴェンカ作による第4協奏曲の美しい第2楽章も心に残る素晴らしい旋律だが、ザウアーも実に見事な作品を残してゐる。

ホ短調といふ調性がいい。第1楽章の洋琴の登場は上の影絵そのものだ。ザウアーは繊細さとこのやうな豪快さを併せ持ったヴィルトゥオーゾだったことがよく伝わってくる。その豪快さは半端なものではないらしい。オーケストラも黙らせるほどの迫力がこの第1楽章からも伝わって来る。そして、曲はヴィヴァーチェのスケルツォ楽章と浪漫的に歌い上げるカヴァティーナと続き、快活なロンド楽章で締めくくられる。

30分ほどの4楽章構成の協奏曲だが、サロン的な愉しみも随所に聴かれる。終楽章のロンドなどは、一度聴いただけで虜になる御仁も大勢居るだらう。もっと演奏機会を増やしてもらいたいものだ。洋琴弾きのプロを目指してゐる方がおられたら、是非、この終楽章を取り上げてみると良い。一躍、脚光を浴びること、間違いない。少なくとも、僕を含めて132人は強い関心を持つだらう。

演奏は、売り出し中のステファン・ハフの洋琴、名手ローレンス・フォスター指揮バーミンガム市立管絃團による。

盤は、英國Hyperionによるデジタル録音CD CDA66790。


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