浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

一年に一度、命について考える日 ラミンのマタイ受難曲を聴きつつ

2008年01月17日 | 歌もの
1月17日はマタイ受難曲を聴く日と決めてゐる。この1年に入手したマタイ受難曲はラミン指揮ライプツィッヒ・ゲバントハウス管絃團と聖トーマス教会合唱團によるSP復刻盤で、僕が手にする8種類目のマタイだ。

静かに目を閉じ、バッハゆかりの教会の合唱團による演奏に聴き入る。1941年の当地での録音といふことだから、メンゲルベルクのマタイよりも2年後の録音といふことになる。

メンゲルベルク、フルトヴェングラー、クラウスらの演奏と比べると、現代のバッハ演奏に近い解釈だが、それでも"Erbarme dich,mein Gott"での提琴はポルタメントを多用するなど、時代を感じさせる。バッハの作品は、演奏による違いなどを超えた、音列や音の組み合わせ自体の美に心を奪われてしまひ、いつしか演奏のことは忘れて聴いてゐる。極端な話、ウェーベルンの編曲だろうがシンセサイザーによる電子音であろうが同じことだ。ベートーヴェンやシューベルトでこのやうなことをやれば魅力は無くなるが、バッハの音楽には心を引き付ける魅力が残ってゐる。バッハの偉大さを感じる部分である。

さて、今日で震災から13年が経った。13年といふ年月によって悲しみは多少は癒えたか。毎年、朝5時46分には必ず手を合わせる。そしてNH○の映像を見ると、今でも涙が出る。僕の身内には幸い奇跡的に犠牲者は出なかった。にもかかわらず、涙が出る。

つい最近まで接してきた何十といふ多くの顔が、突然、一斉に目の前から消えるといふ体験は、戦後世代の僕たちは体験してゐない。人々は、戦争、事件、事故、そして災害など理不尽な力によって奪われた命に対しては、何年経とうとも悲しみを忘れることはできないのである。

恐怖の中で無念の最期を遂げた人々のことを想ひ、自分が生かされてゐることに深く感謝し、精一杯生きていこうと思ふ。

盤は、独逸TIMによるSP復刻CD 220763-303。


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1 コメント

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【ドイツと日本の 修好150周年を記念して、カンタータを歌いませんか!!】  (グレイス合唱団 )
2011-05-19 16:31:47
バッハ・ファンの皆さ~ん、出番ですよ~ッ!!
グレイスのHPで過去の6曲聞いて、良かったらカンタータは如何でしょう!!
【グレイス合唱団】では≪ドイツと日本の修好150年を記念≫して、ドイツの気鋭の合奏団や日本オペラ界を代表するソリストと共に『バッハのカンタータ』のチャリティー公演を予定し、合唱団員を募集しています。共に生涯の思い出に残る、至高・至福の音楽を味わいませんか!! 
☆公演: 2011年9月17日(土)午後/ウェスレアン・ホーリネス淀橋教会(JR:大久保駅近く) 
☆曲目: カンタータ 4番 & 80番とブランデンブルク協奏曲… J.S.Bach作曲 
☆出演: 稲垣俊也(バス)、遠藤久美子(ソプラノ)他
☆合奏: アクロアマ・アニマータ (ドイツ(エッセン)より来日)…(acroama animata)で検索して下さい!! 素晴らしい演奏の一部が聞けます!!
☆後援: ドイツ大使館、東南アジア文化友好協会、日本国際飢餓対策機構、キリスト教系各紙 他
☆チャリティー先: 東日本大震災復興支援、東南アジア文化友好協会、日本国際飢餓対策機構、ワールドビジョンジャパン 
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