浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

洋琴弾きエフゲニ・スヴェトラーノフ メトネルの追憶の奏鳴曲

2009年02月27日 | もう一つの顔
エフゲニ・スヴェトラーノフは言わずと知れた露西亜の作曲家で「赤いゲルダーローズ」が知られてゐる。この作曲家は指揮者としても活躍したそうだが、N響を振った演奏以外は、あまり聴いた記憶がない。今宵はスヴェトラーノフの洋琴弾きとしての素晴らしい一面をメトネルの作品で味わってゐる。

スヴェトラーノフは作品番号38-1の「追憶の奏鳴曲」を弾いてゐるが、この奏鳴曲は単一楽章で書かれており、一般的なソナタの形をとってはおらず、作品番号38-2「優雅な踊り」、作品番号38-3「祭りの踊り」と続くところを見ても組曲風だ。

「追憶の奏鳴曲」の冒頭のメランコリックなメロディは、師匠のアレンスキーよりも親友のラフマニノフよりも深い詩情に満ちてゐて、更に哀しい。このところ続いたブルーな気分は、ますます増長されてゆく。この哀しいメロディは転調を含め3回登場する。曲の後半部では、露西亜音楽特有の音の爆裂もあり僕には少々刺激が強すぎるところもあるのだが、その最後に回想的に再現されると哀しさも一味違って聴こえる。

メトネルは自作自演でも聴いたことがあるが、もっと全体が軽やかだった。スヴェトラーノフの演奏はビロードのやうな柔和な表情を見せたかと思ふと、指揮の際に見せるあの猛獣のやうな爆発的な音の洪水も聴かせてくれる。スヴェトラーノフを一面的に「爆演指揮者」と表すことが多い。いかにも分かり易いが安直で幼稚な表現であると思った。

盤は、露西亜MelodiyaによるCD SUCD10-00176。


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