浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

エリカ・モリーニ ジョージ・セルによるブラームス協奏曲

2006年07月22日 | 提琴弾き
エリカ・モリーニを前回に続きご紹介したい。先ほど入手したM&A盤のブラームスが期待どおりの名演奏だったからだ。

この演奏は、1952年、カーネギーホールで行われたNYPの演奏会でのライブ録音だが、M&A社の復刻技術によって、古い感じがせず普通に聴くことができるのが嬉しい。

英文の解説には、モリーニとフルトヴェングラーのコラボレーションも紹介されている。それによると、1927年10月6日のゲヴァントハウスでのチャイコフスキー以来、伯林でもモーツァルトやグラズノフなどを協演している。モリーニは1933年にはナチを嫌って独逸を離れるが、戦後、フルトヴェングラーとの再会では、フルトヴェングラーがモリーニの肩で「私はナチではない!」と涙したといふエピソードが紹介されている。渡米後はブルーノ・ワルターが彼女を高く評価し、数多くの大指揮者との協演が始まるわけである。

セルとのブラームスは熱演で、毎楽章が終わる度に聴衆は拍手を送っている。3楽章ではおそらくモリーニのブレスの際の声と思われる音までが録音されていて、臨場感たっぷりだ。最後の音は熱狂した聴衆の拍手にかき消される。

カップリングされているチャイコフスキーの伴奏はホーレンシュタインが指揮をとっているが、セルが見事にモリーニの感性に合わせきっているのに対し、ホーレンシュタインは、ほぼ100%意思が通じ合わず、ボロボロの状態だ。伴奏指揮の才能の違いをここまで明確に見せつける組み合わせは、結構、残酷である。

盤は、米国Music&Arts社のライブCD CD1116。


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