浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

プシホダ ドヴォルザークのロマンティックな小品OP.75

2006年11月25日 | 提琴弾き
コマーシャルに使われてもいいやうな逸品、作品75-1で聴かせる歌はプシホダの前世紀的な顔、作品75-2では同じ楽器が民俗楽器に豹変し荒々しい顔を見せる。

作品75-1の妖気漂う歌い始めは一瞬にして聴き手の心を捉える力を持ってゐて、その後の回想的な音楽の運びは心の奥底にまで染み入ってくる。ボヘミアンの血を受け継いだプシホダのやうな提琴家は現代の音楽界には居ないやうに思ふ。グローバル化によってもたらされた民族色の消滅と均一化は長い音楽史の中でもここ数十年の特異な現象だと思はれる。

世界中が文化を共有できる喜びに浮かれてゐる間に、世界共通の価値観が教育界を支配し、コンクールで万人の認める価値観だけがマスメディアに乗って世界中を駆け巡る。そして、悪循環の連鎖はいつの間にか断ち切ることすらできなくなってしまった。

プシホダのドヴォルザークやスメタナ、或いはサラサーテの「ロマンツァ・アンダルーサ」のやうに好みが大きく分かれる演奏こそが、現代において大切にされるべきスタイルだと僕は信じてゐる。

録音は北独逸放送局提供による音源を使用しており鮮明で、鑑賞になんら支障のない優れたものであることを付け加えておきたい。提琴好きの方は一聴の価値はあると思ふ。

盤は、独逸Podium Verlag社のリマスタリングCD POL-1003-2。


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