いつも思うのですが、絵を見るたびに
なぞなぞをしかけられているような気持ちになります。
天照大御神が隠れた、天の岩戸の入り口のように思えるけれど、
「古事記」にまったく興味の無い武内なので、そのイメージではない。
置物が置いてあるように感じることから、抽象的な静物画かもしれない。
まさしく、なぞなぞだ。
いやいや、髭の生えたおじさまがいるようにも。
この絵に静けさがあることから、くぐもった低い声がよく聞こえ、
「わたしはな~んだ。」と問い、わたしを困らせてきます。
小さい声で、「武内ヒロクニじゃないの?」と答える。
いつも異次元を漂い、異空間にいる人だから。
この答え、合っているのでしょうかねぇ。
冬になると機嫌が悪いヒロクニさん。
「やれやれ。」とよく言い、「よっこいしょ。」が口癖に。
「今日は疲れた。」もよく言う。
以前、「もっと規則正しい生活をしようよ。」と言ったら、「嫌だ。」と言われた。
「不規則な生活がしたいの?」と聞くと、「そうだ。」と。
この冬は、不規則な生活が全開で、夜遅くまで制作をしていたり、
昼間は、途切れ途切れに睡眠と制作を。
この起きたり寝たりを自在にしていて、「これが、彼のいう不規則な生活なんだ。」と納得しています。
ヒロクニさんが言うには、「訓練して出来るようになった。」ということらしい。
すぐ寝れるなんて羨ましい限り。
(わたしは寝付くのに時間がかかるほう)
冬は機嫌が悪いヒロクニさんは、
「俺が寺に描いた壁画のことを『なぁ~んだ!』って言ったやつがいて、
頭がパーだから、そんなことしか言えない自分のことを鑑みろってんだ。」と、目の前で言う。
わたしは、目をパチクリ。
それ、わたしが言った事だから。
神戸にあった明泉寺の壁画をデートの時に、見に行こうと言われて行ったのです。
若くて怖いもの知らずで、壁画を見るなり大きな声で、「なぁ~んだ!」って笑ったのでした。
絵を見たとたん、大らかな気持ちになって、笑ったのです。
「お前、よくも、なぁ~んだって言えるな。俺がどんな思いをして描いたのか・・・。それをよくも。」と憤慨していた。
「そういう意味じゃない。悪いとか全然思ってないって。」と言ったが、伝わってなかったようだ。
気を取り直し、「それ言ったのわたしだって。」と言ったが、怒っていて言葉に耳をかさない。
何度も、「それ、わたしだって。」「悪かったわね。」と言うが、
「それ、君じゃない。」と言い張って、耳をかさない。
意外と傷ついていたのか・・・、と思うとなんだか可笑しい。
しかし、34年前の事を急に思い出して言い出すのは何故?
だけど、わたしもぬけぬけと思いきった事を言ったものだと思い出し笑い。
(ヒロクニさんが、傷ついていたなんて!!)
冬は機嫌が悪いヒロクニさんは、
とても細かくなる。
今年は、わたしも湯たんぽを購入して、日中は膝にのせたり、足元に置いたりしています。
ヒロクニさんも湯たんぽを使用しているのであるが、
わたしの湯たんぽの具合まで気にしてくれているようで、「湯たんぽは大丈夫?」とよく聞かれる。
省エネということで、ガスストーブの上にのせて暖めます。
その湯たんぽの温度を気にしてくれていて、「もういいのじゃないか?」と。
ストーブの上にのっていないと、「冷えてしまっているのじゃない?」と。
言う通りにしていないと、何度も声をかけてくれる。
正直言って、わたしは湯が煮えたぎっていてもかまわないぐらい気を使っていない。
何かをしている時は、ずーと集中していたい派。
何かをしている時は、あまり動きたくない。
「絵も細かいけど、やっぱり何事につけても細かいのだ。」と思い、わたしは机に撃沈する。
夏は、戸を開けたり締めたりと風の入る量に気配りしていて、
しょっちゅう「風は、これぐらいでいいかな?」と聞かれる。
正直いって、何かをしている時は、「風が吹こうが吹かまいが、どうでもいい。」
何度も「風の量は、わたしどうでもいいから、好きにして。聞かなくていいよ。」という始末。
温度の体感に関して、敏感なようです。
冬は機嫌が悪いヒロクニさんは、
洗剤が切れそうになると、不安になる。
「洗剤を買ってきて。」としょっちゅう頼まれます。
特に、“ホーミング”が切れると、「やっぱりコレがないと。」と言い、「コレは重要なんよ。」と。
「いつもシンクがきれいなのはコレでやってるからねぇ。」と言いながら、
勝ち誇ったようにわたしを見る。
“洗い物は俺がしているから、君はよく知らないでしょ”という顔で。
「冬は、油ものは大変なんよ。」とも言い、見ていると、
洗い桶の中に、中性洗剤を逆さまにして、チューと流し入れているのを目撃した。
この使い方だと、早く洗剤が減るわけだ。
洗剤が気になるのが、分った瞬間でした。
あと、「絵かきにとっては、筆とか手とかを洗うところに茶碗があってはダメなんだ。」とも言われてます。
これは、重要でしょう。
冬になると機嫌が悪いヒロクニさんは、
アトリエと台所を往復する時、窓際にいるピピを見ます。
音に敏感なピピは、止まった足音に気づき目を上げる。
2人は見つめ合っている。
その様子に気が付いたわたしは、ピピの顔とヒロクニさんの顔を見ます。
ピピは目を丸くしてヒロクニさんを見ていて、ヒロクニさんは愛おしそうに目を細めて微笑んでいます。
冬の機嫌が悪い顔を見慣れている私は、とてもホッとして、
「こういう顔もするんだ。」と思い、気持ちが和みます。
ヒロクニさんは、わたしが見ているのに気づかず、アトリエへ。
なんか微笑ましい。
そんな冬に作ったケーキと食卓の花。
↑花はまだまだ。
自生した万両の枝と小粒のゆずの実。
それにビオラを合わせて。
南天の実にしようかと思っていましたが、万両の木が50センチぐらいになっていて、
枝を切っても大丈夫なぐらい大きくなっていました。
ただ、実は下向き、葉の下になっていますので、2本の枝は輪ゴムで縛りました。
それをコップに寝かせ気味にしながら置きました。
その間に、ビオラを入れます。
ケーキは、実はチョコレート生地のスポンジケーキを焼くつもりだったのが、
チョコレートとバターと小麦を入れて混ぜてある最中に、来客があり慌てたのです。
早くしないと冬は、チョコレートが固まってきますから急ぎました。
後から入れる卵の個数を間違え、3個(白身は泡立てる)入れるはずが、
老眼でちゃんと見えていなかったらしく1個に。
焼き型に流し終えると、量が少しなんです。
ここから気持ちが動揺すること1分。
焼き型から出してやり直すとベタベタになったものを洗ったり、混ぜなおすことを想像した。
やぶれかぶれな気分で、そのままオーブンに。
ねっとりしたヌガーみたいなケーキクッキーに。
ヒロクニさんは、「今日のケーキいい。」と。
これをまた作ってといわれると、焼きが足りなくて表面がブツブツ煮立っていた時の光景を・・・。
焦げ茶色のチョコレートの表面に丸いものがプクプク浮いて、
悪魔の作るお菓子みたいな感じで、邪悪な姿でした。
心には寒い風がヒューヒューと吹いていました。
でも、「今日のケーキいいのです。」
味は、いい。
ナイフで切るとき、みしみし音を立てて切られます。
↑花をもう少しアップで。
なんでもありな感じです。
今日は、冬は、機嫌の悪いヒロクニさんシリーズになりました。
人のことばかり書いて、わたしはどうなのよ!という思いも頭に浮かびますが・・・。
わたしは、もう少しモノを片付けるようにしないと。
自分の部屋って、下宿みたいな感じで女の部屋とは思えないありさま。
60歳の女が、下宿の部屋。
笑えない。
今日も、いつもの2人という内容ですが、最後までお読み頂いた方ありがとうございます。
今飼っているピピですが、けっこうよく鳴き賑やかな猫なんです。
ヒロクニさんの笑みをさそうピピを見て、やっぱり猫っていいな、と思います。