瀬崎祐の本棚

http://blog.goo.ne.jp/tak4088

詩集「庭園考」 塩嵜緑 (2020/12) 書肆山田

2021-02-25 18:31:41 | 詩集
 第3詩集。100頁に22編を収める。

 短い詩句で行替えをして綴られた言葉は、息継ぎのリズムをそのままあらわしているようだ。たとえば」「マグノリアの咲く庭に」では、「貴方と午後のお茶を飲」んでいるのだが、庭の薔薇は咲きほこりの時を過ぎて、名残の花が自らが存在しことをアピールしている。そんな薔薇を見て、

   貴方は
   もう庭いっぱいに薔薇を植えているのに
   まだ足りない
   と言いながら
   新しい恋人を見つけてきては
   穴を掘る

 貴方は終わりの時を埋めるものをどこまでも捜しているのだろうか。そんな貴方の行為が愛しいような、哀しいような気持ちになってくるようだ。

 作者の思いは作品の行の移ろいとともに歩んでいる。詩行が短いのは、おそらくは発語と思いの同時性に依るのだろう。だからその短さには臨場感がある。

 「雨」。西洋紫陽花の葉を打つ真夜中の雨の音がしている。見えるものはなく、ただ聞こえることによって伝わるものもあるのだろう。

   肩をかるく
   叩かれて
   私の背のかたちを知ることがある
   そういう感じ

 とても繊細な感覚だが、理屈を超えてわかるところがある。なるほど、こういう感じか。

 花や蝶、そして幼子と、作品の題材は作者の庭でその小さい生命を躍動させる。それらと向かい合った作者の思いも小さく震えて言葉を発している詩集だった。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 詩集「数千の曉と数万の宵闇... | トップ | 詩集「二十歳できみと出会っ... »

コメントを投稿

詩集」カテゴリの最新記事