第4詩集か。B6版、40頁で,全頁で黒地に白文字で印刷されている。大変にお洒落な造りで、表紙には倉敷の新渓園の写真が使われている。作者の個人詩誌「月の未明」も長い用紙を葉書大に折りたたんで8頁とした、デザイン性にすぐれたものだった。今詩集には黒崎水華、黒崎晴臣の栞が付いている。
巻頭におかれた「声」では、自分の内側から呼ぶ声がある。かつては避けていたのかもしれないのだが、今はその声に向き合わなければならない。
顔に目口がなく、声に濃淡がなく、卵のつるりとした姿をして、どこまで行く
のか。どこへ、連れていくのか。葬列に紛れながら、花冠(はなかんむり)を
想う。婚礼衣装は白、喪服も白。葬祭の根源に触れる白い紙。
声に向き合えば、話者を囲む世界はどんどんと苦しいものになっていくようだ。声を伝搬する空気さえも薄くなっていくようなのだ。しかし話者は「ここで声を探す」ことを決意している。最終部分は「響く声を掴まえ、弔うために。」
「氷の中の文章」。昨日もらった一冊の詩集が今朝はないのである。部屋中を探したのだが、「代わりに/冷凍庫の中には溢れんばかりの氷」があったのである。ここは冷凍庫を開けた瞬間に話者を襲ったであろう冷気も感じさせて、すばらしい詩行だった。詩集は硬く凍り付いたものに変容していたのだ。
ガラスの耐熱グラスに入れる
からりからり 検分に揺らす
一つ一つに 白っぽい無数の微気泡がきらめく
一行の文章が連なった 束のように
詩集の言葉からは小さな気泡が次々に出てくるのだ。それが話者と出会うとひかりの中にはじけていくのだろう。話者はそれを「生暖かい舌に乗せる」のだ。神秘的な言葉との出会いが巧みなイメージになっていた。
巻頭におかれた「声」では、自分の内側から呼ぶ声がある。かつては避けていたのかもしれないのだが、今はその声に向き合わなければならない。
顔に目口がなく、声に濃淡がなく、卵のつるりとした姿をして、どこまで行く
のか。どこへ、連れていくのか。葬列に紛れながら、花冠(はなかんむり)を
想う。婚礼衣装は白、喪服も白。葬祭の根源に触れる白い紙。
声に向き合えば、話者を囲む世界はどんどんと苦しいものになっていくようだ。声を伝搬する空気さえも薄くなっていくようなのだ。しかし話者は「ここで声を探す」ことを決意している。最終部分は「響く声を掴まえ、弔うために。」
「氷の中の文章」。昨日もらった一冊の詩集が今朝はないのである。部屋中を探したのだが、「代わりに/冷凍庫の中には溢れんばかりの氷」があったのである。ここは冷凍庫を開けた瞬間に話者を襲ったであろう冷気も感じさせて、すばらしい詩行だった。詩集は硬く凍り付いたものに変容していたのだ。
ガラスの耐熱グラスに入れる
からりからり 検分に揺らす
一つ一つに 白っぽい無数の微気泡がきらめく
一行の文章が連なった 束のように
詩集の言葉からは小さな気泡が次々に出てくるのだ。それが話者と出会うとひかりの中にはじけていくのだろう。話者はそれを「生暖かい舌に乗せる」のだ。神秘的な言葉との出会いが巧みなイメージになっていた。