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大雪の山々に登る⑤ トムラウシ・その1

2005-06-19 00:05:32 | 旅行記
今回と次回とで、トムラウシのことを書こうと思う。

トムラウシの名前を初めて耳にしたのは、礼文・星観荘でのことであった。Sさんがぜひ登ってみたい山だと言っていたのが印象に残っていて、その年の秋、白雲岳から初めてそれと意識してトムラウシを眺めた。そして、五色岳山頂から間近に眺めて、登頂を決意したのである。そして、天候にも恵まれ、2回登頂することができた。

トムラウシに登るには、南にあるトムラウシ温泉から登るコースと、南西にある十勝岳連峰から縦走してくるコース、そして北にある化雲岳方面から縦走してくるコースがある。更に化雲岳方面からのコースは、化雲岳を起点に天人峡からのコースが、五色岳を起点に沼ノ原からのコースと高根ヶ原からのコースに別れる。

私は車で登山口まで入れ、一番距離の短い沼ノ原のコースを2回とも利用した。(五色岳までは「大雪の山々に登る④」を参照されたい。)

五色岳からは、人の背丈ほどもあるハイマツをくぐり抜けながら歩く。しばらくするとハイマツ帯がとぎれ、化雲平にさしかかる。右手に雪田のお花畑、左手に湿原が広がる。私は7月の終わりに登ったが、エゾキスゲやエゾノハクサンイチゲをはじめ、様々な花が咲いていた。ホソバウルップソウも咲き残っており、もう少し早い時期に来ていれば、それはそれは見事なお花畑を眺めることができたことだろうと思われた。

この辺りではトムラウシの姿はますます雄大に迫ってくる。あの山に明日は登頂しているかと思うと、胸が高鳴ってくる。天人峡からの道と合流して少しすると、ヒサゴ沼へ下る道が分岐している。トムラウシは夏場の午後には雲がかかりやすいため、朝のうちに登るとよい。私は2回ともそうしたが、初めて登った時は、山頂では晴れていて、表大雪を一望できたが、下山しているうちに雲に覆われてしまい、五色ヶ原辺りでは全く見えなくなってしまった。よって、ヒサゴ沼の避難小屋で一泊し、早朝に出発し、晴れているうちに登頂することができたのである。

ヒサゴ沼へ下る道も雪田跡に付けられており、木道の周囲は一面のお花畑であった。眼下にはヒサゴ沼が青く水をたたえている。

ヒサゴ沼に到着し、非難小屋で今夜の寝場所を確保する。なるべく早い時間に到着して、場所を確保した方がよい。時にはツアー客が団体で泊まることがある。また、十勝岳方面から縦走してくる人は到着が遅く、暗くなってからやって来る人もいる。よって、小屋の隅に場所を確保するとなおよい。ただし、独特のホコリ(カビ?)臭さを我慢する必要があるが。でも、それにはすぐ慣れる。テン場もあまり広くないので、やはり早い時間の到着が必要である。

ヒサゴ沼は東西に長い沼で、西端の大きな雪渓から、雪解け水が勢いよく流れ込んでいる(雪渓の先端は水場にもなっている)。周囲はお花畑になっており、様々な花が咲き乱れている。特にエゾキスゲの群落は見事である(私は名残を目にしただけだった)。沼の真ん中辺りのくびれたところには石が飛び石状に積み重なっており、そこを歩いて対岸に渡ることができる。渡った辺りはナキウサギの生息地で、声が盛んに聞こえる。

ヒサゴ沼はまさに大雪連峰最奥部の別天地である。そんな場所で一夜の夢を結ぶのは、何とも言えない贅沢なことではないだろうか。



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