桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

37年ぶりの常念岳

2018-08-21 18:29:49 | 旅行記
先日の雲ノ平周遊の時、鷲羽岳~水晶岳の稜線から常念岳を眺めました。常念岳は実は37年前に叔父と登っています。日本百名山の中で最初に登った山ですが、意気地なしで体力もなかった当時の私は、登るのが辛くて辛くて(軽い高山病だったのだと思います)、途中で泣きが入り、泣きべそをかいて登頂したのを覚えています。よって、山頂で写真も撮していません。本来はその先の蝶ヶ岳まで行く予定だったのを、これ以上の山行は無理と判断した叔父が、予定を1日切り上げてエスケープルートで下山することにしたのです。このことは小学生の私にとって屈辱の経験となり(もちろんすべての原因は私のダメさ加減にあるのは言うまでもありません)、本格的に山に登るようになってからは、いつかその屈辱を晴らすべく、ぜひもう一度常念岳に登りたいと思っていました。

本来は鳳凰三山に登りたかったのですが、諸事情と天気予報で急遽常念岳に登ることに決めました。出発が遅かったので、初日は一の沢から常念小屋まで、二日目は、天気が良ければ蝶ヶ岳まで縦走して下山、天気が持ちそうもなければ常念岳登頂後一の沢へ下山と決めて出発しました。

一の沢から登り始めると、沢山の下山者とすれ違います。恐らく常念小屋は土曜日ということで満館で布団1枚に2人寝たことでしょう。一の沢から胸突き八丁までの前半3分の2は斜度も緩やかで快調に飛ばせましたが、胸突き八丁からの残り3分の1は暑さも加わってとにかくハードでした。

12時過ぎに、37数年ぶりに小屋に到着し受付を済ませて食堂で昼食にしました。テラスの向こうにはかつて踏破した槍穂連峰が聳えています。特に大キレットの特徴的な形が印象的です。毎度のことながら、自分もかつてあそこを踏破したのだという感慨に浸ります。たまたま横にいた親子はすることがないので常念岳に登頂してくるとのことでしたが、私は以前登っているし、早起きして運転と登山をしてきた疲れもあるので、そのまま小屋でのんびり過ごすことにしました。

食後にコーヒーをすすっていると、相席を申し出る人達がいました。テーブルには私一人だったので快諾したのですが、彼らが実に楽しい人達でした。新潟からのSi夫妻、Sa夫妻、神戸からのIさん(若い女性)。彼らとしばらくいろいろと楽しく話をしました。今回の山行では、雲ノ平周遊の時のような出会いは少なかったのですが、彼らとの交流が唯一の楽しい出会いだったといえるでしょう。

夕食も、37年前は全く食欲がなくほとんど手を付けなかったのを覚えています。しかし今回は美味しく完食しました。単独行や2人組の男性ばかりが押し込められた3階の大部屋は、時間に関係なく歩き回る人の足音や荷物をあさる音、さらにはひどいいびきと咳でほとんど眠ることができず、不快なまま朝を迎えました。

それでも4時に起き、朝食を済ませて6時前に常念岳山頂を目指して登り始めました。日の出の時はきれいに見えていた槍ヶ岳には少しずつ雲がかかり始めています。これは蝶ヶ岳への稜線での見事な眺めは望めそうもないので、登頂後は一の沢に下ることに決め、空身で登りました。

高度が上がるにつれて、遠くの山々が目に入り始めます。特に先日登った鷲羽岳、私の大好きな鹿島槍ヶ岳、そして一部雲がかかってはいましたが、大キレットの特徴的な地形にはどうしても目がいきます。そして、何より目に付く主立った山々は皆かつて登頂しており、それぞれの山に登頂したときのことがよみがえってきたのは感動的でした。東や南の方向には、八ヶ岳連峰や富士山の裾野部分、南アルプス、大キレットの向こうに白山までも見えたのは驚きでした。

山頂では1時間ほど過ごしたでしょうか、Sa夫妻とSi夫妻、Iさんも遅れて登頂し、狭い山頂で写真を撮し合いました。37年前は泣きべそをかいて写真も撮れなかった私ですが、今回は笑顔で写真を撮ることができました。

下山もご夫妻達とご一緒しました。とにかく話が面白く、ほとんど2組の夫婦漫才を聞いているようで、登山の疲れなどすっかり消し飛んでしまうほどでした。一の沢に下る前に、常念平の標識の前で写真を撮りました。実は三十数年前も、一の沢下山前に同じ標識の前で写真を撮しました(今手元にはない)。その写真の表情は、もう山に登らなくていいという晴れ晴れした顔をしています。今回は屈辱を晴らすことができた笑顔を作って撮しました。
ご夫妻達とは最終水場まではご一緒し、そこで別れて、あとは一の沢の駐車場までうんざりするほど下り続けました。37年前も一の沢を下っていますが、その時の記憶は全くありません。コースタイムより1時間ほど早く着けました。

ふと思い立っての登山でしたが、楽しい出会いもあって良い登山になりました。


常念小屋からの槍穂連峰

夕暮れの常念岳

槍ヶ岳に沈む夕日

常念岳と月

常念平から朝焼けの浅間山

鷲羽岳と水晶岳

大天井岳と横通岳

鹿島槍ヶ岳

剱岳

槍ヶ岳

前穂高岳、奥穂高岳、北穂高岳、大キレット

前穂高岳、奥穂高岳

前穂高岳

槍穂連峰をバックに

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする