登山道が山の西側に入ると、海風が直接吹き付けるようになり、また高度も上がってきたこともあって寒くなってきた。そう言えば12月だった。
このあたりからすれ違う人が現れてきた。おそらく駐車場に車を泊めていた人達である。あの台数からすると、山頂にはそれほど多くの人はいないようだ。皇海山や雨飾山で経験したような、山頂が座る場所もないほど混んでいる、という状況ではないようだ。
足下はいよいよ大きな岩ばかりになる。登山道が山の北側に入ると傾斜もきつくなり、手を使って登るところも出てきた。後ろを振り返ると、遠くに池田湖が見える。
岩場を登り切ると、いったん登山道は灌木の中に入る。そして灌木を抜けると、目の前に大きな岩の積み重なりがあらわれ、そこが山頂であった。ガイドブックによれば、灌木の中に窪地があり、そこが火口であるとのことだった。
山頂からの眺めは素晴らしかった。雲が出ていて最高の眺めとはいかなかったけれど、東の長崎鼻、北の池田湖が一望できる。山の北側には畑が広がり、美瑛ほどではないにしても、一面のパッチワークのようである。
山頂の一番高いところは岩の積み重なったところであったが、そのすぐ下に皇太子が登頂した記念のプレートが埋め込まれていた。
山頂はどんなにか混んでいるだろうと思ったが、実際には6人ほどのグループがいただけだった。彼らの写真を写してあげた代わりに、写真を写してもらった。
南国とはいえやはり12月。風は相変わらず強い。山頂の岩の南側の風の当たらないところで早お昼にした。そんなことをしている内に先にいたグループがいなくなり、山頂は一人きりになった。最後にもう一度、岩の上に立って周囲を眺めわたし、下山した。
下山の途中ではたくさんの人とすれ違った。ツアーの参加者とおぼしき人も多かった。あと少し遅く登っていれば、山頂でゆっくり過ごすことはできなかった。つまり、私は登り始めたのが早かったのである。下山して駐車場に戻ると、たくさんの車が停まっていた。
開聞岳を登頂できたことは喜ばしいことであったが、開聞岳はどちらかと言えばその美しい山容を眺めて楽しむ山であるように思えた。