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《ハヤチネウスユキソウ》(平成23年7月11日撮影)
さて、大学生になった頃の私はどうであったか。
同級生の中には、授業をサボって花巻を訪ね、下根子桜やイギリス海岸行ってきたなどという賢治好きの輩もいたが、私は現地を訪ねることもせず、賢治の作品を読み込むこともせずに、はたまた学生運動華やかなりし時代だったがそこまでのめり込むこともなくのほほんと暮らしていた。せいぜい賢治に関した知ったことは、賢治が昭和3年に下根子桜から撤退したのは、「八月、心身の疲勞を癒す暇もなく、氣候不順に依る稻作の不良を心痛し、風雨の中を徹宵東奔西走し、遂に風邪、やがて肋膜炎に罹り、歸宅して父母の元に病臥」したからだ、ということぐらいなものだった。そこで私はますます、『賢治は貧しい農民たちのために己の健康まで犠牲にして献身した』のだと確信するようになっていた。
そして3年生の頃になると、就職を気にし始めていたせいもあったからだろうか、尊敬する人物は誰ですかと問われると、「破滅的で微分的な啄木と違って、積分的で求道的な生き方をして、貧しい農民たちのために自分の命を犠牲にしてまでも献身しようとした天才詩人で童話作家の賢治です」と粋がって答えていた記憶がある。
ところが問題は大学4年になって、あるショックなことに出遭ったことだ。それは私が所属を希望した講座に新しい教授が赴任してきたのだが、同教授は私たちを前にしてある時、「賢治はあまりにも聖人・君子化され過ぎてしまって、実は私はいろいろなことを知っているのだがそのようなことはおいそれとは喋れなくなってしまった」という意味のことを嘆いたことにだ。私はかなりショックだった。それは、その頃私が最も尊敬していた人物はまさに賢治だったからということだけでなく、実は岩田教授は賢治の甥(賢治の妹シゲの長男)だったからなおのことであった。そこでそうか、もしかすると巷間いわれている賢治と本当の賢治とでは違うところが少なからずあるのかと、私の賢治像はぐらついてしまったのだった。
とはいえ、その後の学生時代にも、卒業して仕事に従事している間にもそのようなことを検証するための時間的余裕が私にはなかった。それが十数年前に定年となり、私はそのための時間をやっと持てるようになって賢治のことを調べ続けることができた。すると、常識的に考えればおかしいと思われるところが、特に「羅須地人協会時代」を中心にして幾つか見つかった。そこでそれらの検証等をしてみた結果は、やはり皆ほぼおかしかった(これらのことなどが、恩師が嘆いていたことの具体例だった蓋然性が高いことを後に知った)。つまり、少なからぬ「嘘かもしれない賢治」が巷間流布していることを明らかにできた。
その主な事柄は、
㈠ 羅須地人協会時代は「独居自炊」とは言い切れない
㈡ 「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」賢治
㈢ 羅須地人協会時代の上京についてのあやかし
㈣ 「サムサノナツハオロオロアルキ」もなかった賢治
㈤ 賢治の稲作指導法の実態と限界
㈥ 下根子桜からの撤退は「大演習」を前にして行われた凄まじい「アカ狩り」のせい
㈦ 「聖女のさましてちかづけるもの」は露に非ず
㈧ 〈悪女・高瀬露〉はとんでもない濡れ衣である
などである。
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『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))
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『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(「露草協会」、ツーワンライフ出版、価格(本体価格1,000円+税))
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なお、目次は下掲の通りです。
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〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税)
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