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改竄されていた『宮沢賢治物語』

2024-09-13 12:00:00 | 菲才でも賢治研究は出来る
《羅須地人協会跡地からの眺め》(平成25年2月1日、下根子桜)

改竄されていた『宮沢賢治物語』
 一方で、一読して変な文章がある〝(1)『宮沢賢治物語』(岩手日報社、昭和32年)〟とは、同書出版以前に『岩手日報』紙上に連載された関登久也の「宮澤賢治物語」を単行本化したものであり、件の武治の証言は新聞連載の場合には次のようになっていたことも知った。
(4) 「宮澤賢治物語」(昭和31年『岩手日報』連載)
 どう考えても昭和二年の十一月ころのような気がしますが、宮沢賢治年譜を見ると、昭和二年には先生は上京しておりません。その前年の十二月十二日のころには…(投稿者略)…
 その十一月のびしょびしょ霙(みぞれ)の降る寒い日でした。
 『澤里君、しばらくセロを持って上京して来る。今度はおれも真剣だ。少なくとも三カ月は滞京する。とにかくおれはやらねばならない。君もバイオリンを勉強していてくれ』…(投稿者略)…
 その時みぞれの夜、先生はセロと身まわり品をつめこんだかばんを持って、単身上京されたのです。
【『宮澤賢治物語(49)』「セロ(一)」】

             〈昭和31年2月22日付『岩手日報』掲載〉
 そして、先の〝(1)〟とは違って、こちらの〝 (4) 「宮澤賢治物語」(昭和31年『岩手日報』連載)〟は意味がすんなり通ずる。

 そこで〝(1)〟と〝(4)〟の両者を見比べてみたところ、一箇所だけ決定的に違っている箇所があった。それは、
  単行本の〝(1)『宮沢賢治物語』〟の場合における
   ・昭和二年には上京して花巻にはおりません。…………①
  新聞連載の〝(4)「宮澤賢治物語」〟の場合における
   ・昭和二年には先生は上京しておりません。 …………④
の部分だ。この両者の違いは決定的である。①ならば賢治は上京していることになるし、④ならば上京していないということになるからだ。そして、新聞連載の方の④は関存命中のもので、①は歿後のものだから、④の方が当然本来の記述であるはずだ。
 ということは、新聞連載の「宮澤賢治物語」を単行本化して『宮沢賢治物語』として出版する際に、関以外の人物がたまたま間違えたか、あるいは、わざとある意図の下に改竄したかのいずれかになるだろう。さて、それではどちらの方が起こっていたのか。
 まず、他の箇所は基本的には違っていないのにも拘わらず唯一この箇所だけが違っていることが確認できた。なおかつ、①と④とでは全く逆の意味になってしまう。それも重要な意味を持っている一文だ。したがって、たまたま間違えたわけではなくて意図的に改竄が行われていたと判断せざるを得ない(それゆえに、〝(4)「宮澤賢治物語」〟ならばすんなりと文章の意味が通じるが、〝(1)『宮沢賢治物語』〟の方は一読して変な文章だったということか)。

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 ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
 おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
 一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
 あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という警鐘、つまり研究の基本を常に心掛けているつもりだからである。そしてまたそれは自恃ともなっている。
 そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。

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 そのようなことも訴えたいと願って著したのが『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守  ☎ 0198-24-9813
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