みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

とうとう恐れていたことを知ってっしまった

2023-01-26 16:00:00 | 賢治渉猟
《チーゼル<*2>》(平成21年7月2日撮影、トアリー)

 「そのある方の著書」にはこんなことが述べられていた。

 賢治さんは今でいう窓ぎわにおかれ仕事は与えられなかった。
 いわゆるクビですね。ですから離任式にも出席しなかったのです。
 賢治さんがいなくなった農学校はまるで暗くなっていた。
…………☆

 私はこの証言に接して、まず飛び上がる程吃驚し、まさかという気持ちとやはりそうだったのかという気持ちが激しく交錯した。
 なぜならば、この著書に出会う以前から、最悪の場合も結構あるなと覚悟はしていたからだ。もしこの証言通りであったとすれば、まさにそれだ。とうとう恐れていたことがやって来たのかもしれない。
 そこで私は押っ取り刀でその著者の許を訪ね、この件に関して伺った。するとその方は、
 これはある公的な機関で所蔵している著書をかつて閲覧させて貰った際に、気になって書き写していたものを載せたのです。ただ、その機関では今はその著書は所蔵していないということです。
という意味のことを教えて下さった。「今はない」ということも不思議なことだが、賢治に関する資料にはかつてはあったのにある時からなくなったということに私は何度か遭遇しているから、その一つかなと思ったし、何しろこの方は信頼できる方だから、この証言〝☆〟の信憑性はすこぶる高いと私には判断出来た。あまりもの動揺に気づかれぬようにと表情は繕いつつも、心の内では驚天動地、大ショックだった。
 かつて私達を前にして、恩師の岩田純蔵先生が、「賢治はあまりにも聖人・君子化され過ぎてしまって、実は私はいろいろなことを知っているのだがそのようなことはおいそれとは喋れなくなってしまった」という意味のことを嘆いたことがあるが、それが私はとてもショックだった。というのは、その頃私が最も尊敬していた人物はまさに賢治だったからということだけでなく、実は岩田教授は賢治の甥(賢治の妹シゲの長男)だったからなおのことであった。そして今回は、その時のショックに次ぐくらいにであった。とうとう恐れていたことを知ってっしまった。

<*2:投稿者註> 賢治は「ドラビダ風」の中でも、チーゼルを詠み込んでいる。
   一〇五二      ドラビダ風          一九二七、五、一、
   生温い風が川下から吹いて
   砂土が乾き草も乾く
   ドラビダ風のかつぎして
   紺紙の雲に踊るやうに耕し
   また吐息して牛糞を盛り往来する
      業は旋り
      日は熟す
   楊の芽みな黄いろにぼうけ
   川は空諦と銀とを流し
   生温い風が南から吹いて吹いて
   植えたキャベヂが萎れて白くひるがへる
      梵の教衆の哂ひは遠く
      チーゼル
      ダイアデム
      緑いろした地しばりの蔓
   風は白い砂を吹く吹く
   もういくつの小さな砂丘が
   畑のなかにできたことか
   汗と戦慄
   牛糞に集るものは
   迦須弥から来た緑青いろの蠅である
      ヴェッサンタラ王婆羅門に王子を施したとき
      紺いろをした山の稜さへふるえたのだ
   右へまはれ
   左へまはれ
   汗も酸えて風が吹く吹く
      もし摩尼の珠を得たらば
      まづすべての耕者と工作者から
      日に二時間の負ひ目を買はう
          <『校本宮澤賢治全集第六巻』(筑摩書房)142p~より>

 なお、平凡社の百科事典マイペディアの解説によれば、
チーゼル
おもにヨーロッパからアフリカにかけて分布するマツムシソウ科の二年草または多年草で,15種があり,日本にもナベナが自生する。チーゼルとはこの仲間を総称する英名で,学名はディプサクス。鋭い刺をもち,茎頂に長円形の頭状花序をつける。小花は青〜藤色,基部に4個の硬い小苞がある。ヨーロッパや北アフリカなどに原産するラシャカキグサは花序が長さ10〜12cm,小苞の先が鉤状に曲がるので,乾燥した花序が織物の起毛に使用された。植物園で見本的に植えられるほか,ドライフラワーとしての利用もある。これによく似たオニナベナは,小苞の先端が曲がらない。
という。
 
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