みちのくの山野草

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高村光太郎の随筆集『獨居自炊』

2024-01-07 14:00:00 | 独居自炊の光太郎
〈「雪白く積めり」の詩碑》(平成22年7月29日撮影)

 私は高村光太郎についてはほどんど分かっていない。せいぜい自分なりに興味を持って光太郎を調べたのは、彼が昭和26年に『独居自炊』という本を出版していたことに関わってであった。
 もう少し具体的に言うと、賢治の羅須地人協会時代は巷間「独居自炊」といわれているが、調べてみると、賢治の場合の「独居自炊」の使われ方はそうでもなかったことを知った。つまり、
 高村光太郎は昭和26年に随筆集『獨居自炊』(龍星閣)を出版した。一方で、それ以前に賢治の「羅須地人協会時代」を「独居自炊」と修辞していた賢治研究者等は一人もいない。それが初めて使われたのは、昭和28年発行の『昭和文学全集・第十四巻宮澤賢治集』(角川書店)においてであった。
のだ。
 ちなみに、高村光太郎の随筆『獨居自炊』
            〈『獨居自炊』(高村光太郎著、龍星閣)〉
だが、その発行は昭和26年6月だった。したがって、光太郎は昭和20年花巻に疎開しているから、いわゆる「自己流謫」していた時の出版となる。
 そして、この随筆集の巻頭を飾るのが、まさに「獨居自炊」という随筆であった。
   獨居自炊
 ほめられるやうなことはまだ為ない。
 そんなおぼえは毛頭ない。
 父なく母なく妻なく子なく、
 木っ端と粘土と紙屑とほこりとがある。
 草の葉をむしつて鍋に入れ
 配給の米を餘してくふ。
 私の臺所で利休は火を焚き、
 私の書齋で臨濟は打坐し、
 私の仕事場で造花の營みは遅々漫々。
 六十年は夢にあらず事象にあらず、
 手に觸るるに隨って歳月は離れ、
 あたりまへ過ぎる朝と晩が来る。
 一二三四五六と或る僧はいふ。
             ―昭和一七・四・一三―
               <『獨居自炊』(高村光太郎著、龍星閣)より>
 しかしよくよく見てみると、この巻頭の随筆「獨居自炊」が書かれ時期は「昭和一七・四・一三」である。そこで私は誤解していたことに気付く。この随筆集の発行は昭和26年だから、この巻頭の「獨居自炊」は太田村山口に疎開している頃に書いたものだろうと当初は推測したのだが、これは昭和17年にしたためたもののようで、光太郎は早い時点から自分の生活を「獨居自炊」と規定していたということになるだろう。実際調べてみると、たしかに光太郎は昭和14年から、つまり花巻疎開以前から、東京のアトリエで既に独居自炊生活を送っていたのだった。念のために確認してみると、この随筆集『獨居自炊』に載っている他の随筆の日付はいずれも花巻に疎開する以前のものであり、いわゆる「独居自炊の賢治」からヒントを得て光太郎がタイトルを真似たわけではないということが導かれる(逆はあるとしてもだ)。

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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813
 なお、〈目次〉は以下のとおりです。
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