『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』の中の第三章である、
Ⅲ 私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露― 鈴木 守
五 おわりに……55
さてここまで、未完に終わった上田哲の論文「「宮沢賢治伝」の再検証㈡―〈悪女〉にされた高瀬露―」を基に、そしてそれに幾ばくか補完させて貰いながら、主に「仮説検証型研究」という、オーソドックスな研究手法に依って〈悪女・高瀬露〉を再検証をしてきた。
その結果、〈高瀬露悪女伝説〉は単なる虚構であり、〈高瀬露は悪女とは言えない〉がその「真実」だということを検証できた。
よって、上田の遺志によって命じられたと私自身は認識している課題の半分には、ある程度応えることができたものと安堵している。ただし、まだ半分が残っている。
というのは、露は〈悪女〉の濡れ衣を着せ続けられてきたということが少なくとも否定できないことがこれで明らかになったので、〈悪女・高瀬露〉はもはや人権問題となってしまった。しかも、〈高瀬露悪女伝説〉は全国に流布しているから、当然これをこの世から葬り去り、貶められた高瀬露の人格や傷つけられた尊厳を回復せねばならない、という残り半分の課題がである。
そしてそれは、露一人のためだけでなく賢治のためにも、である。というのは、生前賢治が、血縁以外の女性の中で一番世話になったのが露だ。ところが、その露がとんでもない〈悪女〉にされているという実態があるので、このままでは、賢治はいわば「恩を仇で返した」ということになり、「歴史」から誹られる虞があるからだ。
とはいえ、残念ながら個人的な取り組みではこの課題の解決は殆どどうにもならない。がしかし、かなり確実に解決できる方途があることに気付く。それは、宮沢賢治学会が〈高瀬露悪女伝説〉を再検証してみたところ、露は悪女とは言えないということであったならば、そのことを公的に宣言することによってである。同時に、もしそうなったとすれば、賢治が誹られる虞もなくなる。そしてもちろん、露の濡れ衣は一気に晴れるし、露の名誉と尊厳もかなり取り戻せる。
畢竟するに、時代は変わってしまったのだ。昔ならいざ知らず、今の時代は何にもまして人権が優先される時代だから、もはや人権問題となってしまった〈悪女・高瀬露〉の解決は喫緊の重要課題である。となれば、私たちがこのことを見て見ぬ振りしていることを時代はもう許さないのではなかろうか。そしてまた、いつまでも等閑視していていいのかと、賢治から私たちは今問われていないか。
******************************************************* 以上 *********************************************************
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〝「私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―」の目次(改訂版)〟
〝渉猟「本当の賢治」(鈴木守の賢治関連主な著作)〟へ。
”みちのくの山野草”のトップに戻る。。
ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。
【新刊案内】
そのようなことも訴えたいと願って著したのが『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))
であり、その目次は下掲のとおりである。
現在、岩手県内の書店で販売されております。
なお、岩手県外にお住まいの方も含め、本書の購入をご希望の場合は葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として1,000円分(送料無料)の切手を送って下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
Ⅲ 私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露― 鈴木 守
五 おわりに……55
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五 おわりにさてここまで、未完に終わった上田哲の論文「「宮沢賢治伝」の再検証㈡―〈悪女〉にされた高瀬露―」を基に、そしてそれに幾ばくか補完させて貰いながら、主に「仮説検証型研究」という、オーソドックスな研究手法に依って〈悪女・高瀬露〉を再検証をしてきた。
その結果、〈高瀬露悪女伝説〉は単なる虚構であり、〈高瀬露は悪女とは言えない〉がその「真実」だということを検証できた。
よって、上田の遺志によって命じられたと私自身は認識している課題の半分には、ある程度応えることができたものと安堵している。ただし、まだ半分が残っている。
というのは、露は〈悪女〉の濡れ衣を着せ続けられてきたということが少なくとも否定できないことがこれで明らかになったので、〈悪女・高瀬露〉はもはや人権問題となってしまった。しかも、〈高瀬露悪女伝説〉は全国に流布しているから、当然これをこの世から葬り去り、貶められた高瀬露の人格や傷つけられた尊厳を回復せねばならない、という残り半分の課題がである。
そしてそれは、露一人のためだけでなく賢治のためにも、である。というのは、生前賢治が、血縁以外の女性の中で一番世話になったのが露だ。ところが、その露がとんでもない〈悪女〉にされているという実態があるので、このままでは、賢治はいわば「恩を仇で返した」ということになり、「歴史」から誹られる虞があるからだ。
とはいえ、残念ながら個人的な取り組みではこの課題の解決は殆どどうにもならない。がしかし、かなり確実に解決できる方途があることに気付く。それは、宮沢賢治学会が〈高瀬露悪女伝説〉を再検証してみたところ、露は悪女とは言えないということであったならば、そのことを公的に宣言することによってである。同時に、もしそうなったとすれば、賢治が誹られる虞もなくなる。そしてもちろん、露の濡れ衣は一気に晴れるし、露の名誉と尊厳もかなり取り戻せる。
畢竟するに、時代は変わってしまったのだ。昔ならいざ知らず、今の時代は何にもまして人権が優先される時代だから、もはや人権問題となってしまった〈悪女・高瀬露〉の解決は喫緊の重要課題である。となれば、私たちがこのことを見て見ぬ振りしていることを時代はもう許さないのではなかろうか。そしてまた、いつまでも等閑視していていいのかと、賢治から私たちは今問われていないか。
******************************************************* 以上 *********************************************************
続きへ。
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〝「私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露―」の目次(改訂版)〟
〝渉猟「本当の賢治」(鈴木守の賢治関連主な著作)〟へ。
”みちのくの山野草”のトップに戻る。。
ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という警鐘、つまり研究の基本を常に心掛けているつもりだからである。そしてまたそれは自恃ともなっている。そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。
【新刊案内】
そのようなことも訴えたいと願って著したのが『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))
であり、その目次は下掲のとおりである。
現在、岩手県内の書店で販売されております。
なお、岩手県外にお住まいの方も含め、本書の購入をご希望の場合は葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として1,000円分(送料無料)の切手を送って下さい。
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