気の向くままに

山、花、人生を讃える

御岳登山と人魂の話②

2019年08月06日 | 

 

翌朝も雨が降り続いていて、最近奥さんを亡くし、奥さんの名前を彫りつけた杖を持った、私と同年代の男とコーヒーを飲みながら雨が止むのを待っていた。すると10時頃、学生風の男3人が、小ぶりになったのを見て、小屋を出ていった。が、30分もすると、雨に濡れてまた小屋に戻ってきた。結構風が強いとのこと。

 

「コーヒーが1杯分しかないが、良かったら煎れるよ」というと、「はい、いただきます」というので、さっそく湯を沸かして煎れてやると、3人で回し飲みをしていた。そして、お返しに「味噌パン」を分けてくれたが、その味噌パンがとてもうまかった。聞けば、2人は大阪の芸大生で1人はそのOBとのことだつた。

コーヒーを飲み終わった頃、いよいよ天気も回復し始めたので、5人そろって小屋を出て、なんとなく5人が一緒になって、三の池、五の池と、池巡りをしながら最北端の継子岳まで足を延ばした。

学生たちは、上からかぶるだけの合羽を着ていて、まるでマカロニウエスタンを見るようで、吾々は「荒野の用心棒」気分だった。その彼らがときどき奇声を発して万歳をするので、いつの間にか中年2人もつられて万歳をする。そして万歳のたびごとに童心に帰っていくようだった。

 

三の池にある祠の前では、両の膝が大きく口のあいているジーパンをはいた芸大OB氏が、奉納のため「南京玉すだれ」と「皿回し」を披露。それを見ながら後の4人は、誰もいないのを好いことに、やんやの拍手大喝采。彼は始めから、奉納するつもりでその道具を持参していたのだった。

すっかり打ち解けた1行は、暗くなりかけた頃、ようやく登山口の標高1800mの濁河温泉(にごりご)に到着。
芸大OB氏が、自分は毎年夏になるとA旅館で泊まり込んでアルバイトをしている。今日は女将さんは留守で休業しているから、露天風呂もあるので入っていけと熱心にすすめてくれる。それで甘えることにし、温泉につかりながら星空を眺め、芸術談義に花を咲かせた。風呂からあがると、岩魚の御馳走まで用意してくれた。

すっかり夜もふけて、さて帰ろうとすると、今度はやもめ氏が、自分はここから近くの保養所の料理人をしているから、ぜひ泊って行ってくれと何度も熱心に勧めてくれた。が、私も少し疲れていて、家でぐっすり休みたかったので、名残を惜しみつつ別れた。奥さんを亡くして間がない彼は、ちょっと寂しかったのかと思うが、あとで、ちょっぴり後悔した。

家に帰って楽しい思い出の写真を焼き増しして、それぞれに、「お陰で楽しかった」という手紙を添えて送った。学生からはやはり「楽しかった」という返信があり、写真が趣味のやもめ氏からは、また、是非一緒に御岳山に登りたいという手紙と、たくさんのきれいな花の写真が送られてきた。その後何度か、手紙の往復があったが、残念ながら一緒に登る機会がないまま、だんだん疎遠になっていった。


あやしげな人魂様を見ることはできなかったが、しかし、1泊2日ながら、本当に心に残る楽しい山旅だった。

 

≪やもめ氏が送ってくれた写真で懐かしい1枚である  五ノ池で≫

 

これは何年か後、家内と登った時の写真で 三ノ池 (行者の白装束と真っ青な池とのコントラストが印象的だった。)


○宇宙のゲームに参加しているほかのプレーヤーがときどき、あなたといっしょになる。短い出会いであったり、ちょっとした通りがかりであったり、一時のチームメイトということもあれば、長年の知り合い、親戚、家族、・・・中略・・・そうした人たちの魂は、あなたが引き寄せているのだ。そして、あなたも彼らに引き寄せられている。 『神との対話』(ニール・土ナルド・ウォルシュ著)より

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