ども、砂川です。
なんだかスゴい映画を見ました。
2019年公開のレバノン作品、「存在のない子供たち」
わずか12歳で裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は自分の両親です。
裁判長から、「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えます。
中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていない。
学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に劣悪な労働を強いられていました。
唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのはさらに過酷な「現実」でした。
苛烈なまでの中東の貧困と移民の問題に、一歩もひるむことなく果敢に挑んだ監督は、レバノンで生まれ育ったナディーン・ラバキー。
公開時にもとても気になっていた作品でしたケド、結局見に行けず、今回、ケーブルTVで放送されていたのを録画して見ました。
「大人たちに聞いてほしい。世話できないなら産むな。僕は地獄で生きている。僕の思い出は、けなされ、ホースやベルトで叩かれたことだけ。一番優しい言葉は”出ていけ、クソガキ”。ひどい暮らしだよ、なんの価値もない。最低の人生だ。みんなに好かれて尊敬されるような立派な人になりたかった。でも神様の望みは、僕らがボロ雑巾でいること」
ラストシーンの主人公ゼインの言葉が胸に刺さります。
スゴいのは、主人公ゼインを始め出演者のほとんどは、演じる役柄によく似た境遇にある素人を集め、感情をありのままに出した演技でリアリティを追求した結果、壮絶なまでの迫力でその悲しさが伝わってくるコト。
そしてその悲しい現実は決して遠いレバノンだけではないと知って欲しい、そんなコトを思いました。