午後四時半少し前、日本一の路線バスは三回目の休憩地である十津川温泉の
停留所に15分ほど遅れて到着した。
路線バスとは言え、これまでの停留所では乗客の乗り降りが無く通過を重ねる
だけだから特急バスのようなものだが、それでもこの長距離では定刻の運行は
なかなかに難しいようだ。
ここで五人の乗客の内四人が下りた。久しぶりの動きである。
バスに残るのは横浜の女性だけで、聞けば彼女も今晩はこの先のホテル昴に泊
まり、翌日は玉置神社に行くと言う。
休憩を終えたバスは、新たな乗客を乗せることもなく出て行った。
この先のホテル昴停留所で彼女を下ろした後、乗客を乗せることもなく新宮に
向かうのであろうか。
これでは儲からないのではと、些か心配しながら出ていくバスを見送った。
この路線の運行が始まった当時は、待望され開通したこともあり連日満員の
乗客で盛況で有ったようだが、その後沿線の過疎が進み人口が減ると同時に、
マイカーが普及し利用客は減少した。
合わせて地勢的に豪雨災害の発生しやすい土地柄で、崩れた土砂で国道が通れ
ず、運休を余儀なくされることも度々有ったりする。
こうなると当然営業収支は悪化し赤字が続き、お決まりのように路線を短縮
するとか、廃止してしまえと言う論議が巻き上がったのだそうだ。
しかしここ十津川村は元々新宮との結びつきが強い土地柄らしく、僅かな
がら一定の利用が有ると言う。
特にマイカーを持たない高齢者にとっては貴重な足となっているから路線を分割
すればこれらの利用者に乗り継ぎが発生し、利便性が悪くなると反対の声も根強
かったらしい。
結果止めるにやめられなかったようで、そこで国と奈良県や沿線自治体の補助
金の出番となったものらしい。(続)
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