トロッコ列車を降りた乗客達が、三々五々カメラを構え・・・と言うそんな悠長な光景ではない。
誰もが皆、弾かれたように長いホームに向け、小走りに駆けだしていた。
ホームには、すでにC108が、長い客車を従えて、乗客の乗り込むのを待っている。
C10形8号機は、旧国鉄が都市近郊での小単位の旅客運搬用として、昭和5年に製造した機関車で、
バック運転も可能らしく、この日もバック運転で客車を牽引して行くらしい。
発車までの短い時間、ホームのあちらこちらには、蒸気機関車やチョコレート色した懐かしい客車を背に、
写真を撮る慌ただしい姿があった。
そして一頻ホームで写真を撮ると、今度は、発車を急かすように、先を競って車両に乗り込んで行った。
ホームに人影が無く成ると、定刻汽笛の音も高らかに、力強いドラフトを響かせて、大井川の流れに
沿って山を下り始めた。
大きなツアーの団体や、家族連れなどで、車内は思ったよりも込み合っている。
乗客は物珍しさからか、殆どが窓を全開にし、時には窓から顔を出し、風を受け、煙の匂いを感じながら
汽車旅を楽しんでいる。トンネルで、煙が車内に流れ込むのもお構いなしだ。
昔の汽車旅もこんな感じであった。
長時間の旅は、車内に入り込んだ煙と煤で、いつの間にか顔は真っ黒。それを洗い流すために、何処の駅の
ホームにも、必ずと言って良い程に小さなタイル張りの洗面施設があった。
途中駅での停車時間や、下車駅では、その洗面施設で顔を洗う光景を見る事が出来た。
今では駅のホームで、洗面施設を見かけることは殆ど無く成ってしまった。(続)
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写真を撮る慌ただしい姿があった。
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ホームに人影が無く成ると、定刻汽笛の音も高らかに、力強いドラフトを響かせて、大井川の流れに
沿って山を下り始めた。
大きなツアーの団体や、家族連れなどで、車内は思ったよりも込み合っている。
乗客は物珍しさからか、殆どが窓を全開にし、時には窓から顔を出し、風を受け、煙の匂いを感じながら
汽車旅を楽しんでいる。トンネルで、煙が車内に流れ込むのもお構いなしだ。
昔の汽車旅もこんな感じであった。
長時間の旅は、車内に入り込んだ煙と煤で、いつの間にか顔は真っ黒。それを洗い流すために、何処の駅の
ホームにも、必ずと言って良い程に小さなタイル張りの洗面施設があった。
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