邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

粘土のお面より・かあちゃん

2006年01月21日 | ★人生色々な映画

向島のブリキ屋一家と
家族をとりまく人々の
泣いたり笑ったりの日常を描く。

極貧ともいえる生活なのに
一家の顔は決して暗くは無い。
貧乏でも人情と心意気のある人たちが
助けあって暮らしている昭和の下町。

とうちゃん(伊藤雄之助)のような
乱暴な言葉使いのかあちゃん(望月優子)は、
隣に住む病身の奥さんを
親身に面倒みる、あったかいかあちゃんだ。

望月優子と伊藤雄之助、うますぎ。

怪物のような名優同士の見事な掛け合いが聞ける上、
丹波哲郎がぺらぺらと流暢な英語をまくしたてて笑わせたり
田崎潤が粋を見せてくれたり、
(この人はてっきり東京生まれだと
思いこんでいましたが、青森県出身だということをつい昨日知りました)
二木てるみの天才的な子役ぶりを確認できたりと、
これといった、大きな事件も起きないのに
まったく飽きさせない。

土管がころがる川っぺりに
今にも倒れそうなブリキ屋と蝙蝠屋、それと雑巾屋が並んでいる。

「always 三丁目の夕日」の中に出てくるような
駄菓子屋も登場する。
ただしリアルさは10倍です。

木下忠司のセレクションで、
クラシックなどの音楽も効果的に使われている。

怪談映画で有名な中川信夫の
底知れない才能に驚いた。

原作は「綴方教室」の豊田正子:「粘土のお面」

1961年 中川信夫監督作品 脚本 館岡謙之助
原作 豊田正子
撮影平野好美
音楽 .木下忠司
美術 黒沢治安

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「上意討ちー拝領妻始末」

2006年01月18日 | ★ぐっとくる時代劇
「切腹」の小林正樹監督が
またしても武家社会の非道、矛盾を斬る。

会津松平藩の三百石藩士、笹原伊三郎(三船敏郎)は
主君(松村達男)にいきなり
側室お市の方(司葉子)を息子(加藤剛)にめとらせるよう
命ぜられる。
そして夫婦の間に子も生まれた数年後、
お家の都合でまた返せと言われる。

非人道的なやり口に、
当の若夫婦たちよりも
激しく
隠居した親父(三船敏郎)が怒り狂い
二人の愛の成就のため、
そして
理不尽な処遇を天下にしらしめるために立ち上がる。

見方を変えれば
喜劇になるような話が
橋本忍の隙の無い脚本と
小林正樹の怜悧な演出と
シンメトリーが美しい見事な構図、
武満徹の厳粛な音楽、
三船敏郎らの熱演で
息もつかせぬ作品に仕上げられている。

この物語で面白いのは
三船演じる藩内きっての剣の使い手、
笹原伊三郎は
「お婿さん」だということだ。

これはある意味、婿どのの叛乱、婿さんの最後っ屁、
婿のケツまくりともいえる物語でもある(失礼)。

温かみが感じられない、
妻(大塚道子)の憎たらしさ、
親戚らの圧迫もすごい。

長年家名を守るだけに生きてきた伊三郎は
それらすべてどうでもよくなる。

そしてまるでピクニックにでも
出かけるように、追っ手を迎える準備をするのだ。

信念を貫き通し、無謀な戦いに挑む男、
人生の最後に成せなかった理想の愛を完成させようとする男に、
いつのまにか胸が熱くさせられてしまう。

気丈な嫁はあっぱれだったが
息子は完全に親父に引きずられていたと思う。

親友役の仲代達矢が
ぴりっと舌をさすスパイスのように一味加えている。

1967年 小林正樹監督作品
脚色 : 橋本忍 撮影 : 山田一夫 音楽 : 武満徹
美術 : 村木与四郎

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「香華」

2006年01月14日 | ★人生色々な映画
自堕落でわがままな母親に振り回され続けた女の一生。

と、一言で片付けられないのが母と子の間柄。

原作は舞台にドラマにと
何度も演じられてきた有吉佐和子の名作。

郁代(乙羽信子)は器量自慢だったが
実の母親(田中絹代)にも
愛想尽かしをされるほどの薄情な娘だった。

最初の亭主と死に別れるや
幼い子供(のちの岡田茉莉子)を実家に預けたまま
さっさと男と(北村和夫)再婚する。

数年後、男に捨てられて売り飛ばされた遊郭には
祖母が死んで、同じく
芸者見習いとして売られた朋子がいた。

母親に薄情な言葉を投げつけられても
尽くさずにいられない少女が哀れでいじらしい。

成長した娘(岡田)は母親(乙羽)にバシバシと意見する気丈な女に変身!
逆境は娘を強く育てたのだった。

岡田茉莉子の芸者姿美しいです。

大震災、戦争と時代の波を生き抜く母子だったが
年を取っても色香が失せるどころか、
派手で男出入りが絶えない母親に比べ、
花のように美しかった娘が、
堅気の軍人(加藤剛)にふられるあたりから
どんどんどんどん老けていってしまうのがなんとも残酷。

女を描かせれば天下一品の有吉佐和子の筆と、
これまた女の気持ちがどうしてこんなにわかるのか
不思議な木下恵介監督のベストマッチ。

三木のり平、北村和夫、加藤剛、田中絹代 
岡田英次 柳永二郎 など脇も豪華。
菅原文太がちょい役で出ていた。

血は水よりも濃いとは
よくいったものだけど、肉親であるがゆえに腹立たしい、
愛しいということもある。
親子といえど、女同士の感情も複雑なのである。

乙羽信子も良かったけど、
以前見た山田五十鈴の郁代(たぶんTVドラマ)が絶品だったなあ。

1964年 監督・製作・脚本: 木下恵介
原作: 有吉佐和子 撮影: 楠田浩之
美術: 伊藤憙朔/ 梅田千代夫 音楽: 木下忠司

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「明治一代女」

2006年01月13日 | ★愛!の映画
「浮いた、浮いた~と・・」♪の歌でもおなじみ。

かつて「毒婦」という恐ろしい言葉があった。
幕末から明治にかけて三大毒婦と呼ばれた
うちのひとりがこの映画の主人公
柳橋の芸者花井梅。
(他のふたりは高橋お伝と夜嵐お絹)

いずれも色恋沙汰の挙句に
大事件を起こした女たちだが
この映画を見る限り、
そんな恐ろしいイメージはみじんも感じられない。

芸者お梅(木暮実千代)は花形役者沢村仙枝(北上弥太郎)と恋仲だった。
襲名披露を控えた仙枝のために
金を工面しようとするが、
莫大な金が入り用と知って呆然とする。

長年お梅に思いを寄せていた
箱屋の巳之吉(田崎潤)は、
金を用意する代わりに一緒になってくれとお梅に
懇願するのだったが・・・
(箱屋とは芸者の身の回りの世話をする職業)

典型的な三角関係というわけだ。

愛人を一人前の役者にしてあげたいという
芸者の意地は認めども、
ずるずると
一本気な男をひっぱったお梅は問題アリ。

切羽詰まったいちずな巳之吉は、ついに刃物を持ち出す。
雨上がりの、どろどろにぬかるんだ橋のたもとでの
二人のもみあいの場面が大迫力

ぎらぎらと光る包丁の怖さ、我を忘れた男の目の怖さ。

粋な
料亭女将、杉村春子の憎たらしいいびりも見もの。

華やかな柳橋の雰囲気、芝居小屋の雰囲気も楽しめるが
なんといっても、「触れなば落ちん」
木暮実千代の風情が一番の見ものだろう。

1955年 伊藤大輔監督作品 
脚本 伊藤大輔 成沢昌茂
原作 川口松太郎 撮影 鈴木博 音楽 伊福部昭 美術 松山崇

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パソコンがイマイチ調子悪くてやっと投稿しました。