邦画ブラボー

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「上意討ちー拝領妻始末」

2006年01月18日 | ★ぐっとくる時代劇
「切腹」の小林正樹監督が
またしても武家社会の非道、矛盾を斬る。

会津松平藩の三百石藩士、笹原伊三郎(三船敏郎)は
主君(松村達男)にいきなり
側室お市の方(司葉子)を息子(加藤剛)にめとらせるよう
命ぜられる。
そして夫婦の間に子も生まれた数年後、
お家の都合でまた返せと言われる。

非人道的なやり口に、
当の若夫婦たちよりも
激しく
隠居した親父(三船敏郎)が怒り狂い
二人の愛の成就のため、
そして
理不尽な処遇を天下にしらしめるために立ち上がる。

見方を変えれば
喜劇になるような話が
橋本忍の隙の無い脚本と
小林正樹の怜悧な演出と
シンメトリーが美しい見事な構図、
武満徹の厳粛な音楽、
三船敏郎らの熱演で
息もつかせぬ作品に仕上げられている。

この物語で面白いのは
三船演じる藩内きっての剣の使い手、
笹原伊三郎は
「お婿さん」だということだ。

これはある意味、婿どのの叛乱、婿さんの最後っ屁、
婿のケツまくりともいえる物語でもある(失礼)。

温かみが感じられない、
妻(大塚道子)の憎たらしさ、
親戚らの圧迫もすごい。

長年家名を守るだけに生きてきた伊三郎は
それらすべてどうでもよくなる。

そしてまるでピクニックにでも
出かけるように、追っ手を迎える準備をするのだ。

信念を貫き通し、無謀な戦いに挑む男、
人生の最後に成せなかった理想の愛を完成させようとする男に、
いつのまにか胸が熱くさせられてしまう。

気丈な嫁はあっぱれだったが
息子は完全に親父に引きずられていたと思う。

親友役の仲代達矢が
ぴりっと舌をさすスパイスのように一味加えている。

1967年 小林正樹監督作品
脚色 : 橋本忍 撮影 : 山田一夫 音楽 : 武満徹
美術 : 村木与四郎

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