邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「江戸川乱歩全集:恐怖奇形人間」

2010年08月19日 | ★恐怖!な映画
観たいと思っていながらなかなか見られなかった
映画ってありますよね。

すごいすごいという噂が噂を呼び、
頭の中が想像ではちきれんばかりになっていた作品。
神保町の古書店で特集本を見かけたときも、
映画を見るまでは手を出すまいと目をつぶったものでした。

今回は渋谷の「シネマヴェーラ」
「石井輝男 怒涛の30本勝負!!」での嬉しい上映。

席に着くや
館内を流れてきたのは健さんが歌う
名曲
「網走番外地」だ!
いやがおうでも気分は高まる!

さて!伝説のカルト作品は冒頭から飛ばしていく。
いつのまにか精神病院で半裸の女患者に
取り囲まれてしまっている吉田輝雄

主人公が自らの置かれた環境を把握出来ていない、
前置き無しの問答無用シチュエーションは
先ごろヒットした人気ホラー「SAW」みたいだ。

なぜここに俺はいるんだ!

あの子守唄はなんだ!

私だってわからない!(ブラボー)

舞台は大正時代、
看守が高英男で滑り出し快調!

ゴー!ゴー!GO!

謎めいた登場人物が錯綜する中、
サスペンスタッチで話は進んで行く・・
江戸川乱歩の作品を映像化する場合、
ノスタルジックで耽美的なイメージを強調する向きも多いが
石井輝男作品はもっとストレート、かつダイナミック、
そしてチープな表現で迫ってくる。

誰しもがまだかまだかと待っていた奇形人間の島は
中盤になって登場する。

岩場でのたうちまわる土方巽 がお出迎え&ナビゲーター。

キタ~~~!!

その王国はぱっと見、竜宮城のように豪華絢爛、華やかだが
危険かつ、ツボにはまると大爆笑も誘う魅力があった。
おどろおどろしいクリエーチャーたちは哀愁があって
奇妙な味わいが・・・。

奇怪なシャム双生児のかたわれは近藤正臣だったらしいが
顔がつぶれていてわからなかった。

たけり狂った猛獣人間のたたずまいもさることながら
檻に入れられ、草を貪り食ってるヤギ人間?といいますか
その体つきからしてたぶんヤギ婆さん?はもうちょっとじっくり見たかったです。

ドロドロ描写や
土方巽のまがまがしい台詞まわしと奇妙な動作とは裏腹に
筋は真っ当な愛憎復讐劇で、
最後の最後には泣かせも入ったのには唖然とした。
(ここまでむちゃくちゃやっといていくらなんでも泣きはムリ)

脇役では小池朝雄がエキセントリックな女装をしたり(脚が意外に綺麗)
人間椅子になったりと大爆発で、普通では飽き足らない
映画ファンを満足な気分にさせてくれた。
由利徹と大泉滉のお笑いコンビも最高。

爆発といえばラストの花火大爆発は観客を呆然とさせるに十分で
このシーンが伝説のカルトとしての名声を不動のものにしているのかと思いました。

だがしかしこの作品の凄さは
映画館を出てからわかった。

38度の猛暑の中
街を闊歩する
土方巽のメイク以上に個性的な顔、
ばっさばさの髪を逆立てた半獣半人のような若者、
ぴょんぴょんはねながら歩く雪駄履きの老人!

渋谷を歩く人たちが皆映画そのもの、
あの島の住人のように見えたのだ!

1969年
監督:石井輝男
脚本:掛札昌裕、石井輝男
撮影:赤塚滋
美術:吉村晟
編集:神田忠男
音楽:鏑木創

ブログランキングへ応援オネガイシマス