思惟石

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『彼方の友へ』すごく良いお仕事小説&成長物語

2021-12-14 11:40:47 | 日記
『彼方の友へ』伊吹有喜

昭和の少女雑誌『乙女の友』の編集部を中心に、
開戦から終戦までの数年間を描く。

基本は主人公・ハツちゃんの成長物語。

開戦に向けての世の中の不穏な空気や
終戦前の不安な暮らしが良く描かれているのだけれど、
それと対照的とも言っていいくらい、
ハツちゃんの成長と、周囲の人々が良い。

良き師匠である有賀主筆も良いし、
理想主義だけど応援したくなる(というか心配になる)
画家の純司先生も良い。
なによりも、貧乏小使いとしてあとからやってきたハツちゃんを
素直に受け入れるお嬢さんの史絵里ちゃんがすごく良い。

解説にもあったのだけど、普通の小説だと嫉妬したり嫌がらせしたり、
つまんない展開にしがちじゃないですか。
育ちも頭も良い史絵里嬢はそんなことはしないんだよ凄く良い。

ところで、本のタイトルから、勝手に別れ離れになった友情エピソードが
メインなのかな?と思っていたけれど、
そんな浅いタイトルではなかった。良いですね!

さらにどうでも良い話しですが、
大正ロマンっぽい話し言葉がすごく好きです
(呼びかけが「君」とか、「〜したまえよ」「〜いたしません」みたいな語尾、
良いよね)!

大和之興業社『乙女の友』のモデルは、実業之日本社『少女の友』。
実際に紙製のこだわりが詰まった付録があったり、
新進気鋭の文筆家を採用したり、愛読者の会があったりしたようです。
石川啄木が寄稿していたのには、複雑な顔になってしまった笑。

第158回直木賞候補作ですが、
私的には受賞ですおめでとうございます!!

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