思惟石

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木内 昇『漂砂のうたう』明治初期の暗澹!

2018-02-01 15:50:43 | 日記
平成22年度下期の直木賞受賞作です。

舞台は根津遊郭。
時は明治10年前後、西南戦争の頃。
明治維新後の、時代の変革と混乱とよるべなさが、
すごくリアルに描かれています。
主人公は元・武家の次男坊だった定九郎。
とにかく鬱々として腐っていて、何者でもない男です。

表紙が着物を着た女の子の画だし、
ざっくり「時代物」というイメージで手に取ったので
なんとなーく江戸後期の平和な感じや、
遊郭の煌びやかさ、元武家であることを筋が通った人物像などを
心のどこかで期待してしまいました。
読んでみると、ストーリーに予想したような華がない…。

文章は整っているし、定九郎の葛藤や鬱屈、
遊郭のなかの人間模様などけっこうおもしろく読みましたけど。

よくよく考えたら松井今朝子の『銀座開化おもかげ草紙』と
同じ頃なんですね。
世情が混沌としていて、人それぞれに悩み迷う時代の物語ですね。
歴史の授業では、こんな時代の空気感までは教われないから、
こういう小説が読めるのは良いことだと思います。

しかし、定九郎はホントにダメ男であった。
頭で冷やかに考えつつ、体が動いてしまう、
みたいなことも度々あって、こんなんでよく生き残れたな、と。

主人公らしい煌めきもないのだけど、
ポン太や小野菊は、なんであんなに度々、
定九郎にヒントをあげるような構い方をしたのだろう。

まあ、でも、直木賞受賞ともなると、やっぱり面白いですね。

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