思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『犬が星見た―ロシア旅行』 百合子ワールドを旅する本

2023-08-21 12:16:07 | 日記
『犬が星見た―ロシア旅行』
武田百合子

百合子さんの日記的エッセイ。

武田百合子・泰淳夫妻と、
泰淳の親友・竹内好の3人での
ロシア(ソ連)から北欧までの旅行記。

解説で色川武大が「文は人なり」と書いてある通りで、
もう、百合子さんの視座の絶妙さと、
それを言葉に定着させるセンスが素晴らしすぎて、
なにも言えない。
すごい。
ステキ。

旅行の道程と食べたもの、買ったもののメモ
といえばそうなのだけれど、
そうじゃないんだよ!
百合子なんだよ!

旅したのは、昭和44年(1969年)6月から7月にかけて。
ソ連領内は、団体旅行。
船で津軽海峡を通り大陸へ。
寝台列車に乗り、小型飛行機を乗り継ぎ、
ソ連の各地をめぐる。

なにこの旅、めちゃくちゃ過酷じゃない?
と思うけれど百合子さんの筆にかかれば
扉のないトイレだろうが、言葉の通じないガイドだろうが、
なんか楽しそうなのである。
全てはなんとかなりそうなのである。
私だったらなんとかならないけど。
もうね、本当に凄い(としか言えない)。

旅仲間のひとり「銭高老人」がまたおもしろい。
関西屈指の富豪である銭高老人、80歳を過ぎ、
家族の反対を押し切って単身海外旅行に参戦したという。
仮名かと思ったら本名だった。
銭高組(!)の会長だ。
百合子さん、引きが強いな!

泰淳は昔ながらの偉そうなオットなのだけれど、
だからと言って百合子さんは辛そうでも抑圧されてるわけでもなく
飄々と「百合子さん」で、ステキな人だなと思う。

そんな暴君泰淳、途中で竹内さんに怒られて拗ねたり。
竹内さんも黒海で泳いだ泰淳に負けたくないから、と
意地で泳ごうとしたり。
あんたら仲良いなあ。

特に計画もないのんびりした旅行に行きたいな、と思う一冊。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『小さなことばたちの辞書』... | トップ | 『モンテレッジォ 小さな村の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事