思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『クアトロ・ラガッツィ』史料から見る天正遣欧少年使節

2020-12-02 12:03:51 | 日記
『クアトロ・ラガッツィ ー天正少年使節と世界帝国ー』
集英社文庫の上下巻で読みました。
なかなかのボリューム!!

作者の若桑みどりさんは西洋美術史の教授だった方で、
この作品は第31回大佛次郎賞受賞作。

というわけで、小説ではないです念のため。
(大佛次郎賞はたまに小説も受賞するけど
 ほぼほぼ歴史や評伝系の賞って感じですよね)

西洋の歴史に詳しい作者ならではの、
西洋側に残された史料を踏まえて眺めた16世紀前後の日本です。

私は天正少年使節の4人に興味を持って読み始めたんですが、
上巻3分の2くらいまで(400ページ以上!)は登場しません。
戦国時代の日本に宣教師たちが如何にしてやってきたか、
当時を学ぶパートです。
長い!

ちょっとくじけそうになった笑
ざっくりでも登場人物表とかあったらよくないですか?

ザビエル:
1549年に来日した最初の宣教師。
スペイン・ポルトガルのお家芸「布教→征服」は、
日本では得策ではないと報告した。ありがとう。
とはいえ、本当は中国に行きたかったのでさっさと退場する。

アルメイダ:
最初期にやってきたポルトガル人宣教師。
いいひと。
病院や学校つくりたい!そのためにお金必要!
ということで医学の才に加えて商才を爆発させる。

ルイス・フロイス:
1563年の来日から死ぬまでの36年を日本で過ごす。
その割に、日本人を見下している言動が多いんだけど。
ポルトガル人。
報告魔。手紙魔。

カブラル:
最初期のイエズス会布教長で、非常に征服者的思考の人。
権力者を改宗させて領民一気にキリスト教化!という垂直型布教スタイル。
日本の言語風習に興味がなく、「高度な」自分たちの文化に
合わせることを強要する人。日本語も話せない(学ばない)。
何しに来たの?

ヴァリニャーノ:
超いいひと。イタリア人。巡察使として来日。
スペイン・ポルトガル人が何かと征服的なのに対して、
イタリア人は文化教養的な傾向がある。
だからルネッサンスが花開いたんでしょうね。

この5人の性格と、
信長怖いよねイケイケだよね!というあの時代の雰囲気を
掴めれば、長い導入もいける気がします。

そしたら天正少年使節の4人が登場するよ!
メディチさんにもフェリペ国王にも、
もちろん教皇にも会えちゃうし舞踏会にも出ちゃうよ!!

そして後半、帰国後にさらに苛烈になっている禁教令。

秀吉の情緒不安定でヒステリックっぷりも怖いけど、
家康の「断固」感も超怖い。
弾圧や拷問が過酷になるのは家康の時代になってからってのが
怖さマックスですよ。

若桑さんは学術の人なので、
想像ではなく史料に基づく事実を書くと明言していますが、
ラストは、ちょっと物語的な描写です。
(というかちょこちょこと想像や解釈が入ってますが)

と思っても、やっぱり涙なしには読めないラスト!!!
ジュリアン!!!

歴史において無名だろうがなんだろうが、
強い意志をもって自らの人生をまっとうした人は
その人生においてヒーローなのである。と。
4人それぞれの人生が、当時を生きた全ての民衆の人生が、
まっすぐに肯定されていると思う。

途中でくじけそうになったのも忘れて感動した。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« まことに恩田陸的な『月の裏側』 | トップ | 【読書メモ】2014年6月 ① 米... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事