Sightsong

自縄自縛日記

齋藤徹+久田舜一郎@いずるば

2019-04-12 07:55:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

先週の沢井一恵さん(箏)に続いて、沼部のいずるばにおいて、能楽師の久田舜一郎さんとの共演(2019/4/11)。

※沢井一恵さんとの共演については後日詳報。

Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Shunichiro Hisada 久田舜一郎 (鼓)
guest:
Ryotato Yahagi 矢萩竜太郎 (dance)

久田さんは「クラシック音楽のようなもので、能しかやっていない」と言う。しかし、その能楽の巨匠が即興も行ってきた。テツさん、ミシェル・ドネダらとも行動を共にしたフランスの現代音楽祭ミュージック・アクシオンでは、ステージ後の夜のセッションにおいて、久田さんは「月に吠えた」のだという。また、アフリカのミュージシャンたちとも意気投合したのだという。

ただ、それはエキスパティーズを持った人が即興の世界で繰り広げる凄さ、というだけのことではなさそうである。長い歴史を持つ能楽そのものが、中世のさまざまな芸能を取り込み、また異なる流派の間でも馴れ合いにならないようにして緊張を保ってきた音楽なのだった。テツさんは「道成寺」での乱拍子を世界最高水準の即興演奏だと言った。

先週の沢井一恵さんとの話と同様に、ここでも「日本とは?」という問いが、抽象的なものではなく実感を伴うものとして出てくる。テツさんによれば、外国人の即興演奏家は即興ですぐに反応し、会話をしようとするという。そして、きっちりとしたリズムや即応ではなく、「揺れ」を大事にするのだという久田さんの発言があった。

45分ほどのトークが終わり演奏。久田さんは入念に鼓の調整をしている。紐を締めたり緩めたり、また、紙をちぎって口で湿らせ、鼓の表面に貼っているようにみえる。

はじめてナマで観る共演はたいへんな緊張感を共有させるものだった。テツさんは音楽には無酸素運動と有酸素運動があるのだと話していたが、これは前者だとしか思えない。久田さんのかけ声と鼓の一様ではない響かせ方。ときに破裂するようにコントラバスと重なりあい、あっと言いそうになってしまう。まさにここには「揺れ」「揺らぎ」があって、個人の意思も揺れ、ふたりの意思も揺れながら重なり離れ、ずっと動く影や水面を見つめているような気がしてくるのだった。

近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』においては、このふたりにザイ・クーニンのパフォーマンスを加えた姿がとらえられている(2018年、長野でのライヴ)。矢萩竜太郎・皆藤千香子のダンサーふたりが入る前に、既に映像でもわかる結界のようなものが出来ていた。それもあってこの日来るのがちょっと怖い気持ちもあったのだが、実際のライヴを観ると、迫力だけでなく交感も感じられた。

しばらくして矢萩竜太郎さんが入ってきた。先週の沢井一恵さんとの共演時とは異なり、大きな円環をテーマにしたようなダンスであり、音楽との距離感が絶妙に思えた。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●齋藤徹
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●久田舜一郎
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)

●矢荻竜太郎
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)


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