Sightsong

自縄自縛日記

かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記

2018-07-29 00:28:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

四谷三丁目の喫茶茶会記にて、かみむら泰一・齋藤徹デュオ(2018/7/27)。

Taiichi Kamimura かみむら泰一 (ts, ss)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

何度目のデュオ・ライヴになるのだろう。この日のショーロと即興の演奏は、お互いの音が馴染み合ってきてリラックスしたものに聴こえた。

そのことは、冒頭、ピシンギーニャの「カリニョーゾ」においても感じられた。テナーのかすれがコントラバスの弦と妙に「ウマがあう」のだ。もちろん、曲を安心してプレイするだけではない。続く即興ではアウラがじわじわと変化を続け、テナーの息と、弦にかすかに触れるこすれとが一様ではない形で重なった。ピシンギーニャを1曲挟んで、かみむらさんはソプラノに持ち替えた。ここには、コントラバスとソプラノそれぞれが持つ特有の逸脱が出会って、また別の豊かさを生んでいた。

セカンドセットでは、有限空間ならではのサックス表現からはじまった。かみむらさんはソプラノを吹きながら踊るように横方向の運動を続け、発信源の位置と向きとが変わることにより、壁での反射も相まって、驚くほどのサウンドの変化が起きた。テナーに持ち替えると、音の重さが増すからか、揚力が生まれるように思えた。時間の断面でみればそのような有り様、それを振り返ってみれば痕跡が時空間のそこかしこに残されている。

ときどき「A Night in Tunisia」だとか「Begin the Beguine」だとかの断片が見え隠れすることも面白かったのだが、それに呼応してなのか、テツさんが指で弦を強くはじく展開が少なくなかった。このとき、テナーと「はじき」との宙での結合と離散とを幻視した。

変化はなお続く。アベル・フェレイラのショーロ曲では、主旋律の物語、伴奏の物語と、ふたりが語り手の役割をいつの間にか入れ替えていたりした。 そして最後はかみむらさんのオリジナル「Dikeman Blues」。ソプラノは揺れ動くし、ブルースのピチカートもまた良い。この曲で前にも感じたことだが、「Willow Weep for Me」を思わせるフレーズが入る。それに対して、テツさんが「All Blues」のような旋律を弾いた。

次回のデュオ演奏も必ず実現するだろう。そのときは、一転して何か異物が持ち込まれる予感がある。

Nikon P7800

●かみむら泰一
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)

●齋藤徹
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
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齋藤徹@バーバー富士(2017年)
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齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
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齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 


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