Sightsong

自縄自縛日記

ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』

2018-05-17 19:06:48 | アヴァンギャルド・ジャズ

ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)を聴く。Kadima CollectiveからCD、DVD、本のセットで出されたもののうちCD編のみがbandcampにアップされている。

Lauren Newton (vo)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
Kazue Sawai 沢井一恵 (koto)

齋藤徹さんと沢井一恵さんとは共演を繰り返しているわけだが、たとえば、デュオで本盤の10年近く前に演奏された『八重山游行』とは雰囲気が随分と異なっている。後者の演奏にはその場での完結に向けた意思が感じられて、それは、特殊事情のもとでなされたこともあるのかもしれない。そのことは置いておいても、ローレン・ニュートンが加わったトリオという点のほうが大きいように感じられる。より空間に向けて、覚悟のようなものとともにサウンドが開かれている。

わたしがはじめてニュートンの存在を知ったのは、故・清水俊彦の文章によって、ウィーン・アート・オーケストラ『エリック・サティのミニマリズム』を聴いたときだった。このような表現があるのかと驚いた。さらに曲ではなく即興にも触れ、さらに驚いた。本盤にはそのニュートンの魅力がとても出ている。羽根のように空中をひらひらする高い声を、細切れに繰り出してゆき、宇宙的なその場限りのサウンドを目の前で作り上げてみせる。

沢井一恵さんも素晴らしくて、たとえば、「Rose Moon」においてニュートンとともに天空高くへと飛翔する世界に聴き惚れてしまう。そして言うまでもなく、テツさんのコントラバスは、ノイズの胎動のなかからときに聴き覚えのある旋律を産み出し、空中に放り投げる。

本盤は三者三様のパフォーマンスの結実のようなものだと思うが、それはどの段階でも固まっておらず、ときに、遊ぶかのようにヘンな音を立てて気をステージ外に逃す瞬間もあって、とても愉快。

●ローレン・ニュートン
ウィーン・アート・オーケストラ『エリック・サティのミニマリズム』(hat ART、1983・84年)

●齋藤徹
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●沢井一恵
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)


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