Sightsong

自縄自縛日記

長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム

2018-11-21 23:48:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

長崎のながさき雪の浦手作りハムにて、ホームパーティのような形で、長沢哲さんと、静養中の齋藤徹さんとのデュオ(2018/11/17)。駅から夜道をてくてく歩いていくと、確かにお店があった。中を覗くと皆さんがいてとても不思議な気分。

Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

演奏前に、テツさん(齋藤徹さんのほう)が、韓国での音楽体験の話を長沢さんにしている。それが構えた音楽から<あるがまま>の音楽へとつながっているようなのだ。リズムについては、4と3との組み合わせて12、この12進数は生きる時間サイクルのようにいつまでも続いていく。あるいは5を他の拍子と組み合わせての36、判然としないが不思議だ。

過去二度の共演はインプロだったが、この日は、お互いにテーマを決めて臨むという趣向。最初は長沢さんの「Walk in the Mist」。突き抜ける前に止めるブラシと微かな音のコントラバス、両者ともに円環を感じさせ、それが次第に強くなる。ふたりの擦りの展開、弦の飛躍する音、ブラシの慣性、そんなものがあって、ゆっくりと着地へと向かった。

次に、先の話の「12」。テツさんは、永遠に続くリズムのこと、金石出という傑出したシャーマンのことを語る。マレットによる拡がりのある響きから丸いものが抽出される。響きの世界を創出する横では、叩きによる撥音の世界。気が付くと「12」を意識させられ、その循環が繰り返されるうちに目立ってくる。

長沢さんの「Ballard of Lights」。長沢さんはゆっくりと長く続く響きのグラデーションを作り上げてゆく。テツさんはまるで鼻歌でも歌うようであり、嬉しくなる。長沢さんのグラデーションが金属的なものに変わっても、テツさんは<あるがまま>に、ともかくも音で語る。

テツさんはお祖父さんが通っていた東亜同文書院のことやリディアン旋法のこと、それからバール・フィリップスが命名した「Invitation」のことなんかを話して(どんな文脈でそうなったのだろう)、また演奏に戻った。長沢さんの大きな雲のごときサウンド、テツさんの震える弓。それらが何故か、音楽をその場に立ち上げることの不思議さを感じさせた。音楽は制度であっては本来の音楽たりえないし、もともと所与のように存在するものではない。その介入のあり方こそが音楽なのだと思えた。

長い演奏が終わったあと、おいしい鍋をごちそうになった。四方山話をする中で、長沢さんに、バスドラムをあまり使わないことについて訊いた。それがあるとリズムや音楽を「決められてしまう」からだということだった。テツさんは、バスドラムはコントラバスの敵なんだと面白そうに言った。確かにロジャー・ターナーはテツさんとの演奏ではバスドラムを使わないのだった。

Nikon P7800

●長沢哲
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
#07 齋藤徹×長沢哲(JazzTokyo誌、2017年ベスト)
長沢哲『a fragment and beyond』(2015年)

●齋藤徹
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)

かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 


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