Sightsong

自縄自縛日記

長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO

2017-10-29 09:48:49 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTOにおいて、長沢哲・齋藤徹デュオ(2017/10/28)。雨の中なのにハコが満員になった。

Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

まずは多数のドラムやシンバルの配置に驚かされたのだが、確かにそこから発せられる音は、楽器ひとつひとつの役割を定め集中しながらも、複数ということによって鮮やかに彩られたものとなった。

マレットの丸さと、近づいては離れるコントラバスとが間合いをはかりあうようなはじまり。長沢さんがハイハットを少し鳴らすと、それがまるで外部からの刺激のようになり音楽が動き始めた。次第に激しくなるふたりの音は、ときに、周波数の綺麗な山を破裂させるブラシと弦でもあった。長沢さんはドラムを和楽器の鼓のようにも鳴らし、コントラバスがその音の集約をまたダイヴァーシファイさせた。

長沢さんが演奏を小休止させ、サウンドが次の章に入った。マレットとシンバルの残響を何層にも重ね合わせた、大気的な音。齋藤さんは哀しみの曲を奏で始め、ドラムスの響きに刻みを入れてゆく。ブラシでの強度あるパルス、齋藤さんの口笛によって吹き込む風。齋藤さんのノイズとカズーのような音を発する笛、それに対して長沢さんはマレットにより執拗なパターンを繰り返す。お互いの音のシフトに次ぐシフト、しかし、そのふたりの音が独立に動くのではなく大きく重なる時間があきらかにあった。最後に、齋藤さんが、両手を何度も握り、振り、コントラバスから肉体への回帰をみせた。

セカンドセットは、齋藤徹さん復活を確信させられるものだった。これがテツさんだと思ってしまう、実に魅力的な倍音とノイズ。全開に向けて覚悟を決めたかのような演奏。その大きな河の流れに向かい、長沢さんは、シンバルとマレットでのドラムの残響を細やかに丁寧に合わせていった。ふたりの強度が上がりもして、そのときには、長沢さんはささらのような束を手にした。

激しい演奏で齋藤さんはちょっと疲れたのだろうか、コントラバスの後ろでしばしインターミッション。そして指に小さなパーカッションを4つ付けて、別の鳴り物も握り、力強く「歌」を奏でた。マレットがそれにシンクロした。やがて齋藤さんはパーカッション指輪を次々に投げ捨てるのだが、それまでの素晴らしい過程を祝うように、長沢さんがシンバルを鳴らしたのが印象的だった。

豊かに発散した音をまた取り戻し、糸をよりあわせるように収斂させてゆく齋藤さん、一方、それにより生まれる静かさを励起させる長沢さん。収斂させるだけでなく、その際にまわりのさまざまなフラグメンツを巻き込んでゆくような齋藤さん、スティールパンの鮮やかな金属音を想起させる音を発する長沢さん。そしてカーテンのように吊るされたベルの綺麗な鳴りと、齋藤さんの足踏みによって、演奏が収束した。

終わってから、齋藤徹さんの誕生日のお祝いがあった。愉しかった。

Nikon P7800

●齋藤徹
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