鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

歌川広重の歩いた甲斐道 その10

2009-11-28 06:47:26 | Weblog
歌川広重の甲州道中(甲州街道)におけるスケッチは、『日々の記』という旅日記の中に挿絵のような形で挟みこまれていましたが、それが実際どのようなものであったかはよくわからない。しかし『旅中 心おほえ』の方には枚数は多くないけれども甲州道中におけるスケッチが載っています。「座頭ころばし」(野田尻宿と犬目宿の間の矢坪坂のこと)、「犬目峠」、「高尾本社」、「大善寺」(勝沼)、「酒折宮」、「善光寺」(甲府)の6枚です。それぞれを、描かれた順に立ち寄っているとすると疑問が出てきます。「犬目峠」(上野原)と「大善寺」(勝沼)の間に「高尾本社」(八王子)があるからです。広重は「犬目峠」まで写生に行って、それからまた江戸に戻り(帰途、小仏峠から高尾本社に立ち寄る)、それからまた江戸より甲府に向けて出立し、その道中、「大善寺」・「「酒折宮」・「善光寺」を描いたのでしょうか。もしそうであるとすると、広重はわざわざ「犬目峠」まで江戸から出かけたことになります。広重はこの犬目峠からの景観を気に入っていたようで、カラーの口絵の部分にも「「不二三十六景 甲斐犬目峠」「『富士見百図』より 甲斐犬目峠」、「富士三十六景 甲斐犬目峠」の3枚が載せられています。また「大月原」も同じく3枚。犬目峠を越えて大月まで足を延ばしていたのかも知れません。 . . . 本文を読む