某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

長寿ってちっともめでたくない

2011-05-20 01:57:25 | ぼやき
 手帳を更新したら、切り抜きが出てきた。2011年2月8日朝日朝刊の投書。81歳の女性のもので、タイトルは上に書いた通り。
 介護に疲れた81歳の妻が84歳の夫を絞殺、逮捕されたという記事についてのもの。「私でなくてよかった」とある。投書者の夫は87歳、もう6年余も病人。しかし、高齢の病人でも、家族が同居または近くにいれば、その人たちが面倒をみるということで、介護保険の給付は受けられないでいる。保険料はばっちり天引きされているのに。「病人の訴えを、苦しかろう、自由に動きたいだろうなどと思って聞いていたら、とても24時間6年3カ月は務まりません。右の耳から左の耳に『うんうん』と言うだけで過ごしているから、私は犯罪者にならないですみました。」とある。
 カフカの『変身』をみたすぐ後にこの切り抜きが出てきたので、奇妙な偶然に驚いている。あの虫は、例えばこの87歳の老いた病人なのだ。そしてまた、虫が父親にリンゴをぶつけられて大怪我をし、死んでしまうというのは、84歳の夫が妻に絞殺されたということなのだ。
 自分がこの投書者とほぼ同じ年齢になったせいか、「長寿ってちっともめでたくない」という、この「心の叫び」が除夜の鐘のように頭の中で鳴り響いている。そういえば『ガリバー旅行記』の中に、死ねない老人たちが「俺たちをうらやましがる変な奴がいる」とガリバーの噂をする場面があった。虫は死ねた。残った家族は解放されて、心楽しくピクニックに出かける。あの一家はまだみな若い。老々介護にはそうした救いもない。これは日本だけの現象なのだろうか。
コメント (2)
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