初孫の太郎は、2歳のころからラーメンが大好きだった。女房つまり彼のお婆ちゃんが猫可愛がりで、良く買物に連れて行った。食堂でラーメンを頼む。太郎は大喜びで食べ始めるが、お婆ちゃんが注文していないのに気付くと、「おいちいよ、お婆ちゃんも食べな」と繰り返し繰り返し言う。それでもお婆ちゃんは注文しない。するとクルッと後ろを向いて、店員に「すいまちぇーん」と声をかける。回りのお客さんたちは「おいしいよ、おばあちゃんも食べな」と繰り返す太郎の声を聞いて微笑んでいるが、この、いきなりの「すいまちぇーん」でびっくりして笑い転げる。中にはお茶をひっくり返す客まで出た。
今彼はカクテルを作るのが上手になった。正月に兄弟姉妹子供孫が揃うと、注文に応じていろいろなカクテルを作ってくれる。でもまだどこかに「おいちいよ」「すいまちぇーん」を繰り返した頃の幼顔が残っている。太郎の作るカクテルだったら、お婆ちゃんはいくらでも飲んだろうに、と早死が惜しまれる。
今彼はカクテルを作るのが上手になった。正月に兄弟姉妹子供孫が揃うと、注文に応じていろいろなカクテルを作ってくれる。でもまだどこかに「おいちいよ」「すいまちぇーん」を繰り返した頃の幼顔が残っている。太郎の作るカクテルだったら、お婆ちゃんはいくらでも飲んだろうに、と早死が惜しまれる。